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規矩
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きく
ふりがな文庫
“
規矩
(
きく
)” の例文
兵馬倥偬
(
へいばこうそう
)
の日常、政務の
繁劇
(
はんげき
)
と、門客の出入りと、睡眠不足と、あらゆる公人的な
規矩
(
きく
)
から寸分でも解かれて、ほっと一息つく間に
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼の生活は、急激な反動の連続——極端から極端への飛躍の連続だった。あるいは、非人間的禁欲主義の
規矩
(
きく
)
に生活を押込もうとした。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
すなわち
規矩
(
きく
)
に完全に合致して透明となったところから生ずる自由が、この動きにあの
溌剌
(
はつらつ
)
とした美しさを与えるのであろう。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
「彼は招かれてはいないんです、松山(茂庭周防)は御承知のとおりの気性だし、涌谷さまは
規矩
(
きく
)
を
紊
(
みだ
)
さない方ですからね」
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
堺氏は「およそ社会の中堅をもってみずから任じ、社会救済の原動力、社会
矯正
(
きょうせい
)
の
規矩
(
きく
)
標準をもってみずから任じていた中流知識階級の人道主義者」
片信
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
▼ もっと見る
その後当分の間、邯鄲の都では、画家は絵筆を
隠
(
かく
)
し、楽人は
瑟
(
しつ
)
の
絃
(
げん
)
を断ち、
工匠
(
こうしょう
)
は
規矩
(
きく
)
を手にするのを
恥
(
は
)
じたということである。(昭和十七年十二月)
名人伝
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
晩年に至っては神仙味を加え、起居動作
縹渺
(
ひょうびょう
)
とし、
規矩
(
きく
)
人界を離れながら、尚乱れなかったということである。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
日本人は画の理解があればあるほど
狩野
(
かのう
)
派とか四条派とか南宗とか北宗とかの在来の各派の画風に
規矩
(
きく
)
され
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
栄玄は
樸直
(
ぼくちょく
)
な人であったが、往々性癖のために言行の
規矩
(
きく
)
を
踰
(
こ
)
ゆるを見た。かつて八文の煮豆を買って
鼠不入
(
ねずみいらず
)
の中に蔵し、しばしばその存否を検したことがある。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
而
(
しか
)
して
後
(
のち
)
に
或
(
ある
)
義士
(
ぎし
)
の
一撃
(
いちげき
)
に
斃
(
たほ
)
れたりと
書
(
か
)
かば
事理分明
(
じりぶんめい
)
にして
面白
(
おもしろ
)
かるべしと
雖
(
いへども
)
、
罪
(
つみ
)
と
罰
(
ばつ
)
の
殺人罪
(
さつじんざい
)
は、この
規矩
(
きく
)
には
外
(
はづ
)
れながら、なほ
幾倍
(
いくばい
)
の
面白味
(
おもしろみ
)
を
備
(
そな
)
へてあるなり。
「罪と罰」の殺人罪
(旧字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
若し夫れ通人才子の情を寄せ興を託する、雅趣余りあらざるに非ざるも、
而
(
しか
)
も必ず其の
規矩
(
きく
)
に出入し、動きて
輒
(
すなは
)
ち合ふ能はざる、是を雅にして未だ正しからずと謂ふ。
文芸鑑賞講座
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
予が殊に今日の詩人に於て
甘服
(
かんぷく
)
する能はざる所ろは、一定の
規矩
(
きく
)
を立てゝ人と己とを律せんとするに在り。審美の学を作りて、是を以て詩界の律令と為さんとするに在り。
詩人論
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
すなわち賢人君子の
眼
(
まなこ
)
よりせばあるいは
児戯
(
じぎ
)
に等しいかは知らんが、青年時代の希望の実状を
印
(
いん
)
してこれを現今の実際と照合し、もって理想の
規矩
(
きく
)
にあててみるのである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
また文章の模範は漢魏を専らとなし、詩賦は盛唐を以て
規矩
(
きく
)
となすべきことを主唱したのである。荻生徂徠は明代の学者の説いた所をそのままわが
元禄
(
げんろく
)
時代の学界に移し入れた。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その時まで彼の唯一の
規矩
(
きく
)
だった合法的肯定とはまったく異なった一つの感情的啓示が、彼のうちに起こってきた。
旧
(
もと
)
の公明正大さのうちに止まるだけでは、もう足りなくなった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
体験さるる意味の論理的言表の潜勢性を現勢性に化せんとする概念的努力は、実際的価値の有無または多少を
規矩
(
きく
)
とする功利的立場によって評価さるべきはずのものであろうか。
否
(
いな
)
。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
六如のもつてゐた尖鋭な
気禀
(
きひん
)
を嗅ぎ、楚といふ楚が、各自の思ふがままに真直に伸びて往くこの木の枝振りの気儘さと頑さとに、自ら風流第一と許した画人の、世間の
規矩
(
きく
)
を超越した
独楽園
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
美は一切の
道徳
(
どうとく
)
規矩
(
きく
)
を超越して、ひとり
誇
(
ほこ
)
らかに生きる力を許されている。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
が、すでにその人亡き今日、何ぞ先人の
規矩
(
きく
)
にとらわるるの要あろうや——である。秀吉にはおのずから秀吉の資質がある。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
武家の完全な消費生活では、厳しい
規矩
(
きく
)
によって手足を縛られ、退屈と無気力に馴らされる、生活は保証されるが冒険もなければ夢も理想もない。
野分
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
また
胡飲酒
(
こいんず
)
、
抜頭
(
ばとう
)
などの林邑楽をその中間に加えることもまれでない。しかしこれらの林邑楽は、どの記録から推しても、あまりに繊細な
規矩
(
きく
)
に束縛されている。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
家数にして五百軒、
甍
(
いらか
)
を並べ軒を連ね、
規矩
(
きく
)
整然と立ち並んだ
態
(
さま
)
は、普通の町と
異
(
かわ
)
りがない。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
陸
(
くが
)
や浜田は早くも去って古川一人が自恃庵の残塁に
拠
(
よ
)
っていたが、区々たる官僚の
規矩
(
きく
)
を守るを
屑
(
いさぎ
)
よくしないスラヴの変形たる老書生が官人気質の小叔孫通と
容
(
い
)
れるはずがないから
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「世に愛せられず、世をも愛せざる者なり」(I love not the world, nor the world me.)繩墨の
規矩
(
きく
)
に
掣肘
(
せいちう
)
せらるゝこと能はざる者なり
厭世詩家と女性
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
思ふに前記の諸篇の如き、布局法あり、行筆本あり、変化至つて
規矩
(
きく
)
を離れざる、能く久遠に
垂
(
た
)
るべき
所以
(
ゆゑん
)
ならん。予常に思ふ、芸術の境に未成品ある
莫
(
な
)
しと。紅葉亦然らざらんや。(二月三日)
骨董羹:―寿陵余子の仮名のもとに筆を執れる戯文―
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
孔明が軍馬を
駐屯
(
ちゅうとん
)
した
営塁
(
えいるい
)
のあとを見ると、井戸、
竈
(
かまど
)
、
障壁
(
しょうへき
)
、下水などの設計は、実に、
縄墨
(
じょうぼく
)
の法にかなって、
規矩
(
きく
)
整然たるものであったという。
三国志:12 篇外余録
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これに対して格式は表高に依ってちゃんと
規矩
(
きく
)
があるため、家臣たちの生活はかなり窮屈なものだった。
彩虹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
明日
(
あす
)
は何うなる世かと、時の人々を
暗澹
(
あんたん
)
とさせた応仁、文明の下からでも、たとえば
足利水墨
(
あしかがすいぼく
)
の絵画や、後の生活様式を
規矩
(
きく
)
する工芸が生れていたし
人間山水図巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかもそれが
規矩
(
きく
)
のきちんとした、作法の厳しい武家となると、こまかい習慣の差はもちろん、心がまえまで変えなければならない、それが日常
瑣末
(
さまつ
)
なことに多いので
初蕾
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
殊に古典の大作は天衣無縫でなんらの
規矩
(
きく
)
に
囚
(
とら
)
われているふうがない。中華の雄大な古典など特にそうだとおもう。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
武家屋敷の生活は
規矩
(
きく
)
がきびしく、男女のつきあいなどには、特に厳重な制約があった。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
掠奪、輪姦、暴酒、あらゆる悪徳が、残暑のカビみたいに、敵味方の兵を
腐蝕
(
ふしょく
)
しだした。「軍令」そんなものが、もう人間を
規矩
(
きく
)
しうる現実ではない。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人間の生きかたにはどんな
規矩
(
きく
)
もない、現在あるようにあるのが自然なのだろう。
おごそかな渇き
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
(兵を進めるには、神速を
規矩
(
きく
)
となす、とか申します。——法をお
弘
(
ひろ
)
めになるには、何を以て規矩としますか)
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
よそよりもいちだんと家法のきびしい、
規矩
(
きく
)
でかためたような佐野家の日常とはまるでかけはなれた、のびのびとした
雰囲気
(
ふんいき
)
を身にもっていた。——これで家政のたばねができるだろうか。
日本婦道記:松の花
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
摂津
(
せっつ
)
に入り、尼ヶ崎に着くまでは、これまでの急行軍とひとしく、落伍する者は捨て去り、人馬ともに息を休めず、敢えて隊伍諸卒の整列や
規矩
(
きく
)
にとらわるるなく、ただ
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
また、ときには、裏の
的場
(
まとば
)
へ飛び出して、にわかに、弓を引いてみたり、不意に、
厩
(
うまや
)
の馬にむちを加え、大汗かいて帰って来たり——といったふうで、とかくかれには、
規矩
(
きく
)
がない。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
法は、法それ自体が、道義の
規矩
(
きく
)
じゃ。法を愛するは、道義を愛することになる。剣の人、宮本武蔵のことばにも、その独行道の第一に——我レ世々ノ道ニ
違
(
タガ
)
フナシ——とか申しておる。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
の路地を導かれて、そこの一室にすわると、ここにはまったくべつな天地がある。
清楚
(
せいそ
)
な自然と、
幽寂
(
ゆうじゃく
)
な茶室の
規矩
(
きく
)
にかこまれて、主客共に、血なまぐさいたましいから、しばし洗われていた。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“規矩”の意味
《名詞》
規 矩(きく)
コンパスとものさし。
行動の規範や基準。
(出典:Wiktionary)
規
常用漢字
小5
部首:⾒
11画
矩
漢検準1級
部首:⽮
10画
“規矩”で始まる語句
規矩準縄
規矩法
規矩準繩
規矩繩墨