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ふくら
ふりがな文庫
“
膨
(
ふくら
)” の例文
そうして、だんだんと指の間が離れてゆくのが、朝夕目立ってゆくうちに、このアマリリスの
蕾
(
つぼみ
)
が、ふっくらと
膨
(
ふくら
)
んでまいりました。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そうして、なおも念入りにそこを撫でまわしてみると、気のせいか少し
膨
(
ふくら
)
んでいるようであるが、しかし
腫
(
は
)
れ物ではないようである。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その払ひ残りがあると聞いては
皆
(
みんな
)
も黙つてゐられなかつた。さうかといつて仲間のなかに誰一人財布の
膨
(
ふくら
)
まつてゐる男は居合さなかつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
遠見に淡く海辺風景を油絵で描き、前に小さい貝殼、
珊瑚
(
さんご
)
のきれはし、海草の枝などとり集めて配合した上を、厚く
膨
(
ふくら
)
んだ硝子で蓋したものだ。
長崎の一瞥
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その前にソフレーの事を御話し申さなければなりませんが、ソフレーとは泡立たして
膨
(
ふくら
)
ましたものをいいます。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
▼ もっと見る
と
此
(
こ
)
の
分
(
ぶん
)
だけは、
鰐皮
(
わにがは
)
の
大分
(
だいぶ
)
膨
(
ふくら
)
んだのを、
自分
(
じぶん
)
の
晝夜帶
(
ちうやおび
)
から
抽出
(
ひきだ
)
して、
袱紗包
(
ふくさづつ
)
みと
一所
(
いつしよ
)
に
信玄袋
(
しんげんぶくろ
)
に
差添
(
さしそ
)
へて
大阪まで
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
この敵、ただ者に非ず——と見ながら権之助は、満身を気に
膨
(
ふくら
)
ませて、杖をうしろに
扱
(
しご
)
きながらもう一度
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それだのにわたくしの口は喜び酔いしれた言葉でうち
膨
(
ふくら
)
みます。もうあまり長くはここに立っていない方が好いでしょう。この杖を以て三たび
床
(
ゆか
)
をば叩きましょう。
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
天から降ったように、静かに立っていた糸子は、ゆるやかに
頭
(
つむり
)
を下げた。
鷹揚
(
おうよう
)
に
膨
(
ふくら
)
ました
廂髪
(
ひさしがみ
)
が
故
(
もと
)
に帰ると、糸子は机の
傍
(
そば
)
まで歩を移して来る。白足袋が両方
揃
(
そろ
)
った時
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
柄
(
え
)
の
着
(
つ
)
け方は石鏃に笴を着くると
異
(
ことな
)
る所無からん。
膨
(
ふくら
)
み有る物は
殊
(
こと
)
に
柄
(
え
)
を固着するに適したり。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
反
(
そ
)
らせた
喉
(
のど
)
、
膨
(
ふくら
)
んだ胸、
爪先
(
つまさき
)
に重みを支えた足、——そう云う妻の姿を眺めていた。
母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
翌明和三年の制作を見るに背景は漸く複雑となり、四年には重厚なる褐色(
代赭
(
たいしゃ
)
)を用ゆる事その板画の特徴となりぬ。しかしてこの年の人物(婦女)はその
鬢
(
びん
)
漸く高く
膨
(
ふくら
)
みたる事を認む。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかし人間の身体を九つ位にバラバラに
切断
(
せつだん
)
して、この蟒に
一塊
(
いっかい
)
ずつ喰べさせれば、比較的容易に片づくわけだし、腹も著しく
膨
(
ふくら
)
むこともなかろうと考えたので、質問してみようと思ったが
爬虫館事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
銀髪のロダン夫人が
白茶
(
しらちや
)
色にダンテルを
配
(
あしら
)
つた
寛
(
ゆた
)
かな一種のロオブを着て玄関の
石階
(
いしばし
)
を降りて来られた。
何時
(
いつ
)
か写真版で見た事のあるロダン翁の製作の夫人の像
其儘
(
そのまゝ
)
の
鬢
(
びん
)
の
膨
(
ふくら
)
ませ
様
(
やう
)
だと思つた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
大きな財布で懷ろを
膨
(
ふくら
)
ましてよ。頭巾か何んかで顏を隱して、
筋違
(
すぢかひ
)
ひから兩國までを、二三度歩くんだな——いや二度で澤山だ、往きと歸りだ。——よく晴れた、月のない晩といふと丁度今頃だ。
銭形平次捕物控:317 女辻斬
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
威
(
おど
)
かしでもしたら立ちのくだろうってんで
瘠
(
や
)
せた小僧に幽霊を一役やらせたところが、いきなり下から火をつけられてめんくらって逃げ出して来たんだが、こいつは
膨
(
ふくら
)
っ
脛
(
ぱぎ
)
に
大火傷
(
おおやけど
)
をこしらえて
ノンシャラン道中記:05 タラノ音頭 ――コルシカ島の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
杉の木の二、三本あった庭には、赤坂からもって来た、
乙女椿
(
おとめつばき
)
や、紅梅や、
海棠
(
かいどう
)
などが、咲いたり、
蕾
(
つぼみ
)
が
膨
(
ふくら
)
んだりした。清子の大好きな草花のさまざまな種類が、植えられたり種を
播
(
ま
)
かれたりした。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
鷭
(
ばん
)
も小鴨も、
田鷸
(
たしぎ
)
も、
鶉
(
うづら
)
も色々たんと棲んでゐる世の中だ。何か土産がありさうなものぢやないかと訊くと、菊五郎は子供のやうに
面
(
つら
)
を
膨
(
ふくら
)
ませて
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
彼方此方
(
あちこち
)
、眺めていたが、その間も、
迅
(
はや
)
い雲脚は頭のうえを越えて行き、雨まじりの風の落ちて来るたび、佐渡の着ている
蓑
(
みの
)
は、
鷺
(
さぎ
)
の毛のように、風に
膨
(
ふくら
)
んだ。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夜道だから
平生
(
へいぜい
)
よりは、ただでさえ長く思われる上へ持ってきて、
凸凹
(
でこぼこ
)
の登りを
膨
(
ふくら
)
っ
脛
(
ぱぎ
)
が
腫
(
は
)
れて、
膝頭
(
ひざがしら
)
の骨と骨が
擦
(
す
)
れ合って、
股
(
もも
)
が
地面
(
じびた
)
へ落ちそうに歩くんだから、長いの
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
現今は貴族院議員なり人の知った商豪だが——
邸
(
やしき
)
が侍町にあって、
背戸
(
せど
)
の蓮池で飯粒で蛙を釣る、釣れるとも、目をぱちぱちとやって、腹をぶくぶくと
膨
(
ふくら
)
ます、と云うのを聞くと
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
第三十八 米のソフレ は
膨
(
ふくら
)
んだ
生菓子
(
なまがし
)
です。前の通りな分量と順序で玉子の黄身と砂糖と白身とを混ぜてそれをベシン皿か
丼鉢
(
どんぶりばち
)
へ入れてテンピの中でおよそ十五分間火を弱くして焼きます。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
それはイソップ物語に出てくる牝牛と腹の
膨
(
ふくら
)
ましっこをする青蛙の類であろう”“本当に大宇宙に人間以上の高等生物が棲んでいるなら、われわれは
徒
(
いたず
)
らに彼らを怒らせ刺戟させるを好まない。
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ふう、と
仰向
(
あおむ
)
けに胸の息づかい、
乳
(
ち
)
の蔦がくれの
膨
(
ふくら
)
みを、ひしと菅笠で
圧
(
おさ
)
えながら
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
伝兵衛は
膨
(
ふくら
)
まつた
懐中
(
ふところ
)
から
嵩高
(
かさたか
)
な
金包
(
かねづつみ
)
を取り出して、和尚の前に置いた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
とたんに、異様な精気に
膨
(
ふくら
)
んだ武松の五体が眼をひいた。左右の
諸袖
(
もろそで
)
をたくし上げ、内ぶところからは短剣の
柄頭
(
つかがしら
)
をグイと
揉
(
も
)
み出して、その
鯉口
(
こいぐち
)
をぷッつり切った。——同時に、あッというまもない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
酢
(
す
)
を
舐
(
な
)
めたような口をして、いつまでも、
面
(
つら
)
を
膨
(
ふくら
)
ませていた。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
膨
常用漢字
中学
部首:⾁
16画
“膨”を含む語句
膨脹
水膨
膨張
下膨
青膨
蚯蚓膨
膨脹力
膨上
膨大
火膨
着膨
膨満
頬膨奴
膨脹律
著膨
通貨膨脹
三段膨脹
膨揚
膨張相
膨切
...