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じし
ふりがな文庫
“
肉
(
じし
)” の例文
杜は
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
の
凡
(
およ
)
そこうした活溌な運動には経験のないお千に、この危かしい橋渡りをやらせるのにかなり骨を折らねばならなかった。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
だが、そこへ来たのは噂をしていた者ではなく、丹前を着た別なお客、
太
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
でいい年をして、トロンとした目で
手拭
(
てぬぐい
)
を探している。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
骨細ですが、よく
引緊
(
ひきしま
)
つた肥り
肉
(
じし
)
、——
所謂
(
いはゆる
)
凝脂が眞珠色に光つて、二十五といふにしては、處女のやうな美しい身體を持つた女です。
銭形平次捕物控:143 仏喜三郎
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
斯
(
こ
)
う云いながら、色の白い
太
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
の体を其処へ表わしたのは、かやの婆やのお常である。婆やは両手を広げる様な
恰好
(
かっこう
)
をして、かやに近づいた。
かやの生立
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
たといその種のごく食べ物がよろしい太り
肉
(
じし
)
の若いお後室さまが、いかにりりしく美しい筋肉の引き締まった若い侍をお好物であったにしても
右門捕物帖:04 青眉の女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
▼ もっと見る
京都型とでも形容しようか、どっちかといえばふとり
肉
(
じし
)
で、顎は二重にさえくくれていたが、それさえ美しく眺められた。身長も充分高かった。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
これがこの市の尊敬すべき役人連であった。
噫
(
ああ
)
! この世の中では、
痩形
(
やせがた
)
の連中よりも肥り
肉
(
じし
)
の連中の方が確かに上手に物事をやり遂げてゆく。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
丈
(
せい
)
が殿下より心持低く、もっと肥り
肉
(
じし
)
のように思われる。が、ほとんど見分け難い。ただ、伯爵が
髭
(
ひげ
)
を蓄えているだけの違いである。音声は不明。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
これは写しも見せてもらった。人物や動物や風景がいかにも落書きらしく粗雑に書いてある。なかでは樹下美人風の太り
肉
(
じし
)
の女の画が優れていた。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
内庭を前にした美しい小室に、
火桶
(
ひおけ
)
を右にして暖かげに又安泰に坐り込んでいるのは、五十余りの清らな
赭
(
あか
)
ら顔の、福々しい
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
の男、にこやかに
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
越前守忠相、ふとり
肉
(
じし
)
のゆたかな身体を
紋服
(
もんぷく
)
の着流しに包んで、いま何か言いおわったところらしく黙ってうつむいて手にした水差しをなでている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ふとそこを青いパラソルをさした太り
肉
(
じし
)
の丈の高い女が行き過ぎる。傘の青みが顔に落ちてよくはわからないが、色の白い眼の大きな女だと道助は思つた。
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
裾短
(
すそみじ
)
かで
袖
(
そで
)
は
肱
(
ひじ
)
より少い、
糊気
(
のりけ
)
のある、ちゃんちゃんを着て、胸のあたりで
紐
(
ひも
)
で
結
(
ゆわ
)
えたが、一ツ身のものを着たように出ッ腹の太り
肉
(
じし
)
、
太鼓
(
たいこ
)
を張ったくらいに
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ちょっと断わっておかなければならないが、ユリアン・マスタコーヴィチはやや肥り
肉
(
じし
)
のほうであった。
クリスマスと結婚式:――無名氏の手記より――
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
御常は昔から
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
の女であった。今見る御常も依然として肥っていた。どっちかというと、昔よりも今の方がかえって肥っていはしまいかと
疑
(
うたがわ
)
れる位であった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
大隊長は、
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
の身体に血液がありあまっている男であった。ハムとべーコンを食って作った血だ。
橇
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
の、ボッテリした、そのくせ、蓮葉な色気のある女形だった。後に、常盤座を出て、本郷座に入り、「風流線」のおつまだの「村雨松風」の髪結だのであてた。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
その時、僕は何だか
蔑
(
さげす
)
むやうな気持で二人を見つめてやつた。男は痩せて鋭い顔をしてゐる。山のぼりの仕度をして、
背嚢
(
ルツクサツク
)
を負つてゐる。女は稍
太
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
で、醜い顔をしてゐる。
接吻
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
の豊満な肉体で、痩せて霊的な花世の仏画的な感じと一種の対照をなしている。
無月物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
兄と張り合ふ気持が、意識的にあつたわけでもないが、生まれつき肥り
肉
(
じし
)
で、そのため
大柔
(
おおぬ
)
と名づけられてゐた妹娘の方は、間もなく大海人の寵愛を受けることになつたのである。
鸚鵡:『白鳳』第二部
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
肥り
肉
(
じし
)
の女が、よく汗ばんだ襟首を押しはだける癖があるように、大根は
身体中
(
からだじゅう
)
の肉がはちきれるほど肥えて来ると、息苦しそうに土のなかに爪立をして、むっちりした肩のあたりを一
艸木虫魚
(新字新仮名)
/
薄田泣菫
(著)
当世風の娘ならば丈の高い、少しふとり
肉
(
じし
)
の手のふっくりとして小さい、眼のまつ毛が長くて丸く大きく、唇もあんまり厚くなく、あごのくくれたような輪かくのはっきりしたかおがすき。
妙な子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
骨細ですが、よく
引緊
(
ひきしま
)
った
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
、——いわゆる凝脂が真珠色に光って、二十五というにしては、処女のような美しい身体を持った女です。
銭形平次捕物控:143 仏喜三郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
背を打たれて、おや誰か、と振向いてみると、五十四、五の
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
な町人が、豊かな福相に、
眼皺
(
めじわ
)
をたたえて笑っていた。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
食べ物のよさを物語るようなそのたいへんぐあいのよろしい太り
肉
(
じし
)
の色つやから判断すると、どうしてもご大家の育ちらしいので、しかもそれが普通のご大家ではなく
右門捕物帖:04 青眉の女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
夥
(
おびただ
)
しく並んだ壜棚と背の高い花道のような
卓子
(
テーブル
)
との間に挟まって、カクテル・グラスを、危そうに取り上げている肥り
肉
(
じし
)
のちょっと人好きのする年増女が目にうつった。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
すると、畳敷の方の柱の根に横坐りにして見ていた
内儀
(
かみ
)
さん——ともよの母親——が、は は は は と太り
肉
(
じし
)
を
揺
(
ゆす
)
って「みんなおとッつあんに一ぱい喰った」と笑った。
鮨
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
あなたを、なめたり、吸ったり、
負
(
おぶ
)
ってふりまわしたり——今申したお銀さんは、歌麿の絵のような
嫋々
(
なよなよ
)
とした娘でしたが、——まだ一人、色白で、少しふとり
肉
(
じし
)
で、
婀娜
(
あだ
)
な娘。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
曇った鏡が人を映すように男は
鈍々
(
のろのろ
)
と主人を見上げた。年はまだ三十前、
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
の薄皮だち、血色は激したために余計紅いが、
白粉
(
おしろい
)
を
透
(
とお
)
して、
我邦
(
わがくに
)
の人では無いように美しかった。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
この色白の肥り
肉
(
じし
)
の娘に対する自分の寛やかな愛を、ただそれだけのものとして——言ひかへれば、受けることなしにただ与へるだけのものとして、安らかに眺めてゐられた彼は
鸚鵡:『白鳳』第二部
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
最初から頑強に反対していた船夫の、三十五、六の肥り
肉
(
じし
)
の奴が、そう悲鳴して顔を抑えましたが、体を
海老
(
えび
)
のように曲げたかと思うと、
船縁
(
ふなべり
)
を越して水の中へ真っ逆様に落ち込みました。
犬神娘
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その
密儀
(
ミステリー
)
の香気のゆえに、何となく人らしくない感じもする。しかし
太
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
の女であって唐風の衣裳をつけている点は変わらない。だからインドの女神としての印象を与えるとはいえない。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
の球根がむつちりとした白い肌もあらはに、寒々と乾いた土の上に寝転んだまま、
牙彫
(
げぼ
)
りの彫物のやうな円みと厚ぽつたさとをもつて、曲りなりに高々と花茎と葉とを持ち上げてゐる。
水仙の幻想
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
の豊満な肉体で、花世の仏画的な感じと一種の対照をなしている。
無月物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
穂の短かい
柄
(
え
)
の
先
(
さき
)
に毛の下がった
三国志
(
さんごくし
)
にでも出そうな槍をもつ。そのビーフ・イーターの一人が余の
後
(
うし
)
ろに止まった。彼はあまり
背
(
せ
)
の高くない、
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
の
白髯
(
しろひげ
)
の多いビーフ・イーターであった。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
尤もさう言ふお朝といふ女は、
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
で赤ら顏で、充分色つぽくはあるだらうが、何んとなく
小汚
(
こぎた
)
ない感じのする中年増です。
銭形平次捕物控:305 美しき獲物
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
太り
肉
(
じし
)
で、食べ物のよさを物語るようにたいへん色つやがよろしく、うち見たところいかにも
艶
(
えん
)
に色っぽいのです。しかるに、異様な姿だというのはまずその髪の毛でありました。
右門捕物帖:04 青眉の女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
と、いい直すと、五十
恰好
(
かっこう
)
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
なその権僧正は
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
顔立もよく整って、格幅も見事ですが、恋に狂う型の人間によくある、やや
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
の多血質で、
脹
(
はれ
)
っぽい眼、多い毛などが妙に人目につきます。
銭形平次捕物控:237 毒酒薬酒
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と太り
肉
(
じし
)
のあぶら顔をなでる。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
少し肥り
肉
(
じし
)
で、色の白い、
媚
(
こび
)
を含んだ、妙に素氣ない物言ひも、思はせ振りなところがあつて、男を焦立たせずには措かないと言つた質の女です。
銭形平次捕物控:172 神隠し
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
顏立ちもよく整つて、恰幅も見事ですが、戀に狂ふ型の人間によくある、やゝ
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
の多血質で
脹
(
は
)
れつぽい眼、多い毛などが妙に人目につきます。
銭形平次捕物控:237 毒酒薬酒
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
食い詰め者の摺れっ枯らしなところがあり小作りで
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
で、不断の微笑を絶やさない心掛を持っているだけに、妙に相手に反感を持たせる癖もあったのです。
銭形平次捕物控:246 万両分限
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
食ひ詰め者の
摺
(
す
)
れつからしなところがあり、小作りで
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
で、不斷の微笑を絶やさない心掛を持つてゐるだけに、妙に相手に反感を持たせる癖もあつたのです。
銭形平次捕物控:246 万両分限
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
この二十五六の大年増、
中低
(
なかびく
)
の
盤臺面
(
ばんだいづら
)
で、いささか肥り
肉
(
じし
)
で、非凡の不きりやうですが、座持がよく唄がうまい外に、何んとなく一種不思議な魅力を感じさせる女です。
銭形平次捕物控:320 お六の役目
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
この二十五六の大年増、
中低
(
なかびく
)
の
盤台面
(
ばんだいづら
)
で、いささか肥り
肉
(
じし
)
で、非凡の不きりょうですが、座持がよく唄がうまいほかに、何んとなく一種不思議な魅力を感じさせる女です。
銭形平次捕物控:320 お六の役目
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
年は
二十歳
(
はたち
)
と聽きましたが、色白で少し
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
で、
媚態
(
びたい
)
を作ると、年相應の愛嬌があり、それに齒切れの良い調子や、切れの長い表情的な眼に、なか/\の風情があるのです。
銭形平次捕物控:287 血塗られた祝言
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「呆れた話だ。ブラブラ病の娘が出刃庖丁を持出して、自分の倍もあろうという、
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
の女を、たった一とえぐりに殺せるものかどうか、考えたら解りそうなものじゃないか」
銭形平次捕物控:044 お民の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
先刻
(
さっき
)
お品の口から聞いた通り、入口の四畳半に、血の海に浸った下女のお寅は、二十五六の慾の深そうな
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
の女で、あられもない姿で引っくり返っておりますが、引起してみると
銭形平次捕物控:018 富籤政談
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
さうは言ふものの、身の丈けも
拔群
(
ばつぐん
)
、色白の
肥
(
ふと
)
り
肉
(
じし
)
で、なか/\の立派な男です。
銭形平次捕物控:303 娘の守袋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
“肉”の意味
《名詞》
ニク、(語義1.2.の古語)しし
動物の皮膚に覆われた骨を包む柔らかい組織。
鳥獣類から切り取った食肉。魚肉は含まないことが多い。
1. 2. に類似する柔らかい部分。果肉、印肉などの略。
霊魂と対比しての肉体。
性的イメージを喚起させるものとしての肉体。
基本的な骨組みに付け加えていく具体的な内容。
(出典:Wiktionary)
肉
常用漢字
小2
部首:⾁
6画
“肉”を含む語句
謝肉祭
肉叉
牛肉
肉汁
肉体
肉塊
肉饅頭
皮肉
肉桂
骨肉
肉身
脂肉
痩肉
魚肉
肉親
猪肉
肉附
肉食
鶏肉
鷄肉
...