くわん)” の例文
新字:
半分はんぶんたあとが、にしてざつ一斤入いつきんいれちやくわんほどのかさがあつたのに、何處どこさがしても、一片ひときれもないどころか、はて踏臺ふみだいつてて、押入おしいれすみのぞ
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
僕はバタのくわんをあけながら、軽井沢かるゐざはの夏を思ひ出した。その拍子ひやうしくびすぢがちくりとした。僕は驚いてふり返つた。すると軽井沢に沢山たくさんゐる馬蝿うまばへが一匹飛んで行つた。
鵠沼雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「おい、大急ぎだ。兵営の普請に足りなくなったからテレピンを工場から買って来てれ。そら、あすこにある車をひいてね、四くわんだけ、この名刺を持って行くんだ。」
(新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
このしづかな夫婦ふうふ安之助やすのすけ神戸かうべから土産みやげつてたと養老昆布やうらうこぶくわんをがら/\つて、なかから山椒さんしよりのちひさくむすんだやつしながら、ゆつくり佐伯さへきからの返事へんじかたつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
八の内にもあるやうな脚炉あんくわから引き出した、四角な黒い火入ひいれから蚊遣かやりけむりが盛んに立つてゐる。小男の客は、をりをりその側にあるブリキのくわんから散蓮華ちりれんげ蚤取粉のみとりこすくひ出して、蚊遣の補充をする。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
寢苦ねぐるしおもひのいきつぎに朝戸あさどると、あのとほれまはつたトタンいた屋根板やねいたも、大地だいちに、ひしとなつてへたばつて、魍魎まうりやうをどらした、ブリキくわん瀬戸せとのかけらもかげらした。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
衣紋えもんほそく、圓髷まげを、おくれのまゝ、ブリキのくわんまくらして、緊乎しつかと、白井しらゐさんのわかかあさんがむねいた幼兒をさなごが、おびえたやうに、海軍服かいぐんふくでひよつくりときると、ものをじつて、みつめて
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
繰返くりかへすやうだが、それが二日ふつかで、三日みつかひるすぎ、大雨おほあめよわてて、まだ不安ふあんながら、破家やぶれや引返ひきかへしてから、うす味噌汁みそしる蘇生よみがへるやうなあぢおぼえたばかりで、くわんづめの海苔のり梅干うめぼしのほかなんにもない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)