あけ)” の例文
お吉の指す方、ドブ板の上には、向う側の家の戸口から射すあかりを浴びて、あけに染んだ、もう一人の娘が倒れてゐるではありませんか。
血を好むのだ。彼の目的は血を見るにある。女の血、美人の血。白い皮膚がパッとあけに染まる瞬間の美、それは彼にたとえ難い快感を与えるのだ。
耳香水 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
我すなはち彼に、アルビアをあけ色採いろどりし敗滅ほろびと大いなる殺戮ほふりとはかかる祈りを我等の神宮みやにさゝげしむ 八五—八七
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
それは 精好せいがうあけと白茶の金欄の張交箱に住みし小鼓 といふので、之亦偶〻取り出して見た趣きであらう。精好とは精好織の略で絹織物の一種である。
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
ところがその翌日、早朝乗組員の一人が、背後から心臓を貫かれて、あけに染まっているヴィデの屍体を発見した。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
猟夫りょうしが目くるめいて駆付けると、てざまの白雪に、ぽた、ぽた、ぽたとあけが染まって、どこを撃ったか、黒髪の乱れた、うつくしい女が、仰向あおむけに倒れ
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あけに染まった生首、両手両足が、舞台のあちこちに、人喰い人種の部屋みたいに、ゴロゴロと転がっていた。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かれ匍匐はひ進起しじまひて、庭中に跪ける時に、水潦にはたづみ二五腰に至りき。その臣、あかひも著けたる青摺あをずりきぬ二六たりければ、水潦紅き紐に觸りて、青みなあけになりぬ。
山尾はいくらか恥ずかしそうにホンノリ頬をあけに染めて、無言で天守を下りるのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
天皇陛下てんのうへいか 万歳ばんざい!」とさけぶとともに、みずあけめてえなくなったのでした。
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど、カチェリーナをよく調べてみたとき、彼女はソーニャの考えたように、石にぶっつかって怪我をしたのではなく、歩道をあけに染めた鮮血は、彼女の胸から吐き出されたのだとわかった。
勿体もったいなさ——今になって考えましても、しとみに迷っている、護摩ごまけぶりと、右往左往に泣き惑っている女房たちの袴のあけとが、あの茫然とした験者げんざや術師たちの姿と一しょに、ありありと眼に浮かんで
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
独活の芽のかなしきあけがふふみたるこまごまし土はいまだ払はず
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
行きずりの道のべにして茱萸ぐみははつかにあかあけきはまらなむ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
浮葉きるとぬれし袂のあけのしづくはすにそそぎてなさけ教へむ
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
あけの緒の金皷きんこよせぬとさまさばやよくる人をにくむ湯の宿
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
朝顔のひとつに露のあふれゐて葉かげのあけの鮮かなりけり
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
紫摩金しまごんはえを盡して、あけしゆほこり飾るも
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
一壺のあけの酒、一巻の歌さえあれば
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)
風よ惜しめ一つこもり居る薔薇のあけ
西林図 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
細腰のあけのほそひもほそぼそに
砂がき (旧字旧仮名) / 竹久夢二(著)
あけみたる草見れば
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
お吉の指さす方、ドブ板の上には、向う側の家の戸口からあかりを浴びて、あけに染んだ、もう一人の娘が倒れているではありませんか。
ところが、あけに染んでたおれたのは、長子のウォルターだったので、驚駭きょうがいした主は、返す一撃で自分の心臓を貫いてしまった。次はそれから七年後で、次男ケントの自殺だった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
マラッカをはなれ来りて入つ日の雲のながきににほふあけのいろ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
の汗にしみみ粒だつあけの種子葉鶏頭の種子は柔ら揉みつつ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
君さけぶ道のひかりのをちを見ずやおなじあけなるもやたちのぼる
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
あけの緒の金鼓寄せぬと覚まさばやよくる人を憎む湯の宿
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
母屋もやかたあけ三丈の鈴のつな君とひくたびきぬもてまゐる
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
藍の花あけの花まじり十幾つ朝顔競ふ獄庭には静かなる
遺愛集:02 遺愛集 (新字新仮名) / 島秋人(著)
紫摩金しまごんはえを尽して、あけしゆほこり飾るも
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
あけみたる草見れば
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
番頭に案内されて行くと、寶屋の廣いかまへの一番奧、東向の小さい部屋をあけに染めて、娘のお島はもう冷たくなりかけて居りました。
雲分きて男神は明くれほのぼのと女神はいまだあけにこもれり
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あけに名の知らぬ花さく野の小道こみちいそぎたまふな小傘をがさ一人ひとり
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
精好せいがうあけとしら茶の金襴きんらんのはりまぜ箱に住みし小皷こつゞみ
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
大袈裟おおげさに斬られて、庭先に転げ落ちたのは丹之丞には遠い従弟で、綾野にはすぐの従兄あにに当る、針目正三郎のあけに染んだ姿だったのです。
瑞若葉みづわかばあけ扇骨木かなめは日の照りを躑躅まじらひ花かとも見ゆ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
岸に立つ袖ふきかへしもみうらのあけを点じてゆくや河かぜ
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
大袈裟おほげさに斬られて、庭先に轉げ落ちたのは丹之丞には遠い從弟で、綾野には直ぐの從兄あにに當る、針目正三郎のあけに染んだ姿だつたのです。
瑞若葉みづわかばあけ扇骨木かなめは日の照りを躑躅まじらひ花かとも見ゆ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
舞ごろも五たりあけ草履ざうりして河原に出でぬ千鳥のなかに
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
三田四國町の大地主、老木屋おいきや勝藏の養父で今年六十八になる八郎兵衞は、その朝隱居所の二階で、あけに染んだ死骸になつて發見されました。
山村の水之尾村は落ちたまるつばきのあけに今日にぎはへり
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ドカドカ雪崩なだれ込んだ子分たち、親分溝口屋鐘五郎が、あけに染んで縡切こときれた姿を見ると、さすがに乱酔の酒もさめてしまいます。
このしめる雨や春雨木のゆく馬のしりがひあけ褪せにけり
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
昨日の朝、お豊が朝の仕度をして、雨戸を開けに行くと、寅五郎は自分の部屋の中で、あけに染んで死んでいたというのです。
鷄頭はつぶさに黒き種子たねながら鷄冠とさかあけよ燃えつきずけり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
昨日の朝、お豊が朝の仕度をして、雨戸を開けに行くと、寅五郎は自分の部屋の中で、あけに染んで死んでゐたといふのです。
鶏頭はつぶさに黒き種子たねながら鶏冠とさかあけよ燃えつきずけり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)