石壇いしだん)” の例文
其處そこで、でこぼこと足場あしばわるい、蒼苔あをごけ夜露よつゆでつる/\とすべる、きし石壇いしだんんでりて、かさいで、きしくさへ、荷物にもつうへ
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
八歳か九歳くさいの時か、とにかくどちらかの秋である。陸軍大将の川島かわしま回向院えこういんぼとけ石壇いしだんの前にたたずみながら、かたの軍隊を検閲けんえつした。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
宮から阪の石壇いしだんを下りて石鳥居を出た処に、また一本百年あまりの杉がある。此杉の下から横長い田圃たんぼがよく見晴される。田圃を北から南へ田川が二つ流れて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
祖母おばあさんはふるこけえたおはかのいくつもならんだ石壇いしだんうへ綺麗きれいいたり、みづをまいたりして
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かゝる行装ぎやうさうにて新婚しんこんの家にいたるゆゑ、その以前雪中の道を作り、雪にて山みちのやうなる所は雪を石壇いしだんのやうにつくり、あるひは雪にてさんじきめく処を作りて見物のたよりとす。
きのふも今日も同じい石壇いしだんの上に座つて
忘春詩集:02 忘春詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
いまにもはるか石壇いしだんへ、面長おもながな、しろかほつまほそいのが駈上かけあがらうかとあやぶみ、いらち、れて、まどから半身はんしんしてわたしたちに、慇懃いんぎんつてくれた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
きしにたちてこれをみれば、かのはしご石壇いしだんのごとくふみくだり、橋をゆく事平地のごとく、そのなかばにいたれば橋揺々えう/\としてあやふき事いはんかたなく、見るにさへ身の毛いよだつばかり也。
切符きつぷつて、改札口かいさつぐちて、精々せい/″\きりすそ泥撥どろはねげないやうに、れた石壇いしだんあがると、一面いちめんあめなかに、不知火しらぬひいてたゞよ都大路みやこおほぢ電燈でんとうながら、横繁吹よこしぶききつけられて
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
きふなんだかさびしくつて、ゑひざめのやうな身震みぶるひがた。いそいで、燈火ともしびあて駆下かけおりる、とおもひがけず、ゆきにはおぼえもない石壇いしだんがあつて、それ下切おりきつたところ宿やどよこながれるるやうな谿河たにがはだつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)