白歯しらは)” の例文
旧字:白齒
お此というのは、山城屋のひとり娘で、町内でも評判の容貌きりょう好しであるが、どういうわけか縁遠くて、二十六七になるまで白歯しらは生娘きむすめであった。
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
には、きよらかな白歯しらはたまふ、真珠しんじゆふ、かひふ。……いま、ちらりと微笑ほゝえむやうな、口元くちもとるゝは、しろはな花片はなびらであつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
頸骨から顎のさきまでぐびりと動いたとたんに、物凄くむき出していた白歯しらはがおのずから隠れて、口は大きな欠伸あくびでもするようにがっくりと開いた。
青蠅 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
そして骸骨がいこつの様な上下の白歯しらはが歯ぐきの根まで現れて来た。そんなことをした所で、何の甲斐もないと知りつつ、両手の爪は、夢中に蓋の裏を、ガリガリと引掻ひっかいた。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
まだ嘘をついたことのない白歯しらはのいろのさざ波を立てゝ、かの女の耳のほとりに一筋の川が流れてゐる。星が、白梅の花を浮かせた様に、ある夜はそのさざ波に落ちるのである。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
水晶すいしょうのまなこ しんじゅの白歯しらは
魔法の笛 (新字新仮名) / ロバート・ブラウニング(著)
手毬を取って、美女たおやめは、たなそこの白きが中に、魔界はしかりや、紅梅の大いなるつぼみ掻撫かいなでながら、たもとのさきを白歯しらはで含むと、ふりが、はらりとたすきにかかる。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と見ると手巾ハンケチさき引啣ひきくわえて、おきみの肩はぶるぶると動いた。白歯しらはの色も涙のつゆ、音するばかりおののいて。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
婦人おんなの意地と、はりとのために、勉めて忍びし鬱憤うっぷんの、幾十倍のいきおいをもって今満身の血をあぶるにぞ、おもては蒼ざめくれないの唇白歯しらはにくいしばりて、ほとんどその身を忘るる折から
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……あはれな犠牲いけにえ婦人をんなも、たゞまをしたばかりでは、をつとこゝろうたがひませう……いましるしを、とふてな、いろせたが、可愛かあいくちびるうごかすと、白歯しらはくはえたものがある。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まゆ長く、ひとみ黒く、色雪の如きに、黒髪のびん乱れ、前髪の根もわかるゝばかり鼻筋はなすじの通つたのが、寝ながら桂木の顔を仰ぐ、白歯しらはも見えた涙の顔に、はれぬえみを含んで、ハツとする胸に
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
眉毛まゆげながく、睫毛まつげく、彼方むかふうなじに、満坐まんざきやくにして、せなはうは、花輪はなわへだてゝ、だれにもえない。——此方こなたなゝめくらゐな横顔よこがほで、鼻筋はなすぢがスツとして、微笑ほゝゑむだやうな白歯しらはえた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふわ/\と其処そこなびく、湯気ゆげほそかどの、よこたゞよ消際きえぎはが、こんもりとやさしはなのこして、ぽつといて、衣絵きぬゑさんのまゆくちくちびる白歯しらは。……あゝあのときの、死顔しにがほが、まざ/\と、いまひざへ……
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
夫人の白歯しらはの上を縫うよ。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)