白日はくじつ)” の例文
私の生活や思想や性格の上に大きな影響を及ぼしたであろうと思われる何ものをも私は今、白日はくじつのうちにさらけ出しておかねばならぬ。
白日はくじつに照された景色よりも月光に照されてぼんやりしている景色の方が、何とのう、神秘的な、怪奇的な奥床おくゆかしい気分をそそると同じように
歴史的探偵小説の興味 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
こは芸術を使命とするものには白日はくじつよりも明らかなる事実なり。然れども独自の眼を以てするはかならずしも容易のわざにあらず。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
然し、その性質如何いかんかゝはらず、一たい人の犯罪乃至ないしは祕密を探し尋ねて、それを白日はくじつにさらし出すとふ事はあんまり好い氣持のするものぢやありません。
探偵小説の魅力 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
いずれにせよ、南朝方のよろこぶ足利家の内訌ないこうは、これによって大きな肉の裂け目を、白日はくじつにさらしてしまった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつも私が、丁度夢の中の娘に叫ぶやうに、ふいに白日はくじつの中に現はれたところの、現実の娘に呼びかけようとした。どうして、何故に、夢が現実にやつて来たのだらうか。
田舎の時計他十二篇 (新字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
書生が可厭いやさに商売を遣らうと云ふのなら、未だほか幾多いくらも好い商売は有りますさ、何を苦んでこんな極悪非道な、白日はくじつとうすとはうか、病人の喉口のどくちすとはうか
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
サインの硝子ガラスくだけ、電気看板が壁体へきたいからグッと右の方へ傾くと、まだそのままにしてあったお千代の屍体がぬっと白日はくじつのもとに露出してきたもんだから、見て居た係官や群衆は
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
どうしてもえられぬと云う一念の結晶して、さんとして白日はくじつを射返すものである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふぢはなむらさきは、眞晝まひる色香いろかおぼろにして、白日はくじつゆめまみゆる麗人れいじん面影おもかげあり。憧憬あこがれつゝもあふぐものに、きみかよふらむ、高樓たかどのわた廻廊くわいらうは、燃立もえた躑躅つゝじそらかゝりて、宛然さながらにじへるがごとし。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
恵林寺えりんじの慢心和尚が、途轍とてつもない大きな卒塔婆そとばをかつぎ込んで、従者を一人もつれずに西の方へスタスタと歩いて行くのが、白日はくじつのことですから、すべての人が注目しないわけにはゆきません。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鳥と云はず白日はくじつ虹のさす空を飛ばばはねある虫の雌雄めをとも
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
白日はくじつの下に何人も裁決してはくれないのです。
三面一体の生活へ (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
たましひの雑艸園の白日はくじつはかぎりなくいたましきかな。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
白日はくじつ薔薇さうびの花に射かへすとき
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
かかる白日はくじつもと万人衆目ばんにんしゅうもくのあるなかで、忍術にんじゅつ秘法ひほうをどうあらそうのだろうか。争うとすればどうするのだろうか?
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが白日はくじつの光をあびて集まっているのでもあろうか。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たましひの雑艸園の白日はくじつの声もなきかがやかしさを
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うてなを、白日はくじつあるひいだあるひさゝげてた。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おぬし等は、何の面目あって、白日はくじつの下を歩けるか。いや、この御墓前へ二度とまみえ奉るかんばせがあるか
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——もちろん一匹の二十日鼠は、哀れな梅田十八の旧態にかえった姿だった。他の一匹は臙脂色のワンピースが旧態にかえった姿だった。ルリ子は自分が白日はくじつの下に素裸になっているのも知らず、ベンチから立ち上った」
軍用鼠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
白日はくじつの光の水脈みを
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「お身自身、過去の白業黒業びゃくごうこくごうとも、余すなく、白日はくじつさらして、罪を、天に求め、自身、自身を裁き切らんとしておらるるが……。まだあったぞ、もうひとり、お島がな」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白日はくじつもとの大空襲!
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
せめて罪科のつぐないを果たして、この穢身えしんを洗わないことには、どうも白日はくじつの下で、人なみの口もきけません。一ト目、お会いしたからには、はや、おさらばでございまする
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
突風とっぷうに見まわれた紙屑かみくずか、白日はくじつに照らされた蜘蛛くもの子のように、クルクル舞いをして呂宋兵衛とその手下ども、スルスルと土手草どてくさへとびついて、雑木林ぞうきばやしの深みへもぐりこんだかと思うと
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白木しらき祭壇さいだんには四ほうざさの葉がそよぎ、御霊鏡みたまかがみが、白日はくじつのように光っている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それを白日はくじつもとで、しかも往還に近い街道すじでやれるのでござるか」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
匹夫ひっぷっ。白日はくじつおそれず、そんな所で、何しているかっ」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)