疲勞つかれ)” の例文
新字:疲労
晝のうちは、それでも何事も起りませんが、あまり騷ぎが大袈裟だつたので、夜になると、皆んなの顏には明かに疲勞つかれの色がたゞよひます。
洋服を脱ぐのが面倒臭いから、私は入らない積りだつたが、皆なに勸められて旅の疲勞つかれを忘れに行つた。こゝの宿から河津川かはづがはが見えた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さながら水を掻きゐたるかひが、疲勞つかれまたは危き事を避けんため、一の笛のとともにみな止まる如くなりき 一三三—一三五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
むねれたやうにうなづいてつたが、汽車きしやられていさゝかの疲勞つかれまじつて、やまうつくしさにせられて萎々なえ/\つた、歎息ためいきのやうにもきこえた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
日出雄少年ひでをせうねん頑是ぐわんぜなき少年せうねんつねとてかゝる境遇きやうぐうちても、昨夜さくや以來いらい疲勞つかれには堪兼たへかねて、わたくしひざもたれたまゝ、スヤ/\とねむりかけたが、たちま可憐かれんくちびるれてゆめこゑ
男はみな山深くわけ入つて木を伐り炭を燒くに忙しく、女どもはまた蕎麥畑そばばたけの手入や大豆の刈入れをやらねばならなかつたので何れもその疲勞つかれから早く戸を閉ぢてて了つた。
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
かれもつとこのところ書物しよもつは、歴史れきし哲學てつがくで、醫學上いがくじやう書物しよもつは、たゞ醫者ヴラーチ』とふ一雜誌ざつしつてゐるのにぎぬ。讀書どくしよ爲初しはじめるといつ數時間すうじかん續樣つゞけさまむのであるが、すこしもれで疲勞つかれぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
此の疲勞つかれが出たのか、周三は、お房の許へ引越ひツこして來たばんは實に好く眠ツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
永い間の疲勞つかれ
メランコリア (旧字旧仮名) / 三富朽葉(著)
また我はほかこみちを通れる時より身輕ければ、疲勞つかれを覺ゆることなくしてかの足早き二の靈に從ひつゝ歩みゐたるに 七—九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
心靜こゝろしづかまくらにはいたが、民子たみこうしてねむられよう、ひる疲勞つかれおぼゆるにつけても、おもらるゝのちたび
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さあうなると今迄いまゝで張詰はりつめてつた幾分いくぶんゆるんでて、疲勞つかれうえかんじてる。
半島の絶端を極めたいと思ふ勃々とした心が先に立つて、吾儕はこゝへ來る迄の疲勞つかれと熱苦しさとを忘れた。「僕は斯ういふ路を歩いて行くのが好きサ。」とK君は私を顧みながら言つた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
汝の足善き願ひに勝たるゝがゆゑに疲勞つかれをしらざるのみならず上方うへに運ばるゝをよろこぶにいたらむ。 一二四—一二六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
『これ、水兵すいへい少年せうねんひど疲勞つかれる、あまりさわいではいかぬ』と打笑うちえみつゝ
自由の意志と與へらる(この意志もしはじめて天と戰ふ時の疲勞つかれに堪へ後善く養はるれば凡ての物に勝つ) 七六—七八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)