猶太ユダヤ)” の例文
猶太ユダヤ心理学派のり方だが、事実どうかぞえたって千フランには二法足らないんだから、やすいこた安いわけで、誰だって文句は言えまい。
あらまあオウ・マイと鼻の穴から発声する亜米利加アメリカ女が、肌着はだぎ洗濯せんたくしたことのない猶太ユダヤ人が、しかし、仏蘭西フランス人だけは長い航海を軽蔑けいべつして
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
猶太ユダヤ の赤い顔のおかみが、女にカードを渡した。そして何か言った。女はそれを俺に示して、テーブルの上の銅貨を拾ってみせた。
苦力頭の表情 (新字新仮名) / 里村欣三(著)
その陶器やきものが自分の所有になった気がしないといったあの猶太ユダヤ人の蒐集家サムエルと同じものを新吉は自分に発見しておそろしくなった。
巴里祭 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ロスチャイルドを親方にして民族国家をパレスタインに建設しようとする猶太ユダヤ「ジオニスト運動と英国の根本政策とは一致した」。
ロンドン一九二九年 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
猶太ユダヤ系音楽家をほとんど根こそぎ駆逐した今日のドイツで、それは鳥無き里の蝙蝠こうもりではなかったかという疑惧は充分にあったのである。
「左様でございます。わたくしはユーヂットにならうと思ふのでございます。ユーヂットと申しますのは猶太ユダヤの美しい娘の名でございます。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
けれども、この場合、伸子のヒステリー性発作と猶太ユダヤ型の犯罪とは、とうてい一致し得べからざるほどに隔絶したものではないか。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「アインシュタインは猶太ユダヤ人ですからそう云うことが細かいんでしょうね」と、山本氏は注釈を入れたが、亜米利加はとにかく
陰翳礼讃 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
西班牙スペイン人の父と、猶太ユダヤ人の母との間に生れた混血児だと申しますが、一見したところでは純然たるヤンキーとしか思われませぬ。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しからば猶太ユダヤの亡国は当然であるが、カイゼルはこの前車の覆轍ふくてつを怖れずして、またもその轍をんで自らその車をくつがえおわった。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
若し又人ありて馬太伝は猶太ユダヤ人に由て猶太人のために著されし書なるが故に自から猶太的思想を帯びて来世的ならざるを得ないと云うならば
私はこんや中にはどうしても「猶太ユダヤびとのぶな」をえてしまうつもりだった。妻を先きに寝かせて、夜遅くまで一人でそれを読んでいた。
晩夏 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
生活は非常なる豪奢を極め、ローレンスガーデの邸宅は華美壮麗、一九四五年、猶太ユダヤ人豪商オルテヴ・イ・グンドルフ氏から買い受けたものである。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
基督を最期に導いた猶太ユダヤ人が其為に、永久生きて居たと言ふ、同時に猶太種族漂泊史の宿命を語るものと同じ話になる。
「八島」語りの研究 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
猶太ユダヤの古代貨幣なら、猶太文字で署名がしてあるはずだ。ところが英語で署名してある。これ一つでもこの銀貨の、贋物ということが証明できる」
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そこらを通るとき、どうも瑞西の住民は独墺人などとは人種の違うところがある。猶太ユダヤ人などと共通の顔貌をした者が幾らもいるなどと思ったのであった。
リギ山上の一夜 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
西洋人がこの表題を見たら理解にくるしむであろう。元来関係語である以上、同じ国土を東の人は西と称し、西の者が東と称するは、猶太ユダヤの例を以ても知らる。
東西相触れて (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「あの爺さんは猶太ユダヤ人だがね。上海シャンハイにかれこれ三十年住んでいる。あんな奴は一体どう云う量見りょうけんなんだろう?」
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あの男はヘルッオグという本名をもった純然たる猶太ユダヤ系で、その後、間もなく国籍を剥奪されてしまったから
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
猶太ユダヤ宗の人もまたこの日をもって礼拝日となせり。いにし希臘ギリシアの一帝あり、この日をもって神を祭るべきを公布せしより、ついに世間普通の祭日となるに至れり。
日曜日之説 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
柏は猶太ユダヤ人経営の某美術商に雇われている画家で、僅か二三年の知合であるが、磊落不覊らいらくふきのうちにも、情に厚いところがあって、私とは隔てのない間柄であった。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
そこの入口のところには奇妙な胴衣を着た卑しげな猶太ユダヤ人が粗悪な葉巻を燻らして立っていたが、ドリアンを見ると、『閣下どうぞお入り下さいませ。』と云って
我が幾たび空中に樓閣を築きて、又これをこぼちたるを知るか。我が彼猶太ユダヤをとめに逢はんとていかなる手段を盡しゝを知るか。我は用なきに翁を訪ひて金を借りぬ。
猶太ユダヤの坊さんはいまだにこの古式の習慣を伝へて、婦人と同じやうに右から左へ襟を合はせてゐる。
彼女は巨大でもものあたりは猶太ユダヤ女の輪廓をもって、皮膚は荒れて赤らんで堅固な体躯をしていた。
飛行機から墜ちるまで (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
信念の巌は死もこれを動かす能はず、いはんや区々くくたる地上の権力をや。大哲スピノザ、少壮にして猶太ユダヤ神学校にあるや、侃々かんかんの弁を揮つて教条を議し、何のはばかる所なし。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
昨日きのふまでは、独逸ドイツに国籍を置いてゐた猶太ユダヤ人のこのマネージヤアは、抜目なく采配を振ります。
けむり(ラヂオ物語) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
以下猶太ユダヤ人中にあっては罪人に石を抛げ附けて殺す話から、旧約全書中のハンギングの語の意味、エジプト人の話、波斯ペルシア人の話など、ほとんど原論文の句を追っての訳である。
クララはウィリアムを黒い眼の子、黒い眼の子と云ってからかった。クララの説によると黒い眼の子は意地が悪い、人がよくない、猶太ユダヤ人かジプシイでなければ黒い眼色のものはない。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
同じく愛を主とした他力宗であっても、猶太ユダヤ教から出た基督キリスト教はなお、正義の観念が強く、いくらか罪を責むるという趣があるが、真宗はこれと違い絶対的愛、絶対的他力の宗教である。
愚禿親鸞 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
いにしえ猶太ユダヤの神は万物創造の終りにあたってすべての色よい鳥の羽の残りをつづって羽衣はごろもとし、蜜のような愛のいぶきにその胸をふくらませて汝らめおとづれの游牧者をこしらえたのであろう。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
レヰイ教授は、アインシュタインなぞと同じやうに猶太ユダヤ系統の人であつた。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
余は彼の燈火ともしびの海を渡り来て、この狭く薄暗きこうぢに入り、楼上の木欄おばしまに干したる敷布、襦袢はだぎなどまだ取入れぬ人家、頬髭長き猶太ユダヤ教徒のおきな戸前こぜんたゝずみたる居酒屋、一つのはしごは直ちにたかどのに達し
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
猶太ユダヤの大工さんの子だけが絶叫する一つの高尚なる音楽ですね、相闘え、相殺せ、征伐せよ、異民族を駆逐せよ、しからずばこれを殲滅せんめつせよ——これは、歴史だから如何いかんとも致し難い、そこで
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
クサンチスはこれより前に、久しい間、或る老人の猶太ユダヤ人に世話をせられて、世をあぢきなく感じてゐたのである。猶太人はこの女を亜鉛とたんに金めつきをした厭な人形の中に交ぜて置いたのである。
クサンチス (新字旧仮名) / アルベール・サマン(著)
猶太ユダヤ人も王様にも出来る。
「さまよえる老猶太ユダヤ人」らしい淋しい影が一そう拡がり、見るまに彼の全人格と身辺を占領して、この長ばなしを語りおわったとき
「左様でございます。わたくしはユージットになろうと思うのでございます。ユージットと申しますのは猶太ユダヤの美しい娘の名でございます。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
埃だらけの汗だらけになった私が廊下へ顔を出すと、猶太ユダヤ鼻の亭主は、恐ろしい不機嫌な顔を半分ほど梯子段はしごだんの上へ出して
呪の金剛石 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
骰子さいころだのルーレットだのトランプだの将棋だのドミノだのいうものは、そんな目的のために猶太ユダヤ人が考え出して世界中に教え拡めたものである。
悪魔祈祷書 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あの、ツイオン議定書とかにある、猶太ユダヤ建国さ。こんな氷の島だから何にもなるまいけれど、とにかく、ながい懸案だった猶太国ができあがる。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
昼飯の後、私は自分の部屋にこもったり、ヴェランダの籐椅子とういすに足を伸ばしたりしながら、大へんお行儀悪く「猶太ユダヤびとのぶな」を読みつづける。
晩夏 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
西区ウエスト・サイドの上流区域とはちがって労働者、外国移民、猶太ユダヤ人などの住む、より貧しいより生活の苦しい区画とされている。
婦人デーとひな祭 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
しかしてその子孫が間も無く幕天席地ばくてんせきち何処どこを故国と頼むべき無き猶太ユダヤ民族と成り果てた事を顧みざるものである。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
猶太ユダヤ人の冠るような縁なし帽に鉤裂かぎざきだらけの上衣を着けて、薄暗い土間の奥からこんなオヤジに観察されていることは決して気持のいいものではなかった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
それは浮世の俗流に対して、覚醒の鼓を鳴らすからで、たとえば遠い小亜細亜の、猶太ユダヤに産れた基督キリストが、大きな真理まことを説いたため、十字架の犠牲になったように。
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼等に征服された女はことごとくギリシア人か、ワラキア人か、アルメニア人か、さもなければ猶太ユダヤ人である
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
業慾そうな猶太ユダヤ系の赧ら顔の主人が、風の入りそうもない店の奥の薄暗いカウンターに、ボイルされた、ポテトーみたいに、湯気の吹きそうな寝顔を投げ出していた。
放浪の宿 (新字新仮名) / 里村欣三(著)
若し辭まずば、かゝる女と並び坐することを得しならん。汝は猶アヌンチヤタの我猶太ユダヤ少女なることを疑ふにや。我にはかく迄似たる女の世にあらんとは信ぜられず。