猟人かりゅうど)” の例文
旧字:獵人
岡山「それで一つ眼ならまるで化物だ、こんな山の中で猟人かりゅうどが居るから追掛けるぞ、そんな姿なりでピョコ/\やって来るな、亭主を呼べ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
僕は最中にも食いきて、本を見ていると、梯子はしご忍足しのびあしで上って来るものがある。猟銃の音を聞き慣れた鳥は、猟人かりゅうどを近くは寄せない。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あるものは袖口そでぐちくくった朱色の着物の上に、唐錦からにしきのちゃんちゃんをひざのあたりまで垂らして、まるで錦に包まれた猟人かりゅうどのように見えた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
むら猟人かりゅうどのおじいさんがんでいました。このおじいさんは、長年ながねん猟人かりゅうどをしていまして、鉄砲てっぽうつことの大名人だいめいじんでありました。
おおかみと人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
男の猟人かりゅうどの姿に私はなつてゐた。あしがほんのわづかその雪原にたゞそれだけの植物のかすかな影をかすかに立ててちらほらと生えてゐた。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
鳴りをひそめていた賊は、もう仕止めた猟人かりゅうどが姿を見せるように、公然と、声をあげて、ましらの如く思い思いに、谷底へすべり降りて行った。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
野育ちの青年が、水車小屋の娘に恋して、一度は得意と幸福の絶頂に押し上げられながら、黒いひげを生やした恋仇こいがたき猟人かりゅうどが現われて、女と望みを
現に今から百余年ぜん、天明年間に日向国ひゅうがのくに山中やまなかで、猟人かりゅうどが獣を捕る為に張って置いた菟道弓うじゆみというものに、人か獣か判らぬような怪物がかかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
奈良朝時代の歌集なる『万葉集』に、乞食の歌というのが二つありますが、一つは漁師の歌、一つは猟人かりゅうどの歌です。
歌の文句の中に嬌名きょうめいを留めている者は、明治に入ってからでもまだ幾らもある。節子ふしこのとみというゾレがおそらくは最後のもので、現に八十余歳の長命で、猟人かりゅうどの妻になって生きている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
先代の名人がアドの猟人かりゅうどをば附合うてくれられた。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
与助よすけは、いつか猟人かりゅうどのおじいさんがはなしたことをおもして、おおかみがなさけをかんじてくれたのではないかとかんがえました。
おおかみと人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それだのに昨夜また私の夢の中に見えて、猟人かりゅうどの姿をし、何処どこまでお前は川のほとりを歩いて行つたのだ……。何をおまへはまだ探してゐるのだ。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
猟人かりゅうどのように、山伏たちは、熊笹や木の中へ飛びこんだ。陽はいつか山のにかくれて、冷たい気が白々と降りてくる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうも仕方がないから此の通り秋はきこりをして、冬になれば猟人かりゅうどをして漸々よう/\に暮している、実に尾羽打枯らした此の姿で、此所こゝで逢おうとは思わなんだのう
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これは上州吾妻郡あがつまごおり四万しまの山口と申す所へ抜けてまいる間道で、猟人かりゅうどそまでなければ通らんみちでございますが、両人ふたりは身の上が怖いから山中さんちゅうを怖いとも思わず
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これにひきかえて、母子おやこのくまをたずにもどったやさしい猟人かりゅうどは、どうか、はやく、あの母子おやこのくまはどこかへかくれてくれればいいとおもいながらあるいてきました。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その晩、相手の男と別れてから、王四は途中の芒原すすきはらで寝てしまった。事これだけなら、その一すいは無上天国そのものだった。ところが折ふし通りかかった猟人かりゅうどがある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
通りかゝった猟人かりゅうどは、鹽原角右衞門という浪人で、己のがなるを聞いて助けべえと思って、現在忠義の家来なり、妹を片付ければ弟も同様な岸田屋宇之助を鉄砲でったえ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
この陳達が、そんなしがねえ猟人かりゅうどや百姓いじめをするものか。お互い三人が義の盃を交わしたとき、第一に誓ったのは、盗賊はしても弱い者泣かせはしまいぞということだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このむら人々ひとびとも、ゆきもると、おおかみや、くまにおそわれることをおそれました。けれど、上手じょうず猟人かりゅうどのおじいさんがんでいるので、みなは、どれほど安心あんしんしていたかしれません。
おおかみと人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
お蝶は、最前下の方でオ——イという声を確かに耳にしましたが、まさか、そんな女肉の猟人かりゅうどが、くッ付いて来るとも思わず、幾曲りの道のつづくにまかせて歩みつづけているのでした。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
川端の家でも吹出すと、村中で家数いえかず沢山たんとは有りませんが、ぶうー/\と竹法螺を吹出し、何事かと猟人かりゅうども有るから鉄砲をかつぎ、又は鎌あるいすきくわなどを持って段々村中の者が集まるという。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その途中とちゅうで、らない猟人かりゅうどあいました。その猟人かりゅうどもこれからやまへ、くまをちにゆこうというのです。そのおとこは、傲慢ごうまんでありまして、なにも獲物えものなしにかえ猟人かりゅうどますとはなさきわらいました。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さきごろ裾野すその猟人かりゅうどが、この黒鷲が落ちたところをりましたとおとどけにおよんだので、見ると、どこでやられたのか、ももと左のつばさのわきに、二ヵしょ鉄砲傷てっぽうきずをうけております。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人と見たら囓付かみつくべき猛獣が、私の命を助けるとは此の上の恩誼おんぎはない、辱けない/\、さア熊よ、お前はもういから早く元の穴へお戻り、うか/\してると猟人かりゅうどのために撃たれるぞよ
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「帰る途中で、兎捕りの李吉りきちっていう猟人かりゅうどッつかまえて聞いたことだが」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猟人かりゅうど二人が案じて居りますところへ、見馴れぬ女が尋ねてまいりまして
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
不思議にも文治が命の助かります次第はのちのお話といたしまして、さて此方こなたは二居ヶ峰のふもと、こんもり樹茅きかやの茂れる山間やまあいには珍らしき立派な離家はなれやがあります。多分猟人かりゅうどうちの親方でございましょう。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
どうも、猟人かりゅうどではなし、お百姓さんとも思われねえが
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)