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しと
ふりがな文庫
“
淑
(
しと
)” の例文
一同の話が罷業の臆測を
赦
(
ゆる
)
さぬ流れに不安の空気を流しているときとて、話につれて
淑
(
しと
)
やかな彼女の顔もどことなく沈んでいった。
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
この美女たちがいずれも長い
裳裾
(
もすそ
)
を曳き、薄い
練絹
(
ねりぎぬ
)
の
被衣
(
かつぎ
)
を微風に
嬲
(
なぶ
)
らせながら、
擦
(
す
)
れ違うとお互いに
淑
(
しと
)
やかな会釈を交わしつつ
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
ある小鳥のようなわざとらしい落ち着きのない態度と、
愛嬌
(
あいきょう
)
を
装
(
よそお
)
ってはいるが
淑
(
しと
)
やかさと親愛さとに富んだ話し方をそなえていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
秋作氏のそばには、ついこの夏、結婚したばかりの
従姉
(
いとこ
)
の
槇子
(
まきこ
)
が
淑
(
しと
)
やかに寄り添い、そのとなりに、長六閣下の白い
毬栗頭
(
どんぐりあたま
)
が見えている。
キャラコさん:11 新しき出発
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
筒井は
淑
(
しと
)
やかにこれ以上たずねてくれるなという、柔らかい印象をあたえた。父という人は自らの
無躾
(
ぶしつけ
)
を
詫
(
わ
)
びるように、やさしくいった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
▼ もっと見る
九の
淑
(
しと
)
やかな婦人のお供をして、大きなカバンを提げながら、改札口のほうへ向って、神妙に婦人のあとから地下道の階段をおりて行った。
三の字旅行会
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
東洋人独特の
淑
(
しと
)
やかさはあり、それに髪は
断
(
き
)
ってはいなかったが、シイカの面影にはどこかそのクララに似たところがあった。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
男も女も、皆上品で慎み深く、典雅でおっとりとした様子をしていた。特に女は美しく、
淑
(
しと
)
やかな上にコケチッシュであった。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
ジエィン、あなたは
淑
(
しと
)
やかで勤勉で無慾で、誠實で、
移
(
うつ
)
り氣な所がなく、而も勇敢です。實に
優
(
やさ
)
しくまた實に
雄々
(
をゝ
)
しいのです。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
菫色の
薔薇
(
ばら
)
の花、
曲
(
こじ
)
けた
小娘
(
こむすめ
)
の
淑
(
しと
)
やかさが見える
黄色
(
きいろ
)
の
薔薇
(
ばら
)
の花、おまへの眼は
他
(
ひと
)
よりも大きい、
僞善
(
ぎぜん
)
の花よ、
無言
(
むごん
)
の花よ。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
しかし女は依然として
淑
(
しと
)
やかな態度を保っていた。笑われれば笑わるるほど落ち着く性質の女であるかのように見えた。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
淑
(
しと
)
やかだと云ふだけでは済まない、非常時に際して充分適当な態度をとれるやう
確
(
し
)
つかりした女にならなくてはいけないと云ふやうな事も教へます。
内気な娘とお転婆娘
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
彼女はそう言って、彼らのコップにサイダーを
注
(
つ
)
いだりした。秋川の妹であったころに比べると、彼女はいかにも若妻らしい
淑
(
しと
)
やかさを見せていた。
街頭の偽映鏡
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
あの娘は美しいけれど、あれでいざとなれば恋人を捨てるんだろう。あの奥様は
淑
(
しと
)
やかに見えるが、あれで娼婦のような性質が隠れているのだろう。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
約言すると、彼女は戯れ笑うときは一個の快活な少女だった。けれども、黙していることの多い人間の生活では彼女はむしろ寂しい
淑
(
しと
)
やかな娘だった。
五階の窓:04 合作の四
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
瑠璃子は、
淑
(
しと
)
やかに椅子から、身を起したとき、彼女の眉宇の間には、凄じい決心の色が、アリアリと浮んでゐた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
晩餐
(
ばんさん
)
の招待だ。
淑
(
しと
)
やかな女である。ことにさかんに主人が主人がと言うから、
良人
(
おっと
)
があるならとメリコフは安心した。が、ぜひ訪問すると約束したわけではない。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
幡江の
淑
(
しと
)
やかな頬に、血の気がのぼって、神経的な、きっぱりした確信を湛えた顔に変ってしまった。
オフェリヤ殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
雪之丞の、そうした
容態
(
かたち
)
は、相も変らず、
淑
(
しと
)
やかに、優しかったが、しかし、不思議に、五分の油断も
隙
(
すき
)
もない気合が
漲
(
みなぎ
)
って、どんな太刀をも、寄せつけなかった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
被衣をするりと払って、かれは狭い竹縁にあがって、あるじの兼好法師とむかい合って
淑
(
しと
)
やかに坐った。小さい庵室の中には調度らしいものはなんにも見えなかった。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
又、何といふ
初初
(
うぶうぶ
)
しさだ。室生君。君はいい心境に落ちついた。君の之等の詩は
淑
(
しと
)
やかに読んでもいい、声あげて読んでもいい。庭園の朝、木蔭で一人で読んでもいい。
愛の詩集:02 愛の詩集のはじめに
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
明治年代の、
淑
(
しと
)
やかに育てられた、つつしみぶかい娘には、代表してくれている涙を包んでいる。
九条武子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
しかも山の手の(しかも往年の)令嬢か何かのように
淑
(
しと
)
やかで、知人とならぶと、私は知人同様浅草の外の人間なのに、なぜか自分がそこにそぐわぬ浅草の人間のような気がし
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
従って女子の気質は
淑
(
しと
)
やかで優しく、英語のいわゆるソフトという感じを与える。
現代の婦人に告ぐ
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
「兄上、照子どのは、
千蔭流
(
ちかげりゅう
)
の書もよく書くし、
薙刀
(
なぎなた
)
も、だいぶ習ったそうです。それに、何よりは、
淑
(
しと
)
やかな婦人だそうですから、きっと、お気にいるに違いない。お楽しみですな」
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
五百石の女隠居になった気で、この時もせいぜい
淑
(
しと
)
やかに軽く頭をさげただけだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
夫人は
愛嬌
(
あいきょう
)
のある顔を見せて
淑
(
しと
)
やかに
拝
(
おじぎ
)
をして
房
(
へや
)
を出て往った。
悪僧
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
何らならないと反省して、
淑
(
しと
)
やかに自分を責めた。
踊る地平線:10 長靴の春
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
「いえ、もうちゃんと、ご両親も丹波屋の旦那も、何度かこの寮へそっと来られて、あなたの御様子は充分ご承知でいらっしゃいます。どことなくしっかりして、そして
淑
(
しと
)
やかな娘御だと、皆さんだいぶお気に入りです」
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
もろもろの愚弄の
眼
(
まなこ
)
は
淑
(
しと
)
やかとなり
在りし日の歌:亡き児文也の霊に捧ぐ
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
助けて下さった若い娘さん
淑
(
しと
)
やかな方
アイヌ神謡集
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
淑
(
しと
)
やかにつつましき夫人は
晶子詩篇全集拾遺
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
……ママのねがいにかけて、あたしは
淑
(
しと
)
やかなフランスの娘になろうと、それこそ、死んだ気になってさまざまつとめましたの。
キャラコさん:05 鴎
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「お氣の毒ですが、今心當りが無いものですから。」白い扉は
閉
(
しま
)
つた、いとも上品にそして
淑
(
しと
)
やかに。けれども私は閉め出されて了つたのだ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
それは穏かに庭で育った高価な家畜のような
淑
(
しと
)
やかさをもっていた。また遠く入江を包んだ二本の
岬
(
みさき
)
は花園を抱いた黒い腕のように曲っていた。
花園の思想
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
そして「せっかくあなたもお骨折り下さいましたのにまことに残念でございました」と私に
淑
(
しと
)
やかな笑顔を向けた。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
瑠璃子は、
淑
(
しと
)
やかに
椅子
(
いす
)
から、身を起したとき、彼女の
眉宇
(
びう
)
の間には、
凄
(
すさま
)
じい決心の色が、アリアリと浮んでいた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そうした女に特有の
淑
(
しと
)
やかさいじらしさ、愛らしさを完備した女性であることによっても知られるのである。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
みんな奥様のお口添えがあったからでして、なんでも、旦那様はどちらかというと、口
喧
(
やかま
)
しいお方でしたが、奥様は、いかにも大家の娘らしく、寛大で、
淑
(
しと
)
やかで
幽霊妻
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
その
淑
(
しと
)
やかに落ち着いた振袖姿は、ストーン氏とまるで正反対の対照を作っていた。ストーン氏は、そうした女の態度を見かえると、吐き出すような口調で問うた。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
又、何といふ
初初
(
うぶうぶ
)
しさだ。室生君。君はいい心境に落ちついた。君の之等の詩は
淑
(
しと
)
やかに読んでもいい、声あげて読んでもいい。庭園の朝、木蔭で一人で読んでもいい。
愛の詩集:03 愛の詩集
(新字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
この夜ほど二人がしんみりと語ったことはなかった。
淑
(
しと
)
やかに
団扇
(
うちわ
)
を使いながら、どうかすると心持ち
髷
(
まげ
)
を傾けて寂しくほほ笑む。と螢が一匹隣りの庭から飛んで来た。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
何時も
淑
(
しと
)
やかな落着いた妻でした。よく私の面倒を見て呉れて、家事の好きな、自分の口から言うのは可笑しいが、しかし、事実です。フォニックスの町では、誰でも知っています。
アリゾナの女虎
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
彼女の後ろに
身長
(
せい
)
の高い紳士が、エチケットの本のように、
淑
(
しと
)
やかに立っていた。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
はてな! と顔をあげてよく見ると、奉公にあがったはずのおさよ婆さんが、これはまたなんとしたことか、殿様の御母堂然と上品ぶって、ふっくらとしたしとねの上から
淑
(
しと
)
やかに見おろしている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「いえ、御挨拶では痛み入ります」と、娘も
淑
(
しと
)
やかに
会釈
(
えしゃく
)
した。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
眼鼻立
(
めはなだ
)
ちも同じやうに
整
(
とゝの
)
つてゐた。けれども彼女の表情には、何處となく打ち解けない所があり、態度にも
淑
(
しと
)
やかな
裡
(
うち
)
にいくらか隔てがあつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
日ごろは
淑
(
しと
)
やかで、大きな声でものをいうためしもない冬亭にしては、ありそうにもないいきりかたで、冬木は呆気にとられて、笑ってしまった。
西林図
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
先ずこの娘の好きな食物と飲物を取りよせてみたものの、日本の娘とよく似た
淑
(
しと
)
やかな
羞恥
(
しゅうち
)
を浮べ、ヨハンが何か訊ねても短い答えを云うだけだった。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
肚
(
はら
)
の中はいかにもあれ、すこぶる
淑
(
しと
)
やかに礼儀正しく、高い教養もあり洗練された社交的の典雅さをも示して
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
淑
常用漢字
中学
部首:⽔
11画
“淑”を含む語句
淑女
貞淑
私淑
石上私淑言
淑芳
淑徳
淑景舎
紀淑人
紀淑雄
紳士淑女
貞淑温雅
温淑
温優貞淑
中根淑
淑雅
淑貞
貴顕淑女達
淑美
淑慝
淑慕
...