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泄
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も
ふりがな文庫
“
泄
(
も
)” の例文
思わず岸本は支那留学生に事寄せて、国を出る時には想像もつかなかったような苦い経験を、日頃の忍耐と憤慨とを
泄
(
も
)
らそうとした。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
千登世は思ひ餘つて度々
制
(
おさ
)
へきれない
嗟
(
なげ
)
きを
泄
(
も
)
らした。と忽ち、幾年の後に成人した子供が訪ねて來る日のことが思はれた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
若
(
も
)
し
之
(
これ
)
に
説
(
と
)
くに
厚利
(
こうり
)
を
以
(
もつ
)
てせば、
則
(
すなは
)
ち
陰
(
ひそか
)
に
其言
(
そのげん
)
を
用
(
もち
)
ひて
顯
(
あらは
)
に
其身
(
そのみ
)
を
棄
(
す
)
てん。
此
(
これ
)
を
之
(
こ
)
れ
知
(
し
)
らざる
可
(
べ
)
からざるなり。
夫
(
そ
)
れ
事
(
こと
)
は
密
(
みつ
)
を
以
(
もつ
)
て
成
(
な
)
り、
語
(
ご
)
は
泄
(
も
)
るるを
以
(
もつ
)
て
敗
(
やぶ
)
る。
国訳史記列伝:03 老荘申韓列伝第三
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
彼九州に遊びし時家を
憶
(
おも
)
ふの詩あり、曰く客蹤乗
レ
興輙盤桓、筐裡春衣酒暈斑、遙憶香閨燈下夢、先
レ
吾飛過振鰭山、と。彼は其詩に屡々家庭の消息を
泄
(
も
)
らせり。
頼襄を論ず
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
はるかに
狼
(
おおかみ
)
が凄味の
遠吠
(
とおぼ
)
えを打ち込むと谷間の山彦がすかさずそれを送り返し,望むかぎりは
狭霧
(
さぎり
)
が
朦朧
(
もうろう
)
と立ち込めてほんの特許に
木下闇
(
こしたやみ
)
から
照射
(
ともし
)
の影を惜しそうに
泄
(
も
)
らし
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
▼ もっと見る
かかる
中
(
うち
)
にも心に
些
(
ちと
)
の
弛
(
ゆるみ
)
あれば、
煌々
(
こうこう
)
と
耀
(
かがや
)
き
遍
(
わた
)
れる
御燈
(
みあかし
)
の
影
(
かげ
)
遽
(
にはか
)
に
晦
(
くら
)
み行きて、
天尊
(
てんそん
)
の
御像
(
みかたち
)
も
朧
(
おぼろ
)
に
消失
(
きえう
)
せなんと
吾目
(
わがめ
)
に見ゆるは、
納受
(
のうじゆ
)
の恵に
泄
(
も
)
れ、
擁護
(
おうご
)
の綱も切れ果つるやと
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
中風の中は上中下の中では無いと思われるから下風とは関せぬ。これは仏経中の翻訳語で、甚だ拙な言葉である。風は矢張りただの風で、下風は
身体
(
からだ
)
から風を
泄
(
も
)
らすことである。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
藤原俊基等の近臣と王政の復古を
謀
(
はか
)
って、その
謀
(
はかりごと
)
の
泄
(
も
)
れたいわゆる正中の変の起った翌月のことであるが、その二十一日に、山城、近江の二箇国に強震があって、日吉八王子の神体が墜ち
日本天変地異記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
彼が仕事で夢中に成っている時は、夜遅くまで
洋燈
(
ランプ
)
が点いて、近所の家々で寝て
了
(
しま
)
う頃にも、未だそこからは
燈火
(
あかり
)
が
泄
(
も
)
れていることもある。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼は、その日は終日性急な軒の雪溶けの雨垂の音に混つて共同門の横手の宏莊な屋敷から
泄
(
も
)
れて來るラヂオのニュースや天氣豫報の放送にも、氣遣はしい郷國の消息を知らうと焦心して耳を澄ました。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
岸本は
微笑
(
ほほえ
)
みながら節子が書いたものを読みつづけた。丁度
吃
(
ども
)
った人の口から
泄
(
も
)
れる言葉のようにポツリポツリと物が言ってあったからで。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
この
金之助
(
きんのすけ
)
さんは
正月生
(
しょうがつう
)
まれの二つでも、まだいくらも
人
(
ひと
)
の
言葉
(
ことば
)
を
知
(
し
)
らない。
蕾
(
つぼみ
)
のようなその
脣
(
くちびる
)
からは「うまうま」ぐらいしか
泄
(
も
)
れて
来
(
こ
)
ない。
伸び支度
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
灯は
明々
(
あか/\
)
と壁を
泄
(
も
)
れ、
木魚
(
もくぎよ
)
の音も山の空気に響き渡つて、流れ下る細谷川の
私語
(
さゝやき
)
に交つて、一層の寂しさあはれさを添へる。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
赤々とした燈火は会堂の窓を
泄
(
も
)
れていた。そこに集っていた多勢の子供と共に、私は
田舎
(
いなか
)
らしいクリスマスの晩を送った。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
薄い日の光は
明窓
(
あかりまど
)
から射して、軒から外へ
泄
(
も
)
れる煙の渦を青白く照した。丑松は茫然と思ひ沈んで、
炉
(
ろ
)
に燃え上る『ぼや』の
焔
(
ほのほ
)
を
熟視
(
みつ
)
めて居た。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
林の中を
泄
(
も
)
れて射し入る残りの光が私達の眼に映った。西の空には
僅
(
わず
)
かに黄色が残っていた。鳥の声一つ聞えなかった。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
節子は初めてこんな
精
(
くわ
)
しい消息を
泄
(
も
)
らしてよこした。これを読むと岸本の胸にはいろいろ思い当ることばかりであった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私は
手拭
(
てぬぐい
)
を探して、廊下へ顔を洗いに出た。いくらか清々した気分に成って、引返そうとすると、お房の声は室を
泄
(
も
)
れて廊下の外まで響き渡っていた。
芽生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
車夫は
梶棒
(
かぢぼう
)
を下した後で、そここゝに
灯
(
ひ
)
の
泄
(
も
)
れた家を指して見せて、病院通ひの患者が住むことを夫人に話した。
灯火
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
鷲津さんの家が矢張それで、しめやかな小唄でも
口吟
(
くちずさ
)
んで見るやうな聲が
老人
(
としより
)
の部屋から時々
泄
(
も
)
れて聞えました。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
日の暮れないうちから芝居小屋の
内部
(
なか
)
には
燈火
(
あかり
)
が点く。桟敷の扉を
泄
(
も
)
れる空の薄明りが夢のような思いをさせる。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
漸く普請が出来たばかりだとか、戸のかわりに
唐紙
(
からかみ
)
を押つけ、その透間から月の光も
泄
(
も
)
れた。私達は毛布にくるまり、
燈火
(
あかり
)
も消し、疲れて話もせずに眠った。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
深い思に沈み乍ら、丑松は声のする方へ
辿
(
たど
)
つて行つた。見れば宿直室の窓を
泄
(
も
)
れる
灯
(
ひ
)
が、僅に庭の一部分を照して居るばかり。校舎も、樹木も、形を潜めた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
あの
旧
(
もと
)
の高輪の学窓のチャペルで、夏期学校で、あるいはその他の説教の会で、捨吉には既に親しみのある半分
吃
(
ども
)
ったような声がポツリポツリと牧師の口から
泄
(
も
)
れて来た。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
御晩食
(
おゆはん
)
の後は奥様と
御対座
(
おさしむかい
)
、それは一日のうちでも一番楽しい時で、笑いさざめく御声が御部屋から
泄
(
も
)
れて、耳を
嬲
(
なぶ
)
るように炉辺までも聞える位でした。その時は
珈琲
(
コーヒー
)
か茶を上げました。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それをみだりにわが物と心得て、私用に費やそうものなら、いつか「
天道
(
てんどう
)
」に
泄
(
も
)
れ聞こえる時が来るとも誨えた。彼は先代惣右衛門の出発点を忘れそうな子孫の末を心配しながら死んだ。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
奥山の秋のことですから、
日中
(
ひるなか
)
とは違いましてめっきり寒い。山気は襲いかかって人の
背
(
せなか
)
をぞくぞくさせる。見れば
樹葉
(
きのは
)
を
泄
(
も
)
れる月の光が幹を伝って、流れるように地に落ちておりました。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
長い間溶けずにいた雪の圧力と、垂下った
氷柱
(
つらら
)
の目方とで、ところどころ
壊
(
こわ
)
れかかった北側の草屋根の軒からは、
隣家
(
となり
)
の方から壁伝いに
匍
(
は
)
って来る煙が
泄
(
も
)
れた。丁度、庭も花の真盛りであった。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
若いもの同志の話は木曾
少女
(
おとめ
)
の美しいことに落ちて行った。その時、三吉は姉から聞いた娘のことを言出して、正太の意中を
叩
(
たた
)
いてみた。正太は、唯、あわれに思うというだけのことを
泄
(
も
)
らした。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
話声一つ
泄
(
も
)
れて来なかった。静かだ。
食堂
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
長きなげきは
泄
(
も
)
らすとも
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
泄
漢検1級
部首:⽔
8画
“泄”を含む語句
漏泄
排泄
排泄物
排泄作用
引泄
排泄濠
泄冶
泄瀉
浚泄船
見泄