果然かぜん)” の例文
一同は人造人間をどう解剖したらばよいかとまどったが、それは意外にも手軽るに分解し、果然かぜん、鉄の外皮がいひがパクンと二つに開いた。
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と云うのは、果然かぜん、私は果然という感じがした。の諸戸道雄が、海岸の群衆に混って、はる彼方かなたに、チラリとその姿を見せたのである。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ですから私も王氏同様、翁がこの図を眺める容子ようすに、注意深い眼を注いでいました。すると果然かぜん翁の顔も、みるみる曇ったではありませんか。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
果然かぜん雨天順延となって、私の旅行日程にもまた一日の狂いが生じて来たので、無聊ぶりょうに苦しむよりは雨の日本ラインの情趣でも探勝しようかとなった訳である。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
果然かぜん、ふたりはまえから、家康の身に近よる秘策ひさくをいだいて、わざと、この城内へとらわれてきたのらしい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しこうして果然かぜん嘉永六年六月三日米国軍艦は、舳艫じくろふくみ、忽然こつぜんとして天外より江戸湾の咽吭いんこうなる浦賀に落ち来れり。六無斎子平ろくむさいしへいが、半世紀前に予言したる夢想は、今や実現せり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
『大和本草』に津軽に果然かぜんの自生ありと出づるがどうもあり得べからざる事で、『輶軒ゆうけん小録』に伊藤仁斎の壮時京都近辺の医者が津軽から果然を持ち来ったと記載しあるを読むと
果然かぜん、文政年間に好奇ものずきの人間が現われて、信玄の石棺を引き上げようとした。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
果然かぜん、花前にはなにか信念しんねんがあるなと思った。それでさらにおだやかに
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
今日きょうは雨が欲しく、風がこいしく、かげがなつかしい五月下旬の日であった。せみ、色づいた麦、耳にも眼にもじり/\とあつく、ひかる緑に眼はいたい様であった。果然かぜん寒暖計かんだんけい途方とほうもない八十度をした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
果然かぜん長国が吐き出すように言った。
十万石の怪談 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
果然かぜん、列車が興安駅にくか著かないうちに、早くも警備軍の一隊がドヤドヤと車内に乱入すると、矢庭やにわに全員の自由を拘束こうそくしてしまった。
キド効果 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ところが、果然かぜんその直覚ちょっかくはあべこべで、手に手に細身ほそみの刀、小太刀こだちを持ち、外に待ちかまえていた者たちは、やかた武士ぶしとも思われない黒の覆面ふくめん、黒のいでたち。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
狖に似て大なるは果然かぜんなり。狖に似て小なるは蒙頌もうしょうなり。狖に似て善く躍越するは獑𪕱ざんこなり。猴に似て長臂ちょうひなるはえんなり。猨に似て金尾なるはじゅうなり。猨に似て大きく、能く猨猴を食うはどくなり〉。
彼は四郎の屍体の口腔こうくうを開かせ、その中に手をグッとさし入れると咽喉の方までぐってみたのが、果然かぜん手懸てがかりがあって、耳飾の宝石が出てきた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
果然かぜん——前の日よりもすさまじい群衆ぐんしゅう怒濤どとうが、御岳の頂上ちょうじょう矢来押やらいおしにつめかけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
果然かぜん、ルゾン号は、クイーン・メリー号と、たしかにすれちがうはずだったのに、船影さえ見なかったというのだ。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それによると、内蔵助が、心待ちにし、又、遠林寺の祐海ゆうかいの運動をも、密かにたのんで、待ちに待っている先君内匠頭の舎弟大学の取立ての事は、果然かぜん、絶望と、はっきりきまった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ウム、僕の思ったとおりだッ」大トランクの中は、果然かぜん空っぽであった。帆村は、そのトランクの中に頭をさし入れて、底板を綿密にとりしらべてみた。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
果然かぜん、この寂寥せきりょうはやぶれた。更に、大きな寂寥を加える為の緊張であった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老紳士は果然かぜん鴨下ドクトルだったのだ。ドクトルはなおも口をモガモガさせて、黒革の手袋をはめた手に握った細い洋杖ステッキをふりあげて、いまいましそうにうちふった。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
窮鳥きゅうちょう梁山泊りょうざぱくに入って、果然かぜん、ついに泊軍はくぐんの動きとなる事
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
果然かぜん、昌木教授の表情が変って来た。昌木教授をなだめている人も、いやな顔付にかわった。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
果然かぜん——
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「待て待て、これが弾丸だんがんに合うかどうか」と警部はやおら立ってかたわらの硝子函ガラスばこから弾丸をつまみ出すと薬莢に合わせてみた。果然かぜん、二つはピタリと合って、一つのものになった。
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
換気洞かんきどうを上の方にいあがり、果然かぜん、日本化学会の会合のある室に届いているのである。
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ずるずると覆面はがれていった。そして果然かぜんその下から生色を失った一つの顔が出て来た。ああ、その顔、その顔、ろうのようなその顔の、その頬にはみにくい蟹の形をしたあざが……
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
帆村の声に、私は最後の五分間的な力走りきそうをつづけた。果然かぜんその袋小路の入口へきた。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
果然かぜん! 一分とたがわず二つは一致している——これでも諸君は信じないというか?
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これは何を意味するかというと、彼女はその三つの名前の中には無いということ——果然かぜん、敵の副司令の名前は、残りの三つの名前の中にあるという結論になった。ああ、その三つの名前!
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
淡路島あわじしま一帯を捜索そうさくしてみてくれというお話があったので、あちらの警察とも連絡をとって、しらみつぶしに島内から、その沿岸えんがんをしらべたのですが、すると果然かぜん、耳よりな情報が入ったのです。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
果然かぜん、見る見るうちに蟻のっているような小文字こもじが、べた一面に浮び出た。
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その結果は、果然かぜん僕の考えていたとおりだ。僕は偉大なる遺伝の法則を
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
果然かぜん頭文字かしらもじらしいL・Mの二字が、ケースの一隅いちぐうきざまれているのを発見した。L・Mとは誰であろう。なおもケースをひっくりかえしてみるうちに、遂に某大国の製品を示すぼりが眼についた。
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
果然かぜん、モーニング・コートを着て、下には婦人のスカートをいたやつが、室の入口からフラフラと廊下の方に現れました。りにはしたいのですが、こう強くてはもうあきらめるよりほかはありません。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
果然かぜん、マニラ飛行第四聯隊の目標は、帝都の空にあったのだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
怪事は、果然かぜん、米連主力艦隊を大恐慌だいきょうこうの中にげこんでしまった。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
果然かぜん今夜も鉄格子には錠が下りていなかった。
鍵から抜け出した女 (新字新仮名) / 海野十三(著)