日々にち/\)” の例文
「誠に/\此せつも遠方へゆかれ留守中と存候て、日々にち/\つとめ申候。左様なくば、むねふさがり、やるせなく、御さつし可被下候。」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
博覽會開設につき地方の人士雲の如くに東京に簇集あつまりきたるこれに就て或人説をなして米價騰貴の原因として其の日々にち/\費す所の石數こくすう
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
美しい夏の日々にち/\に私の魂を生気づけた高い勇気、——それも消えた。——おお、神の摂理よ——歓喜の澄んだ一日を一度は私に見せて下さい。
けれども、徒手てぶらで行くのが面白くないんで、其うちの事とはらなかで料簡をさだめて、日々にち/\読書に耽つて四五日すごした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
駕籠かごのせ忠兵衞は附添つきそひ原澤村へと急ぎ立歸りしに母のおもせは如何いかなる者を連來やと日々にち/\案じ居ける所へ皆々歸り來りければ早速忠兵衞を招きて樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
だが死んだ親父の位牌いへいに対しても済まねえから、うちしきいまたがせることは出来ねえ義理だから、裏の明店あきだなへ入れて置き、食物くいものだけは日々にち/\送ってくれべい
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と声を掛けて、奥様が入つて来たのは、それから二時間ばかりつてのこと。丑松の机の上には、日々にち/\思想かんがへ記入かきいれる仮綴の教案簿なぞが置いてある。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
花樹はなき瑞樹みづきの二人が一緒に生れて来る前の私が、身体からだの苦しさ、心細さの日々にち/\に募るばかりの時で、あれを書かなければならなくなつたのだと覚えて居ます。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
一体セルギウスは誰をでも草庵に入れる事にしてゐるが、いつもセルギウスに付けられてゐる僧と、日々にち/\僧院から草庵へ派遣する事になつてゐる当番の僧とで、人をり分る。
自分は幼い子供の時分から何時とはなく維新の元老の社會的地位名聲と日々にち/\の新聞紙が傳へる其の私行上の相違から、う云ふ人達ほど憎むべき僞善者はないと思つて居たので
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
同級どうきう女生徒ぢよせいと二十にんそろひのごむまりあたへしはおろかのこと馴染なじみふでやにたなざらしの手遊てあそびかひしめて、よろこばせしこともあり、さりとは日々にち/\夜々や/\散財さんざい此歳このとしこの身分みぶんにてかなふべきにあらず
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もと/\軍隊風に児童を薫陶くんたうしたいと言ふのが斯人の主義で、日々にち/\の挙動も生活もすべて其から割出してあつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
余所目よそめには大層もない浮気ものらしく見えましても、これが日々にち/\の勤めとなっては大口きいてパッ/\と致すも稼業に馴れると申すものでござりましょう。
そして日々にち/\飯米はんまいはかつて勝手へ出す時、紙袋かみぶくろに取り分け、味噌みそしほかうものなどを添へて、五郎兵衛が手づから持ち運んだ。それを親子炭火すみび自炊じすゐするのである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
つれては向島兩國淺草吉原或は芝神明しばしんめい愛宕あたご又は目黒不動と神社佛閣名所舊跡等を見物して歩行あるき氣隨きずゐ氣儘きまゝ日々にち/\さけ而已のみ多くのみ凡そ十四五日も逗留せしが後藤は萬事心を付新藤夫婦を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
若しこの服従と云ふことがなかつたら、ステパンは日々にち/\勤行ごんぎやうの単調で退屈なのに難儀したり、参詣人の雑沓をうるさがつたり、同宿の不行儀なのを苦に病んだりした事だらう。
午前一時半にとこはいつて、五時に目がめて六時過ぎに起きた。日々にち/\に送る歌を読まうとしたが娘さん達の来る頃だと思ふと何だか気が落ち着かなくて一つより歌が出来なかつた。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
その住持も近頃居りませんので、お町は日々にち/\子供を相手にして、せい/″\仮名尽かなづくし名頭ながしらぐらいを指南して居ります。たまには歌などを書くことも有ります。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
尤も朝になれば、そんなことは忘れ勝ちで、『奈何どうして働かう、奈何して生活しよう——自分は是から将来さき奈何したら好からう』が日々にち/\心を悩ますのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
盡し兄弟はらからなかむつましく兄は弟を思ひ弟は兄を尊敬うやまひ日々にち/\農業のうげふ耕作かうさく油斷ゆだんなくせいを出しひまある時は山に入てたきゞこり或ひは日雇ひよう走り使ひ等に雇はれ兩人とも晝夜を分たずかせぎて親半左衞門を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
文士の決闘を書いたと云ふ良人をつとの原稿はまだ新聞に出て居なかつた。防水剤の話が丁度その欄に載つて居たので読みながら買つて見ようかなどゝ思つた。日々にち/\の歌を詠んで万朝報まんてうはうの歌を選んだ。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いやみんなそれは約束事でよい人も零落おちぶれる事も有れば、また心掛けの善く無い人でも結構な暮しをして、日々にち/\のことに困らないのは前世の因縁であるから
相「殿様お帰りあそばせ、御機嫌さま、誠に存外の御無沙汰を致しました、何時いつも相変らず御番疲ごばんづかれもなく、日々にち/\御苦労さまにぞんじます、厳しい残暑でございます」
お前の手拵えとはかたじけない、日々にち/\の事で誠に気の毒だ、今日は丁度森松を使つかいにやったから、今自分で膳立ぜんだてをして酒をつけようと思っていた処で、丁度いゝから膳を拵えてかん
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
矢張やはり旦那様がおせわしくって、日々にち/\御出勤になりましたり、夜もお帰りは遅し、お留守勝ですから夜業よなべが出来ようかと存じますが、何だか矢張やっぱりせか/\致しまして、なんでございますよ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
多助が日々にち/\裏の茶見世へ来て話をするのを聞いて感心致して居りましたところへ、今日はおかめという叔母が参りましたのを、多助が段々と意見を加え、かたき同志の親子をば助けて遣ろうと云う志は
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
奥「日々にち/\御繁務ごはんむさぞお気疲れ遊ばしましょう、御欝散ごうっさんのため御酒でも召上り、先頃召抱えました島路しまじと申す腰元は踊が上手とのことでございますから、お慰みに御所望ごしょもう遊ばしては如何いかゞでございます」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
多「まア仕合せな事でお得意先が日々にち/\増えるばかりさ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)