敷詰しきつ)” の例文
御徒士町辺おかちまちあたりとほつて見るとお玄関げんくわんところ毛氈もうせん敷詰しきつめ、お土蔵くらから取出とりだした色々いろ/\のお手道具てだうぐなぞをならべ、御家人ごけにんやお旗下衆はたもとしゆう道具商だうぐやをいたすとふので
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
その他は一面に畳が敷詰しきつめてあるが、この畳の破れずにいたのを見たことは、わたくしがこの楽屋に出入でいりをして以来、四、五年間、わずかに一、二度であろう。
勲章 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ソレでホテルに案内されていって見ると、絨氈じゅうたん敷詰しきつめてあるその絨氈はどんな物かと云うと、ず日本で云えば余程の贅沢者ぜいたくもの一寸いっすん四方幾干いくらいって金を出して買うて
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
其処そこへ東京から新任の県知事がお乗込のりこみとあるについて、向った玄関に段々だんだらの幕を打ち、水桶みずおけに真新しい柄杓ひしゃくを備えて、うやうやしく盛砂もりずなして、門から新筵あらむしろ敷詰しきつめてあるのを
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
敷詰しきつめた棕梠しゅろのマットの上を、片足で二十歩ばかりもいで行って、病院のまん中を通る大廊下に出た時には、もう片っ方の松葉杖が邪魔になるような気がしたくらい、調子よく歩いていた。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
上草履うはざうり爪前つまさきほそ嬝娜たをやかこしけた、年若としわか夫人ふじんが、博多はかた伊達卷だてまきした平常着ふだんぎに、おめしこん雨絣あまがすり羽織はおりばかり、つくろはず、等閑なほざり引被ひつかけた、姿すがたは、敷詰しきつめた絨氈じうたん浮出うきいでたあやもなく
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
上草履うわぞうり爪前つまさき細く※娜たおやかに腰を掛けた、年若き夫人が、博多の伊達巻だてまきした平常着ふだんぎに、おめしこん雨絣あまがすりの羽織ばかり、つくろはず、等閑なおざり引被ひっかけた、の姿は、敷詰しきつめた絨氈じゅうたん浮出うきいでたあやもなく
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
拝殿はいでん裏崕うらがけには鬱々うつうつたる其の公園の森をひながら、広前ひろまえは一面、真空まそらなる太陽に、こいしの影一つなく、ただ白紙しらかみ敷詰しきつめた光景ありさまなのが、日射ひざしに、やゝきばんで、びょうとして、何処どこから散つたか
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あの橋の取附とッつきに、松の樹で取廻とりまわして——松原はずッと河を越して広いの林になっておりますな——そして庭を広く取って、大玄関おおげんかんへ石を敷詰しきつめた、素ばらしい門のあるやしきがございましょう。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
雨落あまおち敷詰しきつめたこいしにはこけえて、蛞蝓なめくぢふ、けてじと/\する、うち細君さいくん元結もとゆひをこゝにてると、三七さんしち二十一日にじふいちにちにしてくわして足卷あしまきづける蟷螂かまきりはら寄生蟲きせいちうとなるといつて塾生じゆくせいのゝしつた。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
二人寢ふたりねゆつたりとした立派りつぱなもので、一面いちめんに、ひかりつた、なめらかに艶々つや/\した、ぬめか、羽二重はぶたへか、とおもあは朱鷺色ときいろなのを敷詰しきつめた、いさゝふるびてはえました。が、それはそらくもつて所爲せゐでせう。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)