手前てめえ)” の例文
「馬鹿野郎、人の店賃の世話より、手前てめえの小借りでも返す工夫をしやがれ。二三百両ありゃ、角の酒屋の借りぐらいはけえせるだろう」
かく「何も糞もあるものか、よくのめ/\と来やアがった、手前てめえが意地を附けたばっかりで忰を牢死させるようにしやアがって此奴こいつ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
不断、そうやがるとよ、いか。手前ンとこ狂女きちがいがな、不断そう云やがる事を知ってるから、手前てめえだって尋常ただは通さないんだぜ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私の横ッつらへ喰い切った肉をパッと吹っかけて「悪魔」とか何とか悪態をきやがったんで……手前てめえの悪魔は棚へ上げやがってね。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「これ、さ、早くあゆべよ、つい一口よばれちまったもんだから、手前てめえにも夜道をさせて気の毒だった、明日は休ませっからあゆべよ」
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「みんな手前てめえ達がトンマだからさ。文句をいわずとあやまれあやまれ」——で、賊どもがあやまるという、滑稽な幕がひらかれた。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ずんずん掘って見ろよ、手前てめえたち。」とシルヴァーは落着き払って横柄に言った。「豚胡桃ぶたぐるみでも出て来るだろうぜ」きっとな。」
どうでえ、手前てめえできのいい女郎に、子供を生ませて——とこう眺めていると、鼻は獅子しし鼻、歯は乱杭らんぐい、親の因果が、子に報いってつらだなあ
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
何だと! 覚えておれ? この野郎! 手前てめえは何だって……今日きょう暴化しけがサンパン止めになってる事ぐらいを知らないか、この野郎、手前を
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
調子を交へて「しかし手前てめえが今の様におつう七目題目しちもくだいもくを並べたつて理窟をいへば、己もいはなくつちやあならねえ」といふ。
手前てめえの間抜けから起って、多勢おおぜいの中からコチトラ二人だけがこうして引っ張られ、おまけに人殺しだァと証言するなんて、ふざけやがって……
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ぼけちゃいけねえぜ。オイ、手前てめえさっきの酒ですっかりぼけちまやがったな。ありゃ杉の木に雪がつもったのが風で揺れるんじゃねえか。」
「はて、このおれが云ふのだから、本望に違え無えぢや無えか。手前てめえにやまだ明さなかつたが、三年前に鼠小僧と江戸で噂が高かつたのは——」
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「まあ、いい。手前てめえの口を出すことじゃねえのだ。われあただ、言われたとおり、こっそりこの裏ぐちからしのび出てナ、自身番へ駈けつけて——」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「手前のお祈りの値打がどれだけあるだろうと思ってるんだい? 手前のお祈りに手前てめえのつけてる値段を言ってみろ!」
欽蔵 畜生、このおれだつて、何時いつまでも、ぢつとしちやゐねえぞ。防護団の連中に欠員が出来たら、何時でも出掛けてくから、手前てめえさう伝へてくれ。
手前てめえのような能なしを飼っておくより、猫の子を飼っておく方が、はるかにましだ。」とか、「さっさと出て行ってくれ、そうすれば己も晴々せいせいする。」
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
“馬鹿野郎ッ、なんにも知らねえで呑気のんきそうに、手前てめえ達はまごまごしていると、みんな亡ぼされてしまうんだぞ”
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
おしゃべり! ぷう! ソヴェト権力じゃ女が男と同等だそうだから、手前てめえは手前ですきな、代議員にでもなりくされ! 掟と亭主は女をしばらねえんだ。
ピムキン、でかした! (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「何んだ手前てめえたちは、戸を開けっぱなしにしくさって風が吹き込むでねえか。這入るのなら早く這入ってう」
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「おれは、ね」と、分らせるやうに念を押して、「手前てめえのゐるやうな家にやア父でもない! 所天をつとでもない!」
「覚えていやがれ、そんな事をすりゃあ手前てめえんとこの屋根にペンペングサを生やしてやるゾ」と勇み肌の江戸ッ子はよく文身体いれずみからだの尻を捲って啖呵を切ったもんだけれど
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
こいつをいま「市民のことば」に翻訳してみると、A「やい! 手前てめえはにっぽんだろう? 白状しろ!」であり、Bは「日本人だがどうした。大きにお世話だ!」となる。
「むゝ。喜路太夫は手前てめえか。怪しからねえ野郎だ。ひとを乞食あつかいにしやあがって……。」
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「手懸りがあったとおれの方へらせておきながら、手前てめえがそれを知らねえたあ何のこッた」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
手前てめえ何だってそんなところにうろうろしているんだ。よる夜中よなか人を叩き起しやがって」
乞食 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
今日彼時あれからったら親方がいやな顔をしてこの多忙いそがしい中を何で遅く来ると小言こごとを言ったから、実はこれこれだって木戸の一件を話すと、そんな事は手前てめえの勝手だって言やアがる
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
云やあがる、手前てめえっち馬子や駕舁夫かごかきと違って、お武家には格別心得のあるものだ。奥様を大事になさるにも何か深い訳があるに相違ねえ、つまらねえ蔭口なんぞ云やがると承知しねえぞ
おもかげ抄 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかも手前てめえは俺が甲州へ発った留守中、端席の真打なんぞ勤めて失敗しくじりやがった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
『よしてくれ、よしてくれ古狸、手前てめえの糸の話ならおれはみんな知っている!』
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
「それじゃ手前てめえはなんだ? ビリから五番だぞ。おれより四番上なばかりだ」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
手前てめえ、トランクを見つけやがったな、もっとも中味はお生憎あいにくさまだろうがね」
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
ハハハ……、馬鹿野郎! 手前てめえはそれでも探偵のつもりか。ここは手前のかたきうちだということを知らねえのか。ハハ……。ソラ、開けてやるから這入って来い。そして、このテーブルの上の品物を
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
根吉 何をいやがる、手前てめえが、あれだあれだといったんじゃねえか。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
『やい、この馬鹿野郎! おれが声をからして、よけろっ、阿呆、右へよけろって、あんなに呶鳴ったでねえか! 手前てめえ、酔っぱらってやがるのか?』と威猛高いたけだかに罵る先方の馭者の喚き声を聞いて
手前てめえのことばし考へて、ひとのことはどうするつもりなんだ。」
生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
五月蠅うるせエや、何ンだ、言う事ア夫れッ切りか、下ら無エ同じ事をツベコベツベコベ、ぬかしやがって耳が草臥くたびれらア、コウ手前てめえ達ア、此山に居ながら此山の讒訴ざんそをしやがって夫れで済むか、山にもナ
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
「何だ手前てめえおつかあは毎晩四の橋へ密売ひつぱりに出るくせしやがつて……」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
『馬鹿野郎ッ! 何を手前てめえ達ァってるんだッ』
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
「先へ出た? 手前てめえを置き去りにしてか」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ばかア手前てめえに用はねい……」
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
手前てめえ何が出来る。」
イワンの馬鹿 (新字新仮名) / レオ・トルストイ(著)
多「フウン、牢へくのを抱いてくというのか、手前てめえこれで黙ってけえれば、旦那が金を下さるから黙ってけえった方がよかんべえぜ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「大層な意気込みだね、手前てめえの顔を見ていると、——一向大変栄えもしないが、一体どんなドンガラガンを持って来やがったんだ」
「馬鹿だな手前てめえは……イクラ云って聞かせたってわからねえ。台湾へ渡った時にヤットわかったって安心してたじゃねえか」
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ざまあ! 女郎手前てめえに嫌われてさいわいだ。好かれてたまるかい。」と笹を持ったのが、ぐいとそのさおを小脇に引くと、やあ、斜に構えて前に廻った。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そいつは面白かろう、手前てめえを相手に腕くらべも大人げねえ話だが、甚内様へ奉納というのは、いいところへ気がついた」
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「いやア、これア俺が悪かった。犬に食われろなんて言われねえうちに……ヤイ! お絃、そういう手前てめえこそ、見物して笑ってるじゃアねえか」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
へん、このごつぽう人めら、手前てめえたちを怖はがるやうな、よいよいだとでも思やがつたか。いんにやさ。唯の胡麻の蠅だと思ふと、相手が違ふぞ。
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「こらッ、竹の野郎! もう誰がなんといっても、おれがゆるしちゃおかないぞ。手前てめえの生命は、おれがもらった!」
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)