悪戯わるさ)” の例文
旧字:惡戲
「文公、六助、久太——また悪戯わるさか。いくら貰ったか知らないが、止せ止せ、そいつは人殺しの片棒だ。うかつに担ぐと命がねえぞ」
が、何者の悪戯わるさかサッパリ判りません。ただ「葬式とむらい機関車」D50・444号は、まるで彼岸会ひがんえの坊主みたいに忙しかったんです。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
この暴風雨あらしに乗じて、何物か悪戯わるさした者があるらしい。最難工事としていた岩木川の上流の石垣がくずれ、続いて山崩れを招いていた。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これ、なんといふ悪戯わるさをしなさるだ!」と、笑ひながら悪魔が叫んだ。「さあ、もう沢山です、ふざけるのはいい加減になさいよ!」
おのれ小娘、覚悟をしろ。こんな悪戯わるさをして俺の大切な役目を破ったからには生かしておく事は出来ないぞ。どうするか見ておれ」
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
なんでもお若いお武家とかの袂へ悪戯わるさをするところを感づかれて、すんでのことでつかまろうとしたのを、まあやつにとっちゃあこの人混みを
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一体どこでこんな悪戯わるさをされたのかと思って、なおも両手でもって縫いつけられた糸目を探してみた。そうしているうちに
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
子供のあそびではあるまいし、悪戯わるさもいゝかげんにするがいゝ、といふので、帆まへ船に向つて、口々にののしり出しました。
海坊主の話 (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
「なんといふことぢやらう、まあ、みつともない、悪戯わるさもいゝ加減にしてもらはんと、みんなが弱つてしまふに…………」
父の帰宅 (新字旧仮名) / 小寺菊子(著)
「わかってる」彼は頭がちょっとふらふらするのを感じた、「それに、子供どうしの悪戯わるさなんて珍らしいことじゃないよ」
「マクシム、お前は泥棒の悪戯わるさには入るな! 俺は考えるんだが、お前にはほかの道がある。お前は精神的な人間だ」
この一団の符号が、この真裏に当る、防堤の上に記されてあったのですが、一見したところでは、なんのことはない子供の悪戯わるさとしか見えないでしょう。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
また足らなくなったらいつでもいってよこすがいいから……おれのほうの仕事はどうもおもしろくなくなっておった。正井のやつ何か容易ならぬ悪戯わるさ
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
黄成鎬 へへへへ、なに、ちょいと悪戯わるさをしておりましたんで。お手数をかけまして、なんとも早や——。
お庄は時々疲れた手を休めて、台所の方で悪戯わるさをしながら、こっちへ手招ぎしている繁三の方を見ていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お源もその例にもれず行きあたりばったりにちょっと悪戯わるさをしたんですが、運悪くその相手が桜場清六。
顎十郎捕物帳:23 猫眼の男 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そんな悪戯わるさをしては眼を潰すかも知れないんだからね。若しも今云つた事を守らないやうだつたら、もうお話しはさようならだ。私はお前達のお相手は御免蒙るよ。
しろ。これぁどうも変なこった。己にはあの声はだれだかわからねえ。だが、あれぁだれかが悪戯わるさをしてるんだ、——だれか正体のある人間がだ、それにゃ違えねえ。
『何したんだ、どういふもんだ——めた(幾度も)悪戯わるさしちや困るぢやないかい。』といふ細君の声を聞いて、音作は暫時しばらく耳を澄まして居たが、やがて思ひついたやうに
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
森の木をったり、くさを刈ったりしたので、隠れ家を奪われたと見えて、幾匹かの狸が伝法院の院代をしている人の家の縁の下に隠れて、そろそろ持前もちまえ悪戯わるさを始めました。
寺内の奇人団 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
ちょうど愛におぼれる母親が悪戯わるさをする子供を擁して、あわれな子守こもりをしかるように。私は私の心のその弱みを知っている。それを知っているだけ私は善鸞を許し難いのだ。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
そりゃ両手を後手に縛ってね、僕らにも自分らにも悪戯わるさが出来んようにして、馬鹿者どもを台所へ引っぱり込んだ。奴らが憎くもあれば、顔を見るのが気恥かしくもあるってわけさ。
(新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
仲直りをして、ちょいと悪党な処を見せて、そこらで思い着かれようという際限のない大慾張おおよくばり、源次は源次だけのかんがえで、既に今夜印半纏しるしばんてんで、いなって反身そりみの始末であったが、悪戯わるさ
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お前さんがわしにまだいろんな悪戯わるさをすることは、よくわかってる。だけどわしはお前さんを捨てることができない。お前さんはわしの腹の役にたつ、わしを笑わしてくれるから。」
く来たな、此の寒いのにかねえでもいゝから泊ってきなよ、此間こねえだはお作が悪戯わるさアして気の毒な事をした、うちなア阿魔を小言いって打擲ぶちたてえたが、仕様のねえ奴で、堪忍してくんなよ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
大供おおども悪戯わるさをやり出したわい。さあせわしいぞ忙しいぞ!」徳善院は退出した。
五右衛門と新左 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
其児が人一倍悪戯わるさけて、横着で、時にはその生先おひさきが危まれる様な事まで為出しでかす為には違ひないが、一つは渠の性質に、其麽そんな事をして或る感情の満足を求めると言つた様なところがあるのと、又
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
うななど悪戯わるさばりさな、かさぶっこわしたり。」
風の又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いちの日、諸郷の小商人こあきんどやら伯楽ばくろうやら雑多な人々の集まる市で、悪戯わるさの行われるぐらいは、まだまだ近頃の世相のうちでは、それが白昼
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それはさぞ御心配、多分お濠に棲んでいる獺の悪戯わるさであろう、拙僧わしがちょいと退治して進ぜる。娘御には何んにも仰しゃらぬが宜しい」
悪戯わるさじゃあるめえ。」遠いところを見るような眼で、独言のように藤吉は続ける。
とうとうきびしいおきてを犯して船乗りの命の綱の灯台へ、ガスの深い夜ごとに、看守の居眠り時を利用して沙汰さた限りの悪戯わるさをしかける……けれども、ある夜とうとう看守にみつけられた彼女は
灯台鬼 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
いつも酔っぱらってばかりいるのか? どうして召使たちはあんなにだらしなく、どいつもこいつも寝てばかりいて起きている間はいつも悪戯わるさばかりしているのか? といったようなことだ。
自分ですらそっと手もつけないで済ませたい血なまぐさい身の上を……自分は老人ではない。葉子は田川夫人が意地いじにかかってこんな悪戯わるさをするのだと思うと激しい敵意から口びるをかんだ。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
この宿命的な妖神まがつみ悪戯わるさに対して、町人達——わけても美しい娘や女房を持った人々は、本当にふるえ上がってしまいました。
「ばかな、そんな悪戯わるさかよ。たしかに道誉とて、き心もないではないが、元々は純な同情だった。けれど訪ねて、泣かれたのがいけなかった」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしどもは決して貸家にはいり込んで他人様ひとさまの荷を知らん顔して着服するような者じゃあごわせん。ねえ、あなたはここで鎧櫃を受け取ったそうですが、ちと悪戯わるさが過ぎませんか。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
船をさえ見ればそうした悪戯わるさをしおるんだから、海坊主ぼうずを見るようなやつです。そういうと頭のつるりとした水母くらげじみた入道らしいが、実際は元気のいい意気な若い医者でね。おもしろいやつだ。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
なんともはやお話にもならぬ悪戯わるさがおつぱじまる始末なのぢや。
「——その上にもです。右馬介から聞けば、私のつまらぬ悪戯わるさから、御当家へまで、何か、探題殿よりむずかしい御尋問の沙汰がありましたとか」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし最後の時は来ました。ある夏の夜、岩吉の執拗な悪戯わるさは、到頭とうとう、山の処女の恐怖を、腹の底から揺り覚しました。
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
何ごとであろう? また、黒犬めが悪戯わるさでもしおったのではないか——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
蹴飛ばして呉れるから! なんといふ悪戯わるさをしくさるのぢや!
「……先日は乾分こぶんどもの悪戯わるさ。なんとも、お見それ申しやして」と、いとも神妙に、三拝九拝して、一こん差し上げたいという申しいでなのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに、背恰好、左足首に骨まで通った切瘡きりきず——これは若い頃の悪戯わるさの祟りで、お守りの私がうんと叱られました
「爺つぁん、あんまりあくの強い悪戯わるさはしないがいいぜ」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「おらあ何時でも思ひきり騒いだり悪戯わるさの出来なかつた時にやあ、なんだか胸がつかへたやうで気持が悪いんだよ。まるで、帽子か煙管パイプでもおつことしたやうな、いやに間の抜けた気持なのさ。つまり哥薩克でねえやうな気がするつて訳さ。」
凛々りりしい青年なので、何かのこれは間違いにちがいないと、先にどなった少年の悪戯わるさをむしろ憎んだほどであった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
悪戯わるさをしたのはねずみですよ、親分さん、近頃の鼠はそりゃタチが悪いから、壁でも板戸でもすぐ喰い破りますよ」
「狐か、悪戯わるさをしやあがる。」