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寛
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ひろ
ふりがな文庫
“
寛
(
ひろ
)” の例文
自分ひとりは極めて
寛
(
ひろ
)
い安易さを感じるのを不思議におもひながら、机の前に座つて子供の相手をしながら、読書を初めた。
惑ひ
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
「何分、わたくしは、御当地に始めての旅の者、
殊更
(
ことさら
)
、取り急ぎます日暮れ時、何事もお心
寛
(
ひろ
)
うお許し下されますよう——」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
この親にして、あのお子があったか——初めて大きな
実訓
(
じっくん
)
をうけたのだった。
剛愎
(
ごうふく
)
、そんなことばではいいきれない頼房の胸の
寛
(
ひろ
)
さであった。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寛
(
ひろ
)
いふところに、ありあまるほどの情意を包みながら、言説以外にはそれも打ち出さずに、終生つつましく暮らして行かれたようなその人柄は
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
良寛は馬鹿者のやうに見えてゐて、なかなか心が
寛
(
ひろ
)
い。少しもこせつかないで、運命のままに身をまかせてゐる。いつどんなところででも、
居睡
(
ゐねむり
)
を
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
▼ もっと見る
母親は、
寛
(
ひろ
)
い胸から乳房を掴み出し、柔らかいぽとぽと音を立てて陶物に
滴
(
た
)
れる乳を見ながら、
口惜
(
くや
)
しそうに云った。
童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
一つは枯れて土となり、一つは若葉
萌
(
も
)
え花咲きて、
百年
(
ももとせ
)
たたぬ間に野は菫の野となりぬ。この
比喩
(
ひゆ
)
を教えて国民の心の
寛
(
ひろ
)
からんことを祈りし
聖者
(
ひじり
)
おわしける。
詩想
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
黙って
母家
(
おもや
)
の方を伏し拝むと、心静かに取上げたのは言うまでもなく短刀。
蝋塗
(
ろうぬり
)
の
鞘
(
さや
)
を払って、懐紙をキリキリと巻くと、紋服の肌を
寛
(
ひろ
)
げて、左脇腹へ——。
銭形平次捕物控:035 傀儡名臣
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
気のめぐりの
寛
(
ひろ
)
い、しかもひとつ事をこつこつと丹念にやるという気性で、家中の
嘱望
(
しょくぼう
)
を集めていたから、この高松移居にはかなりはげしい反対運動がおこった。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
内は
寛
(
ひろ
)
くて、座敷のようなものが三、四室ある。壁に沿うて
床
(
とこ
)
を設け、その床は綿に包まれている。
中国怪奇小説集:07 白猿伝・其他(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
(ああ、ああ。)と
濁
(
にご
)
った声を出して
白痴
(
ばか
)
が
件
(
くだん
)
のひょろりとした手を
差向
(
さしむ
)
けたので、
婦人
(
おんな
)
は解いたのを渡してやると、
風呂敷
(
ふろしき
)
を
寛
(
ひろ
)
げたような、
他愛
(
たわい
)
のない、力のない
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ビュロオ伯は常の服とおぼしき黒の
上衣
(
うわぎ
)
のいと
寛
(
ひろ
)
きに
着更
(
きが
)
へて、伯爵夫人とともにここにをり、かねて相識れる中なれば、大隊長と心よげに握手し、われをも引合はさせて
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
遠く見れば、浅間はただなだらかで端正に裾をひいているが、近づいて見ると、緑色の上着の胸を
寛
(
ひろ
)
げて、自己の履歴を語るように、焼け爛れた赤錆色の四角な肌を露出している。
浅間山麓
(新字新仮名)
/
若杉鳥子
(著)
初夏の明るい
埃
(
ほこり
)
のたつ日であった。章一は
平生
(
いつも
)
のように
額
(
ひたい
)
の
寛
(
ひろ
)
い白い顔を左の方に
傾
(
かし
)
げるようにして
坂路
(
さかみち
)
をおりて往った。足にはゴム
草履
(
ぞうり
)
を
穿
(
は
)
いていた。坂の下には省線の電車があった。
一握の髪の毛
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
地に穴し
瀦水
(
ちょすい
)
してこれを蓄え、いまだ日を
竟
(
お
)
えざるにその地横に
潰
(
つい
)
え水勢
洶々
(
きょうきょう
)
たり、民懼れ鉄を以てこれに投じはじめて
息
(
や
)
む、今周廻
寛
(
ひろ
)
さ
畝
(
ほ
)
ばかりなるべし、水
清澈
(
せいてつ
)
にして涸れず〉とあれば
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
今、天皇は、そのつばきの葉と同じように、大きなお
寛
(
ひろ
)
い、そして、その花と同じように美しくおやさしいお心で、
采女
(
うねめ
)
をお許しくだすった。さあ、この
貴
(
とうと
)
い天皇にお酒をおつぎ申しあげよ。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
家の
生活
(
くらし
)
も不自由はせず、父は学究でござりまして、心も
寛
(
ひろ
)
く親切でもあり、そうして私といたしましても、自分で自分を褒めますのは、ちとおかしくはござりますが、まず悪人ではござりませぬ。
血ぬられた懐刀
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
人間の
性
(
さが
)
を、
寛
(
ひろ
)
く
観
(
み
)
て、その
瑕瑾
(
かきん
)
をとがめず、たいがいな事は「ゆるす」ということも、老公の上に見られる最も
著
(
いちじる
)
しい性格のひとつであった。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
(あゝ、あゝ、)と
濁
(
にご
)
つた
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して
白痴
(
あはう
)
が
件
(
くだん
)
のひよろりとした
手
(
て
)
を
差向
(
さしむ
)
けたので、
婦人
(
をんな
)
は
解
(
と
)
いたのを
渡
(
わた
)
して
遣
(
や
)
ると、
風呂敷
(
ふろしき
)
を
寛
(
ひろ
)
げたやうな、
他愛
(
たあい
)
のない、
力
(
ちから
)
のない
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
生得
(
しょうとく
)
と申しましょうかなかなかそれが身に付きません、芸ごとは心をやしない気を
寛
(
ひろ
)
くすると聞きましたので、柄にも合わず勘も悪くて、半年してもまだ一つの唄があがらないありさまですが
主計は忙しい
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
しかし後醍醐はさすが、帝王の
寛
(
ひろ
)
い御分別ともいうべきか。正成を
観
(
み
)
るにも、彼らの冷蔑や気色ばみとは、はるかにお心の在り方がちがっている。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
棚の上からまた一つの赤い色の
罎
(
びん
)
を出して、口を取ってまた呪文を唱えますとね、黒い煙が立登って、むらむらとそれが、あの土間の隅へ
寛
(
ひろ
)
がります、とその中へ、おどろのような髪を乱して
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一朶
(
いちだ
)
の白雲が漂うかのような法然の眉、のどかな
陽溜
(
ひだま
)
りを抱いている
山陰
(
やまかげ
)
のように、
寛
(
ひろ
)
くて風のないそのふところ。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
戦陣の寸暇、
甲冑
(
かっちゅう
)
を解いて、身をくつろぐと共に、心を
寛
(
ひろ
)
くし、和楽のうちに、心身を養うことであった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分の
亡父
(
ちち
)
からうけついだ戦いは、
皇天皇土
(
こうてんこうど
)
の
御為
(
おんため
)
であって、それ以外の私心はない。——そう徹していたところに、自然と、あの
寛
(
ひろ
)
やかな大愛が持てたのだと、わしは思う
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
風采いかにも洋々と
寛
(
ひろ
)
く、顔にも
陸棲人士
(
りくせいじんし
)
のごとく
焦
(
いら
)
ついた神経などなく、各〻、
鯱
(
しゃち
)
か
鯨
(
くじら
)
の子みたいに、頗る
縹渺
(
ひょうびょう
)
たる風格のなかに、また一種の楽天的な気概をそなえている。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
茫漠
(
ぼうばく
)
としているところですな。たとえば
春霞
(
はるがすみ
)
のたなびいている天地のようなお
寛
(
ひろ
)
さ。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
稀には殿御自身、忙を離れて、気をお養いあそばさなければいけません。家中一般も、ほっと息をつき、領民が仰げば、何かしら
安泰
(
あんたい
)
を感じて、国中が
寛
(
ひろ
)
やかな心になりましょう
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「海のごとく
寛
(
ひろ
)
く、空のごとく明るく」
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
春の海のようにそれは
寛
(
ひろ
)
い。
日本名婦伝:太閤夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寛
常用漢字
中学
部首:⼧
13画
“寛”を含む語句
寛衣
寛々
寛容
寛濶
寛大
寛裕
御寛
寛恕
寛文
菊池寛
打寛
寛達
寛永
寛政
俊寛
良寛
寛仮
璃寛
寛仁大度
俊寛僧都
...