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ぬぼく
ふりがな文庫
“
奴僕
(
ぬぼく
)” の例文
疑いも無く昇は、課長の信用、三文不通の信用、主人が
奴僕
(
ぬぼく
)
に措く如き信用を得ていると云ッて、それを鼻に掛けているに相違ない。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
貴様がやる気ならおれもどんな力でも貸す、貴様の
奴僕
(
ぬぼく
)
になってもいい、ほんとに貴様がやるという誓いを天地に立ててくれるならば——
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
少女は今までの衣裳を解き捨てて、
賤
(
いや
)
しい
奴僕
(
ぬぼく
)
の服を着け、犬の導くままに山を登り、谷に下って
石室
(
いしむろ
)
のなかにとどまった。
中国怪奇小説集:03 捜神記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
全く、一の神秘な人格とさえ成ってしまう。その時、人間はむしろ却って被駆使者となり、
奴僕
(
ぬぼく
)
となり、これ
命
(
めい
)
これに従わねばならなくなる。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
脳髄はこうして宇宙間最大最高級の権威を僭称しつつ、人体の最高所に鎮座して、全身の各器官を
奴僕
(
ぬぼく
)
の如く駆使している。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
瑠璃光は、いやしい
奴僕
(
ぬぼく
)
の風俗をした、
二十
(
はたち
)
あまりの薄髯のある男の顔を、
胡散
(
うさん
)
らしく見守って居たが、何心なく受け取った文の面に眼を落すと
二人の稚児
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
この土地で
奴僕
(
ぬぼく
)
の締める
浅葱
(
あさぎ
)
の前掛を締めている。男は響の
好
(
よ
)
い、節奏のはっきりしたデネマルク語で、もし靴が一足間違ってはいないかと問うた。
冬の王
(新字新仮名)
/
ハンス・ランド
(著)
「
主
(
しゆ
)
に於いて眠り給へる帝室評議員アントン・フオン・ヰツク殿の為めに祈祷せしめ給へ。主よ。御身の敬虔なる
奴僕
(
ぬぼく
)
アントニウスに慈愛を垂れ給へ。」
祭日
(新字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
入用
(
いらざ
)
る
雑用
(
ぞうよう
)
を省くと唱え、八蔵といえる悪僕一人を留め置きて、その余の
奴僕
(
ぬぼく
)
は
尽
(
ことごと
)
く暇を取らせ、素性も知れざる一人の老婆を、
飯炊
(
めしたき
)
として雇い入れつ。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
殊にその一人の若者は、彼を崇拝する若者たちの中でも、ほとんど
奴僕
(
ぬぼく
)
のごとく彼に仕えるために、
反
(
かえ
)
って彼の反感を買った事がある男に違いなかった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これは、その家の主人幼稚なるゆえ、
奴僕
(
ぬぼく
)
が塩、
味噌
(
みそ
)
、薪炭等を盗み取るに、下女、
婢
(
はしため
)
ども妨げになりしゆえ、早く起きざらんため、かくのごとくいいしとぞ。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
「水晶山は俺の領地だ。人足どもは俺の
奴僕
(
ぬぼく
)
だ。俺は俺の武力をもってそれらのものを手に入れたのだ」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
万事万端妻の
頤使
(
いし
)
に甘んじて、
奴僕
(
ぬぼく
)
のごとき
忍辱
(
にんにく
)
を重ねていたからであったが、もっと手っ取り早く言おうならば、ドン・アルヴァロ・メッサリイノ伯爵といえば
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
わが断腸亭
奴僕
(
ぬぼく
)
次第に去り園丁来る事また稀なれば、庭樹
徒
(
いたずら
)
に繁茂して軒を蔽い苔は
階
(
きざはし
)
を埋め草は
墻
(
かき
)
を没す。年々
鳥雀
(
ちょうじゃく
)
昆虫の多くなり行くこと気味わるきばかりなり。
夕立
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
科学は全く受動的に非科学の
奴僕
(
ぬぼく
)
となっているためにその能力を発揮することができず、そのために無能視されてしかられてばかりいるのではないかという気もする。
自由画稿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
正月七日の夜、某
旧識
(
きゅうしき
)
の人の
奴僕
(
ぬぼく
)
一人、
忽
(
たちまち
)
に所在を失ひ
候
(
そうろう
)
。二月二日には、
御直参
(
ごじきさん
)
の人にて文筆
共
(
とも
)
当時の英材、某多年の旧識、
是
(
これ
)
も所在を失し、二十八日に帰られ候。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
此
夫婦
(
ふうふ
)
心
(
こゝろ
)
正直
(
しやうぢき
)
にして
親
(
おや
)
にも
孝心
(
かうしん
)
なる者ゆゑ、人これを
憐
(
あはれ
)
みまづしばらく
我
(
わ
)
が家に
居
(
を
)
るべしなど
奨
(
すゝむ
)
る
富農
(
ふのう
)
もありけるが、われ/\は
奴僕
(
ぬぼく
)
の
業
(
わざ
)
をなしても
恩
(
おん
)
に
報
(
むく
)
ゆべきが
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
奴僕
(
ぬぼく
)
の
中
(
うち
)
の心のあらい者は、主人を神とも思っているから、
然様
(
さよう
)
でござる、それは一段と味も勝り申そうと云い、少し物わかりのした者は、それは
酷
(
むご
)
いとは思ったが
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それが甲斐の前に立つと、まるで
奴僕
(
ぬぼく
)
がそのあるじに対するように、
逞
(
たくま
)
しい肩腰をちぢめ、この命ひとつただいまにでも差上げます、というような眼で見るのであった。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
汝は
適
(
ふさ
)
はしき道と
方法
(
てだて
)
とを盡し、我を
奴僕
(
ぬぼく
)
の
役
(
つとめ
)
より引きてしかして自由に就かしめぬ 八五—八七
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
旧幕時代の分家というものは、親戚であっても、だいたい、家臣同様の格に置かれたものだが、和泉藩に於ける分家とは、あたかも、主人にたいする
奴僕
(
ぬぼく
)
の関係にひとしかった。
金狼
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
容易に
剿滅
(
そうめつ
)
したわけではなく、現に二年前の万治元年には大村領の邪宗徒六百三人を死罪にし、幕府は切支丹禁制の令を厳にし、
奴僕
(
ぬぼく
)
を召抱えるのに、
檀那寺
(
だんなでら
)
の証文を必要としました。
銭形平次捕物控:135 火の呪い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
英語に直訳すれば、まるで何だかよそよそしい、卑屈な響になって仕舞うが、日本の女性が良人を、「宅の主人」と呼ぶのは、決して、
奴僕
(
ぬぼく
)
が雇主を指して云うような感情を持ってはいない。
男女交際より家庭生活へ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ことに、相手が対等の士人でなくして、自分の家に養われた
奴僕
(
ぬぼく
)
であることを知ると、少年の心は、無念の
憤
(
いきどお
)
りに燃えた。彼は即座に復讐の一義を、肝深く銘じた。彼は、馳せて
柳生
(
やぎゅう
)
の道場に入った。
恩讐の彼方に
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「神の
奴僕
(
ぬぼく
)
の一人でござります。」
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
母屋の中心に、
持仏堂
(
じぶつどう
)
もあれば、侍部屋もある。寝所、
釜殿
(
かまどの
)
、
女童部屋
(
めわらべべや
)
、
奴僕
(
ぬぼく
)
の小屋、殊に目立つのは、
厩
(
うまや
)
のあることである。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
此
夫婦
(
ふうふ
)
心
(
こゝろ
)
正直
(
しやうぢき
)
にして
親
(
おや
)
にも
孝心
(
かうしん
)
なる者ゆゑ、人これを
憐
(
あはれ
)
みまづしばらく
我
(
わ
)
が家に
居
(
を
)
るべしなど
奨
(
すゝむ
)
る
富農
(
ふのう
)
もありけるが、われ/\は
奴僕
(
ぬぼく
)
の
業
(
わざ
)
をなしても
恩
(
おん
)
に
報
(
むく
)
ゆべきが
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
人間の脳髄と称する怪物は、身体の中でも一番高い処に鎮座して、人間全身の各器官を
奴僕
(
ぬぼく
)
の如く追い使いつつ、最上等の血液と、最高等の営養分をフンダンに搾取している。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
親のために、子のために、夫のために、知己親類のために、
奴僕
(
ぬぼく
)
のために。
愛と婚姻
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「なにをおっしゃいます。太師に捨てられて、あんな乱暴な
奴僕
(
ぬぼく
)
の妻になれというのですか。
嫌
(
いや
)
なことです。死んだって、そんな
辱
(
はずかし
)
めは受けません」
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女性は後閣に住んでいる彼の
秘妾
(
ひしょう
)
であり、男はかれの病室に仕えていた
慶童子
(
けいどうじ
)
とよぶ小さい
奴僕
(
ぬぼく
)
だった。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
木賃宿の朝夕、端公は
囚人
(
めしゅうど
)
を、
奴僕
(
ぬぼく
)
のようにこきつかう。これらはやさしいことである。四、五日も旅するうちには、すでに盧俊儀その人の面影はどこにもない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は、義経に対してだけは、敬愛の心をもって、
奴僕
(
ぬぼく
)
の如く、身を
粉
(
こ
)
にしても仕える気であった。その誠意は、義経の多感な胸には、ありのまま
映
(
うつ
)
らずにいなかった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
果たしてその時刻に、主の
叔母聟
(
おばむこ
)
なる者が、肉と酒とを
土産
(
みやげ
)
にもたらし、主と飲むうち、夜に入って、なお酒肴を求めるため、
奴僕
(
ぬぼく
)
に、鶏を射てころせと、命じました。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
姉妹
(
ふたり
)
はまだ吉次からほんとの話しは打明けられていなかった。その頃は盛んに都の女や
童
(
わらべ
)
が、奥州へ買われていったので、吉次がどこからか買って来た
奴僕
(
ぬぼく
)
と思っているふうだった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すると、邸のうちには、門番もいなければ、
奴僕
(
ぬぼく
)
もいないらしい。程なく答えがあって、奥のほうから、燭の光がうごいてきた。金褘の妻が自身そこを開けに近づいてくるようだった。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
良持が、遺言に、所領の土や馬などと一しょに、奴婢までを、遺産にかぞえているのは、おかしく聞えるが、当時の世代では、まちがいなく、奴婢
奴僕
(
ぬぼく
)
も、個人所有の、重要な財産のひとつであった。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大学を卒業したばかりの兄の
瑾
(
きん
)
ひとりを杖とも柱とも頼み、家財道具と継母とを車に乗せて、孔明の弟の
均
(
きん
)
や妹たちを励ましながら——わずかな
奴僕
(
ぬぼく
)
らに守られつつ、それらの飢民の群れにまじって
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
役人や名主は、あたかも英雄に仕える
奴僕
(
ぬぼく
)
のごとく、彼を
敬
(
うやま
)
って
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
奴僕
(
ぬぼく
)
の中に、
宦官
(
かんがん
)
たちのまわし者が住みこんでいる。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
番犬視されている
公
(
おおやけ
)
な
奴僕
(
ぬぼく
)
にすぎないのだ。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“奴僕”の意味
《名詞》
男性の召使い。下僕。下男。
(出典:Wiktionary)
奴
常用漢字
中学
部首:⼥
5画
僕
常用漢字
中学
部首:⼈
14画
“奴僕”で始まる語句
奴僕宮