せい)” の例文
旧字:
やがて、あちらのやまを、海岸かいがんほうへまわるとみえて、一せい汽笛きてきが、たかそらへひびくと、くるまおとがしだいにかすかにえていきます。
とうげの茶屋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、いうや否、高手小手に縛ってしまったので、さすがの孟獲も、うぬッと、一せい吠えたのみで、どうすることもできなかった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「このみせ下物かぶつ、一は漢書かんしよ、二は双柑さうかん、三は黄鳥くわうてうせい」といふ洒落た文句で、よしんばつまさかな一つ無かつたにしろ、酒はうまく飲ませたに相違ない。
こはき獲物よと、急ぎ走りよって足に押へ、すでに喰はんとなせしほどに。忽ちうしろに声ありて、「憎き野良犬、其処そこ動きそ」ト、大喝だいかつせいえかかるに。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
と、ゆっくり幾呼吸、ジリジリ逼る賊の群を一間あまり引きつけて置いて、「カッ」と一せい喉的破裂こうてきはれつ、もうその時には彼の体は敵勢の中へ飛び込んでいた。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
聞くと等しくお政は手に持ッていた光沢布巾つやぶきんを宙にるして、「オヤ」と一せい叫んで身を反らしたまま一句もでばこそ、暫らくはただ茫然ぼうぜんとして文三のかお目守みつめていたが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
左りの手にてかこう筈なし余は最早もはや我が心をおさゆあたわず、我が言葉をも吐くあたわず、身体に満々みち/\たる驚きに、余は其外の事を思う能わず、あたかも物に襲われし人の如く一せい高く叫びしまゝ
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
蔚山城うるさんじょうのうまやの中でも、あいかわらず、清兵衛は愛馬朝月といっしょに、わらの中にもぐってねむっていると、どうしたことか、にわかに朝月が一せいいなないて、そこにおいてあったくらをくわえた。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
馬殿、鼻をブルンブルンいわせながら、一せい風にいなないてヒーン。
と、けよりざま、雷喝らいかつせい、闇からうなりをよんだ一じょう鉄杖てつじょうが、ブーンと釣瓶もろとも、影武者のひとりをただ一げきにはね飛ばした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「面!」と一せい藤作が、相手の懐中ふところへ飛び込んだとたん
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その後ろ肩を臨んで、小豆長光のひかりが一閃を描いたが、ほとんど同じ一瞬に、放生月毛は一せいいなないて竿立ちに脚を上げてしまった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生涯にわたる傷魂しょうこんの深手——懺愧ざんき痛涙つうるい滅失めっしつのうめきを、このときの一せいにふり絞って、かれは、腰をぬかしてしまった。
などというのは特有な日本的閨房語けいぼうごで、極まるとき、一きょうまた一きょう、叫ぶというのがあちらの男女の感受性らしい。「阿呀ああせい身子已是酥麻了みはしびれわたる
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
序破急じょはきゅう甲音かんおんせい揺韻よういんをゆるくひいて初甲しょかんにかえる、勘助流かんすけりゅう陣貝吹じんがいふき、「ヘンアリニツクベシ」のあいずである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のどに矢を立てた白馬は、棹立さおだちに躍り上がって、一せいいななくと、どうと横ざまに仆れた。芙蓉ふようの身も、劉備の体も、共に大地へほうり捨てられていた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
酒呑童子しゅてんどうじもかくやの形相ぎょうそうで、大きなくちびるへやい歯をかませた呂宋兵衛は、いきなり民部の利腕ききうでをひとふりふって、やッと一せいだんの上から大地へ投げつけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いったと思うと、魯智深は後ろに廻していた縄目をばらッといて、禅杖へ手を伸ばすやいな、猛吼もうくせい、階を躍り上がって、のける鄧龍の真眉間まみけんを打ちくだいていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ惨たるかな」と、関羽は、敵のために涙を催し、長嘆ちょうたんせい、すべてを見遁みのがして通した。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と一せい敵陣へ向って、彼が呼ばわると、はるかに、月を望んで谷底から吼える虎のように
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
香炉こうろ薫々くんくんたる龍煙りゅうえんを吐き、この日長者が供えたお香料こうりょう銀子ぎんす、織物、その他の目録にまずうやうやしく敬礼きょうらいをほどこす。そこでがいせい、魯達が発心ほっしんによる出家得度とくどの願文を高々と読む。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)