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四囲
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あたり
ふりがな文庫
“
四囲
(
あたり
)” の例文
旧字:
四圍
博士の服装に比べて、廊下は清潔に掃き清められ、各室の扉に塗ってあるペンキの色も、
四囲
(
あたり
)
の壁の色も、たいへんに落つきがある。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と黒鳥の歌が松の木の間で聞こえるとともに馬どもはてんでんばらばらにどこかに行ってしまって、
四囲
(
あたり
)
は元の静けさにかえりました。
真夏の夢
(新字新仮名)
/
アウグスト・ストリンドベリ
(著)
中流より石級の方を望めば理髪所の
燈火
(
あかり
)
赤く
四囲
(
あたり
)
の
闇
(
やみ
)
を
隈
(
くま
)
どり、そが前を
少女
(
おとめ
)
の群れゆきつ返りつして
守唄
(
もりうた
)
の
節
(
ふし
)
合わするが聞こゆ。
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そういう私の顔をジッと見ていた大塚警部はチョット
四囲
(
あたり
)
を見まわすと、黄色い白眼をキラキラ光らせながら、一層顔を近付けた。
空を飛ぶパラソル
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
臀
(
しり
)
と
股
(
もも
)
と
膝頭
(
ひざがしら
)
が一時に飛び上がった。自分は
五位鷺
(
ごいさぎ
)
のように布団の上に立った。そうして、
四囲
(
あたり
)
を見廻した。そうして泣き出した。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
「もう沢山よ、そンなおせじは……お金の話しないって云ったでしょう?」わあっと
四囲
(
あたり
)
いちめん水っぽい秋の夜風が吹きまくるようで
晩菊
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
薔薇
(
ばら
)
にも
豌豆
(
えんどう
)
にも数限りもなく虫が涌く。地は限りなく草を
生
(
は
)
やす。
四囲
(
あたり
)
の自然に攻め立てられて、
万物
(
ばんぶつ
)
の
霊殿
(
れいどの
)
も小さくなって
了
(
しま
)
いそうだ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
三時を纔に過ぎたるほどの頃なれば、吾が家の門の戸引開くる音さへいと耳立ちて、近き家〻に憚りありとおもはるゝまで、
四囲
(
あたり
)
は物静かなり。
鼠頭魚釣り
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
それから、一寸聞きたいことがあるんだが、と赤い薄い
鬚
(
ひげ
)
を正方形だけはやしたその男が、
四囲
(
あたり
)
を見廻わした。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
四囲
(
あたり
)
の人々、皆驚き恐れ『人殺ぢや、人殺ぢや』などいひつつ逃れ去る。沙門等、長順、白萩のみのこる。
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
四囲
(
あたり
)
は真暗ですから、頭の上の硝子張(浴槽の底)を透して来る光だけが、ほのぼのと部屋を照らしていますその光りで見ると、その部屋にはたいして道具などもなくただ
足の裏
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
そこで墓番のヴァンサンは、銃を手にして、
四囲
(
あたり
)
に気をくばりながら
戸外
(
そと
)
へ出た。
墓
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
心が畑か、畑が心か、兎角に草が生え易い。油断をすれば畑は草だらけである。
吾儕
(
われら
)
の心も草だらけである。
四囲
(
あたり
)
の社会も草だらけである。吾儕は世界の草の種を除り尽すことは出来ぬ。
草とり
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
一日
(
ついたち
)
と十五日には職工の休み日なので
毎
(
いつ
)
も満員であつたがその三階まで充満した見物の
喝采
(
かつさい
)
が、背景の後ろにゐる彼の耳まで達する時、彼は思はず
微笑
(
ほゝゑ
)
んで
四囲
(
あたり
)
を見廻すのが常であつた。
手品師
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
静寂
(
しずか
)
な重苦しい陰欝なこの丘の
端
(
はず
)
れから狭いだらだら坂を下ると、カラリと
四囲
(
あたり
)
の空気は変ってせせこましい、軒の低い家ばかりの場末の町が帯のように繁華な下町の真中へと続いていた。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
藍草
(
あいくさ
)
の汁をしぼったように、水っぽい夕闇が
四囲
(
あたり
)
をこめてきた。
燭
(
しょく
)
の影が、深殿の奥から揺れてきた。法皇のおすがたらしい影が、側近の人々の黒い影にかこまれて、お
沓
(
くつ
)
へ
御足
(
みあし
)
をかけている。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
クツキリとした、輪廓の正しい、引緊つた顔を
真面
(
まとも
)
に西日が照す。
切
(
きれ
)
のよい眼を眩しさうにした。
紺飛白
(
こんがすり
)
の単衣に長過ぎる程の紫の袴——それが
一歩
(
ひとあし
)
毎に日に燃えて、静かな
四囲
(
あたり
)
の景色も活きる様だ。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
唯後
(
ただあと
)
に
遺
(
のこ
)
り候親達の
歎
(
なげき
)
を思ひ、又我身生れ
効
(
がひ
)
も無く此世の縁薄く、かやうに今在る形も
直
(
ぢき
)
に消えて、
此筆
(
このふで
)
、
此硯
(
このすずり
)
、此指環、
此燈
(
このあかり
)
も
此居宅
(
このすまひ
)
も、此夜も此夏も、此の蚊の声も、
四囲
(
あたり
)
の者は皆永く残り候に
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
やがて
四囲
(
あたり
)
の事情に反し仏像のみに積る埃のないことを見て
南風譜:――牧野信一へ――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
四囲
(
あたり
)
は再びひっそりとなった。小山は口笛を吹きながら描いている。自分は思った、むしろこの二人が意味ある画題ではないかと。
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
時間外という考えを少しも頭の中に入れていなかった彼女には、それがいかにも不思議であったくらい
四囲
(
あたり
)
は
寂寞
(
ひっそり
)
していた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「おお、——」と大隅学士も、夢から覚めた人のように
四囲
(
あたり
)
を振りかえった。しかしお美代の抱いて来た赤ちゃんの姿は、どこにも見えなかった。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
自家
(
うち
)
は正月元日でも、
四囲
(
あたり
)
が十二月一日なので、一向正月らしい気もちがせぬ。年賀に往く所もなく、来る者も無い。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
しかし……
四囲
(
あたり
)
はシンとしている。正木博士が引返して来るような音も聞えぬ。……運命を待つよりほかはない。その運命と闘う力をなくしたまま……。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
見るうちに太陽はかくれて、
白霧
(
はくむ
)
が
四囲
(
あたり
)
を取りまきました。いかにも気味がよくありません。
真夏の夢
(新字新仮名)
/
アウグスト・ストリンドベリ
(著)
無意味な視線で、落着きなく
四囲
(
あたり
)
を見廻わしてから、ドアーの方へ身体を向けてしまった。そして、ネクタイの結び目あたりを抑えた。——その船長は見ていられなかった。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
長い間、帽子の下で眼をとじていたせいか、起きあがった時は夕方のように
四囲
(
あたり
)
が薄暗いものに見えた。僕は
袂
(
たもと
)
の底から、くしゃくしゃになった
煙草
(
たばこ
)
を一本出して火を点じた。
魚の序文
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
日は全く暮れて
四囲
(
あたり
)
は真暗になったけれど、少しも気がつかず、ただ腕組して折り折り
嘆息
(
ためいき
)
を
洩
(
もら
)
すばかり、ひたすら物思に沈んでいたのである。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
云われて、村山巡査は、
四囲
(
あたり
)
に湯屋の夫婦やその他
役筋
(
やくすじ
)
でない人間のいることを知って苦笑しながら、その頁を開いたまま手帖を赤羽主任に手渡した。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼は
一瞬時
(
またたくま
)
斯く思うた。而して今にも泣き出しそうな
四囲
(
あたり
)
の中を、黙って急いだ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
いつだったかも、日日新聞から、議会と云うものを
観
(
み
)
せて貰った。入口では人の
懐
(
ふところ
)
へまで手を入れて調べる人がいたり、場内へ
這入
(
はい
)
ると、
四囲
(
あたり
)
の空気が臭くて、じっとしていられなかった。
生活
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
二三間離れた私にはそれが分らないくらい
四囲
(
あたり
)
が暗いのでした。けれども
時節柄
(
じせつがら
)
なんでしょう、避暑地だけあって人に会います。そうして会う人も会う人も、必ず
男女
(
なんにょ
)
二人連
(
ふたりづれ
)
に限られていました。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
四囲
(
あたり
)
がシンとしておりますけに……そうするとお八代さんは
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
四囲
(
あたり
)
に注意しなければならなかった。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
四囲
(
あたり
)
の人々がどうあろうと、そんな判別もつかぬらしく、ただ
徒
(
いたず
)
らにその眼は
執念
(
しつこ
)
く女の屍体に注がれていた。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「黙っておいで、黙っておいで」と自分は
四囲
(
あたり
)
を見廻して「これから新町まで行って来る」
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
二三日前まで九太が同じ寝床にいたのだと思うと、伊代は暗い寝床で桃を
噛
(
ママ
)
りながらぽろぽろ泣いているのであった。
四囲
(
あたり
)
が湿っているので、伊代は苦しめられるような蒲団の匂いをかいだ。
帯広まで
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
気がついて
四囲
(
あたり
)
を見まわすと、自分は白い
清浄
(
せいじょう
)
な
夜具
(
やぐ
)
のなかにうずまって、ベッドの上に寝ていた。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
さすが女囚の刑務所だけあって、古い建物でしたけれど、
四囲
(
あたり
)
は清潔な感じです。洗面所には、よく製糸工場でみるような細い長い鏡が横に張りつけてあって、窓の外に明るい庭がみえています。
新生の門:――栃木の女囚刑務所を訪ねて
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
自分は
持
(
もっ
)
て来た小説を
懐
(
ふところ
)
から出して心
長閑
(
のどか
)
に読んで居ると、日は
暖
(
あたた
)
かに照り空は高く晴れ
此処
(
ここ
)
よりは海も見えず、人声も聞えず、
汀
(
なぎさ
)
に
転
(
ころ
)
がる波音の穏かに重々しく聞える
外
(
ほか
)
は
四囲
(
あたり
)
寂然
(
ひっそり
)
として居るので
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そこで彼は、改めて暗黒そのもののような
四囲
(
あたり
)
を眺めまわした。
暗澹
(
あんたん
)
たる闇の外に何にもない!
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
牛も目隠しをとって、
四囲
(
あたり
)
をながめさして貰いたいものだ。
恋愛の微醺
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
彼はそこに突立ったまま、しばらく
四囲
(
あたり
)
を見まわしていたが、やがてポンと手をうった。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
四囲
(
あたり
)
は仄々と明るくて、どこの畑の麦も青々とのびていた。
河沙魚
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
どこかに、夕刊売りは出ていないかと
四囲
(
あたり
)
を見廻すと、小暗い河岸ぷちの向うから、リンリンと微かな鈴の音が聞えてきた。音のしている方向には、灯が一つポツンとついていた。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
山では桜の花が散って、いっせいに
四囲
(
あたり
)
が青ばんで来た。
風琴と魚の町
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
“四囲”の意味
《名詞》
四方の囲み。周囲。
周辺。
(出典:Wiktionary)
四
常用漢字
小1
部首:⼞
5画
囲
常用漢字
小5
部首:⼞
7画
“四”で始まる語句
四辺
四方
四
四邊
四方山
四肢
四阿
四谷
四人
四角