南風譜なんぷうふ――牧野信一へ――――まきのしんいちへ――
私は南の太陽をもとめて紀伊の旅にでたのです。友達の家の裏手の丘から、熊野灘が何よりもいい眺めでした。 このあたりは海外へ出稼ぎに行く風習があります。それゆゑ変哲もない漁村の炉端で、人々は香りの高い珈琲をすすり、時には椰子の実の菓子皿からカリ …
題名が同じ作品
南風譜 (新字旧仮名)牧野信一 (著)