囚人しゅうじん)” の例文
今日こんにちより右平林の後役あとやくは其の方に申付けるによって役宅にすまい、不都合なきよう島内囚人しゅうじんの取締を致せ、下役人一同左様心得ませえ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたしは、つんつるてんの短い上着を着たまま、じっとそこにって、死刑しけいを言いわたされた囚人しゅうじんよろしくのていでゆかを見つめていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
昨日までの職掌がらで、自分も多年いろんな囚人しゅうじんを手がけて来たが、この時遷じせんアダ名を鼓上蚤こじょうそうという蚤みたいな人間は、めったに知らない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんで、囚人しゅうじんになんか、かせたのだろう?」と少年しょうねんは、ばんがたまちから、てきたとしよりにむかって、たずねました。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
まつりのおかげで、囚人しゅうじんたちは、まい日させられるしごとにも出て行かず、朝からおさけを飲んでよっぱらったり、あっちこっちのすみでは、ひっきりなしに
きみもやはり囚人しゅうじんになったんだな。なるほど、きみの国の森は寒いだろう。だが、そこにはまだ自由がある。とびだせ。とびだせ。きみのかごの戸はしめるのを
丁度あの囚人しゅうじんの姿こそ自分で自分のむちを受けようとする岸本の心にはふさわしいものであった。眼に見えない編笠。眼に見えない手錠。そして眼に見えない腰繩。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
わたしはかれが囚人しゅうじんれて帰って来るのを、べんべんとこしかけて待つほかはなかった。気ちがいじみたかけっこをしたあとで、休息するのがうれしかった。
ほふられたる囚人しゅうじんの血が、おのずから人の眼をいて、自から人の心を不快にするごとく一種異様な赤である。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なんだかこれがまたかれには只事ただごとでなくあやしくおもわれて、いえかえってからも一日中にちじゅうかれあたまから囚人しゅうじん姿すがたじゅううてる兵卒へいそつかおなどがはなれずに、眼前がんぜん閃付ちらついている
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
常子は「順天時報じゅんてんじほう」の記者にこの時の彼女の心もちはちょうどくさりつながれた囚人しゅうじんのようだったと話している。が、かれこれ三十分ののちついに鎖のたれる時は来た。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
千二の体には、鎖こそつないでなかったが、彼こそ電波でしばられた囚人しゅうじんであったのである。
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)
つながれているかわいそうな囚人しゅうじんたちにむかっていって、苦しめたり、死人のにくをたべたり、貧乏人びんぼうにんの地下室からカブラをぬすんできたり、眠っているガチョウの足をかみきったり、メンドリから
何をするか知らぬと思う間もなく、三日半も干乾ひぼしにして庭樹にわきの枝に縛り付けてあった囚人しゅうじん目がけてズドンと一発放つや否や、キャッという叫び声。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
このあいだ、わたしは牢獄ろうごくの建物を見おろしました。窓をしめた一台の馬車が、その前でとまりました。ひとりの囚人しゅうじんが連れだされることになっていたのです。
いく十にんか、かきいろ着物きものをきた、囚人しゅうじんが、れつをなして、なわにすがり、それをいていたのです。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
やはり毎朝まいあさのようにこのあさ引立ひきたたず、しずんだ調子ちょうし横町よこちょう差掛さしかかると、おりからむこうより二人ふたり囚人しゅうじんと四にんじゅううて附添つきそうて兵卒へいそつとに、ぱったりと出会でっくわす。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
彼は、アンの腰に、丈夫じょうぶロープがふた巻もしてあるのを発見した。しかもその綱の先は、防空壕のろく材の一本に、堅く結んであった。まるで囚人しゅうじんをつないであるような有様であった。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたしは囚人しゅうじんれの食べ物の中に、よく友だちからの内証ないしょうのことづけを見つけるという話を聞いていた。わたしは食べ物に手がつかなかったが、ふと思いついて、パンをり始めた。
があがあいやなうたをわめきたてたり、こっそり寝床ねどこいたの下にかくしてカルタをしたり、何かとんでもないらんぼうなことをして、なかまの囚人しゅうじんたちにふくろだたきのめにあわされ、あげくのはて
彼は自分の部屋の窓の下を往来する人達と全く無関係に生きて行く異邦の旅人としての自分の身をその客舎に見つけた。あだかも獄裡ごくりつながるる囚人しゅうじんが全く娑婆しゃばというものと縁故の無いと同じように。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
エヒミチは体裁きまりわるそうに病院服びょういんふくまえ掻合かきあわせて、さも囚人しゅうじんのようだとおもいながら、『どうでもいいわ……燕尾服えんびふくだろうが、軍服ぐんぷくだろうが、この病院服びょういんふくだろうが、おなじことだ。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いやもう囚人しゅうじんどもは明日あすの赤飯を楽しみに喜び勇んで引取りました。思えば罪のないものでございます。此のお瀧と申します婦人はもと八丁堀の碁打ごうち阿部忠五郎という者の娘でございます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
既成きせい科学に対し、すっかり囚人しゅうじんになっているのがいけないのかもしれない
海岸かいがんって、ぼうぜんとして、ためいきをつくと、どこからともなく、かねが、きこえて、すげがさをかぶった、囚人しゅうじんのむれが、くもののごとく、なぎさにうごめくまぼろしがうかびました。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
が、まさか、囚人しゅうじんになったわけではあるまい。
鬼仏洞事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
覆面の囚人しゅうじん
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)