双六すごろく)” の例文
旧字:雙六
ああ、ああ、ここいら、一面に、己達おれッちの巣だったい。東海道は五十三次、この雲助が居ねえじゃ、絵にも双六すごろくにもなるんじゃねえ。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こういう風情は現代の若い人たちには十分に会得えとくされまいと思う。それから歳の暮になると、絵双紙屋の店にはいろいろの双六すごろくがかけられる。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
座敷の御簾みすをいっぱいに張り出すようにしてすそをおさえた中で、五節ごせちという生意気な若い女房と令嬢は双六すごろくを打っていた。
源氏物語:26 常夏 (新字新仮名) / 紫式部(著)
かくて“人生紙芝居”の大詰がめでたく幕を閉じたこの機会にふたたび“人生双六すごろく”の第一歩を踏みだしてはどうかと進言したのが前記田所氏
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
若殿と二人で夜おそくまで、宿の女中にたわむれて賭事かけごとやら狐拳きつねけんやら双六すごろくやら、いやらしく忍び笑いして打興じて、式部は流石さすがに見るに見兼ね
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
以上のほかに実隆は禁裏の仰せによって浄土双六すごろくの文字などを認めたこともあり、また人のために将棋の駒をも書いた。
おいの兵庫助とが、遊女のうちの美人を賭けて双六すごろくをやり、さいの論争から、ついに叔父甥で刃を抜き、双方、ひん死の重傷を負ったのみならず
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この規模を小さくしたものに双六すごろく谷があり、更に一層小さくしたものに都近い所では、笛吹川の上流東沢西沢がある。
渓三題 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「親分がまた腕を組んだ、この双六すごろくも上がりが近いぜ。ね、お静さん——おっと姐御あねご、この秋は少し遠走りして、湯治にでも行こうじゃありませんか」
やっと高原川及びその支流の双六すごろく川・蔵柱川に沿うて、散在しているに過ぎないという有様で、そこには天狗住居の伝説も存し、昔の人の目から見れば
双六すごろくの遊びには、昔の人たちは女でもことのほか熱中したもので、絵にも文学にもそういうことはよく出ている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
双六すごろくの上手の言葉を引いて(第百十段)修身治国の道を説いたり、ばくち打の秘訣(第百二十六段)を引いて物事には機会と汐時しおどきを見るべきを教えている。
徒然草の鑑賞 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
これから当分、剣術の相手、馬の遠乗り——もしやそちが、歌を詠むことを学びたいなら、わしが知れる限りは教えてもよい、囲碁、双六すごろくの相手もしてたも
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
盗賊ふせぎに許されて設けた僧兵が、鴨川の水、双六すごろくさいほど法皇を悩ませたり、貿易のために立てた商会がインドを英国へ取ってしまう大機関となったり
「坊やちゃん、元禄が濡れるから御よしなさい、ね」と姉が洒落しゃれた事を云う。そのくせこの姉はついこの間まで元禄と双六すごろくとを間違えていた物識ものしりである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「うんそうだ、黒姫山に、山寨さんさいを築いて住んでいる地丸左陣の乾児こぶんの中で、名を知られた双六すごろくの六太だ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
姫君は昼は昔のやうに、琴を引いたり双六すごろくを打つたりした。夜は男と一つしとねに、水鳥の池に下りる音を聞いた。それは悲しみも少いと同時に、喜びも少い朝夕だつた。
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さきほどあの御門弟の方からすっかりうかがいました。まあどんなに驚いたことでしょう、わたくし梅尾うめお双六すごろくをしているところでした、ちょうどわたくしの番で、さい
似而非物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
正月の遊びにも西洋趣味の物でなくて東海道々中双六すごろくを用いて欲しいと望んでおられる事です。
激動の中を行く (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
「賀茂川の水、双六すごろくさい、比叡の山法師、これだけは、いかな私でも手に負えない」
双六すごろくで云えば、いつも振り出しのへんでまごついている感じである。いい齢をしてわが身一つを養いかねているあんばいであるが、結局は自分に辛抱気が足りなかったのだと思っている。
夕張の宿 (新字新仮名) / 小山清(著)
将棊と云えば将棊を指すのですが、真に巧いもので、双六すごろくを振り歌を詠みます。
その内に新しい奥様を、お国許くにもとからお迎えになりました。これということもない、おとなしやかなお方でした。種々の先生が来られます。お花、お茶、お香、双六すごろくの先生などまで来られます。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
そこで、また、汽車で品川へ戻り、そこから道中双六すごろくのように一足一足、上りに向って足を踏み出すのである。何の為めに? 目的を持つ為めに。これを近頃の言葉では何というのでしょうか。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
福井の城下へも京の公卿くげ蹴鞠けまりの戯れを伝えて、それが城中にもしばしば行われた時、最も巧みに蹴る者は彼であった。囲碁将棋双六すごろくというもてあそびものにおいても、彼は大抵の場合勝者であった。
忠直卿行状記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
乃至は双六すごろく、千代紙、切組画などを店頭に掲げ、草双紙、読本類を並べて、表には地本絵双紙類と書いた行灯型の看板を置き、江戸気分を漂わした店構えが明治時代には市中到るところに見られたが
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
双六すごろくの目をのぞくまでくれかゝり 翁
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
二人は双六すごろくの盤に向った。
崔書生 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
書き初め 双六すごろく
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
あがり双六すごろく
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
「変な電話がチョイ/\かかってくるもんですわ、新聞社ちゅうトコは。たいがいインチキ電話ですが、今度ばかりは、煙山の出発時刻から、ズバリそのもの。東京のフリダシから京都の上りまで、チャント双六すごろくができてますわ。やっぱり、正月のせいかな」
投手殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
なにかな、御身おみ遠方ゑんぱうから、近頃ちかごろ双六すごろく温泉をんせんへ、夫婦ふうふづれで湯治たうぢて、不図ふと山道やまみち内儀ないぎ行衛ゆくゑうしなひ、半狂乱はんきやうらんさがしてござる御仁ごじんかな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ここのお館にも、投扇興とうせんきょうや貝遊びや、また双六すごろくとか半弓の遊具なども備えてあるにちがいないが、そんな殿上遊戯はお上品すぎておもしろくない。
別荘には山里らしい風流な設備しつらいがしてあって、碁、双六すごろく弾碁たぎの盤なども出されてあるので、お供の人たちは皆好きな遊びをしてこの日を楽しんでいた。
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
双六すごろくノ池、薬師ノ池というように、到るところの窪地に清澄な水が溢れて、登山者の渇を癒し目を楽ませる。
南北アルプス通説 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
各劇場の春狂言が早くきまっている時には、先廻りをして三枚つづきの似顔絵を出すこともある。そのほかにいろいろの双六すごろくも絵草紙屋の店先にかけられる。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「そなた、何ぞ、芸に遊ぶ心得はないか、たとえば、歌をよむこと、絵を描くこと、香を聞くこと、管絃をかなでることでもよろしい、さもなくば囲碁か、双六すごろくか」
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ある日大殿様の双六すごろくの御相手をなすっていらっしゃる時に、ふとその御不満を御洩しになりました。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
二人は火桶を囲んで、話したり笑ったり、双六すごろくをやったり、見合せをやったりして居りました。
秋の夜長をこうして二人は、やがて双六すごろくだの投げ扇だの、花合わせだのをして興じ合った。それから若衆は帰って行った。二人はいまだに唯の一度も枕を交わせたことはない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私の幼時に愛した木版の東海道五十三次道中双六すごろくでは、ここが振りだしになっていて、幾人ものやっこのそれぞれ長い槍を持ってこの橋のうえを歩いている画が、のどかにかかれてあった。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
「私と双六すごろくをする筈じゃないか」と甲斐が云った。
双六すごろくに負けおとなしく美しく
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
わざと、遠くひかえていた小姓部屋の面々は、ソラ起きたと顔見あわせ、こっそりやっていた双六すごろくをあわてて片づけた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
双六すごろくつてけませう。わたしほかことなんにもらねば……して、わたしけましたら、其切それきり仕方しかたがありません。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いろいろな話題になって明石の人たちがうらやまれ、幸福な人のことを明石の尼君という言葉もはやった。太政大臣家の近江おうみの君は双六すごろくの勝負のさいを振る前には
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
例のいろは短歌や道中双六すごろくのたぐいもあるが、何か工夫して新しいものを作り出すことになっているので、武者絵むしゃえ双六、名所双六、お化け双六、歌舞伎双六のたぐい
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
双六すごろく岳や其北の蓮華岳一名三俣岳は、幅の広いそして丸味を帯びた穏かな山容と変っている。
黒部峡谷 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「佐太郎が惚気交のろけまじりに話したことや、内儀と米吉が、夜も昼も奥の部屋にこもって、綾取り双六すごろくまりつき、と他愛もないことばかりして遊んでいることも、あの女が見届けてくれましたが」
地図を案じて北陸の本筋を愛発越あらちごえをして近江路へ、近江路から京都へ、心はもう一走り、そこまで行けば今度こそは結着、そこで、双六すごろくの上りのように、三条橋を打留めに多年の収穫
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)