加之おまけ)” の例文
加之おまけみちが悪い。雪融ゆきどけの時などには、夜は迂濶うっかり歩けない位であった。しかし今日こんにちのように追剥おいはぎ出歯亀でばかめの噂などは甚だ稀であった。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「君、僕ももうもとの徳蔵ではないよ、お金はうなる程出来るし、加之おまけに弟は貴族院にるし、何一つこの世に不足は無くなつたよ。」
はらなかに五六十りやう金子かね這入はいつてる、加之おまけ古金こきんだ、うしてくれよう、知つてるのはおればかりだが、ウム、い事がある。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
加之おまけに在来の姑と嫁とは殆ど専制時代の君臣の関係であることが正しいとせられているから、干渉が一転すれば強制となり威圧とならずには置かない。
姑と嫁について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
「そいつは大変だね。何しろ、家を移すということは容易じゃ無いよ——加之おまけに遠方と来てるからなあ」
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
博士は「日本人は約束を守る誠実な国民だ。も一度来ると云へば屹度きつとこの通りに来る。加之おまけに二人の詩人をれて来た。ことに日本婦人がツウルへ来た事はこれが始めであらう」
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
御一新前土佐藩から出て天下を横行した海援隊の隊長にママ本龍馬と云ふ豪傑が有つて、又其妻に楢崎お龍と云ふ美人で才女で、加之おまけに豪胆不敵な女のあつた事は諸君善く御承知でせう
千里駒後日譚 (新字旧仮名) / 川田瑞穂楢崎竜川田雪山(著)
いわゆるのこぎりの目を立てるようなヴァイオリンやシャモの絞殺しめころされるようなコロラチゥラ・ソプラノでもそこらここらで聴かされ、加之おまけにラジオで放送までされたら二葉亭はとても助かるまい。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
加之おまけに人間のやうな自由思想家であるとしたら、人間は少し位悪くしても、精々馬の方に気をつけてやらなくちやならぬかも知れない。
自分の夫たるべき男をひとられて、加之おまけに自分がんなひどい目に逢うとは、債権者が債務者から執達吏しったつり差向さしむけられたようなもので、余りに馬鹿馬鹿しい理屈である。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私が「事実の観察に出発せず」加之おまけに「事実の関係を全く無視して極めて主観的な判断を下す」
平塚さんと私の論争 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
本願寺も在所の者の望みどほりに承諾した。で代々だい/″\清僧せいそうが住職に成つて、丁度禅寺ぜんでらなにかのやう瀟洒さつぱりした大寺たいじで、加之おまけに檀家の無いのが諷経ふぎんや葬式のわづらひが無くて気らくであつた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
月不足つきたらずで、加之おまけに乳が無かつたものですから、満二月まるふたつきとは其児も生きて居なかつたさうです。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
イヤうにもうにもじつ華族くわぞくのお医者いしやなどかゝるべきものではない、無闇むやみにアノ小さな柊揆さいづちでコツコツ胸をたゝいたりなんかして加之おまけひどい薬をましたもんだから、昨夜ゆうべうも七十六たびかはやかよつたよ。
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「喧嘩は滅多にしなかつたが、最後まで出してはならぬ筈の専門で飯を食ふやうにはなるし、加之おまけに今だに借金はたんと残つてるし……」
加之おまけ仏蘭西フランスばかりで無く春の見物に来た世界のお客様がうようよしてゐる中でせはしく一べつして歩くのだからたしかな評判も出来ないが、う量が多ければ概して普通なみ作物さくぶつばかりになるのは勿論だ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
旧主人きゅうしゅじんの角川家の前も通った。しゅくを抜けて村境むらざかいまで出ると、日が暮れかかって来て、加之おまけに寒い雨が降って来た。目ざす銀山まではまだ三里もあるので、二人は其処そこらで野宿をすることに決めた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
加之おまけに、子供は多勢で、与太よた(頑愚)なものばかり揃つて居て——
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
肩に背負つた風呂敷包には、二宮金次郎の道徳のやうな、格安で、加之おまけに「おめのいい」石鹸しやぼん白粉おしろいがごたごたくるまれてゐた。
夜更よぶかしをして帰つて来る自分達は兎角とかく遅く起きる朝が多いのに、夫人は何時いつでも温かい料理を出す様にと気を附けてられる。初めに辞退しなかつたので毎朝その通りの料理が出て加之おまけその量が多い。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
シカゴの或るお婆さんは、「私はつんぼ加之おまけおしです。気の毒だとお思ひなら、貴女あなたの書物を一冊送つて呉れ」と申込んで来た。
で保雄はいつも貧乏で加之おまけに高利貸の催促にくるしめられて居る。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
実際今時の武力で領土の遣り取をめる状態に比べたなら、王様の智慧比べの方が罪がなくて、加之おまけに人を殺さないだけでも良いかも知れない。
かへみちくだんの課長は何故俺を死人扱ひにして加之おまけに顔の棚卸しまでしたと言つて、雄弁家に喧嘩を吹き掛けたさうだ。
湯沸サモワルは便利で、加之おまけに火持ちがいいところから、聯合軍が浦塩ウラジホつてから、あの界隈の湯沸サモワルは段々ひ集められて、アメリカあたりへ輸出された。
ところがフワリエエルと来てはお話にもなんにもなつたものでは無い。何もかも油でいためて、加之おまけねぎを添へて置かなくつちや承知しないんだからな。
食卓語テエブルスピーチは巧くやつて退けたし、加之おまけ美味うまい七面鳥は食べたしするので、ル氏は顔に似合はずその晩は上機嫌だつた。で、一言爺さんに嘲弄からかつてみた。
「私の父はミスシツピイで農園をやつてゐましたが、ある時洪水おほみづで農園はすつかり台なしにされてしまひ、加之おまけに私達の住家すみかも根こそぎ持つてかれました。」
若い将校は希望通りに休暇を貰つたらいいので、加之おまけに好きな娘と結婚する事さへ出来たらいいので、別に気むつかしやの元帥と議論する必要もなかつたのだ。