仙台せんだい)” の例文
旧字:仙臺
「ちぇッ、たまらねえね。行く先ゃどこですかい。こないだは箱根へとっぱしったが、今度は奥州仙台せんだい石巻いしのまきとでもしゃれるんですかい」
「そっちは水戸までしかいかなかった、西は須磨すまってところまでいったけどさ、こんどはおれ仙台せんだいまでいってみようと思うんだ」
おさん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
小諸こもろ仙台せんだいのような土地がらともちがい、教育の機関というものがそうそろっていませんし、語るに友もすくないようなところですから
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「いいえ、それが源どん。あたしが途中で病気になったもんだから、樺太へは渡れなくて、仙台せんだいの妹の家に今までやっかいになっていたのさ」
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
良人を釘店くぎだなのだだっ広い住宅にたった一人ひとり残したまま、葉子ともに三人の娘を連れて、親佐は仙台せんだいに立ちのいてしまった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
なんでもその文面によると、僕が仙台せんだい針久はりきう旅館とかにとまつてゐて、電報為替がはせで金を取り寄せたと云ふのであつた。
偽者二題 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
仙台せんだいの大学のもんですがね。地図にはこの家がなく水車があるんです。)(ははあ。)嘉吉かきち馬鹿ばかにしたようにった。青年はすっかりれてしまった。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
この「チビ」は最初の産褥さんじょくでもろく死んでしまった。その後仙台せんだいへ行ってK君を訪問すると、そこにいた子猫がこれと全く生き写しなのでまた驚かされた。
備忘録 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
伝馬は、仙台せんだい沖の鰹舟かつおぶねで鍛え上げた三上がともを押して、小倉が日本海隠岐おきで鍛えた腕で、わきを押した。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
嚢中不足は同じ事なれど、仙台せんだいにはその人無くばまむ在らば我が金を得べきことわりある筋あり、かつはいささかにても見聞を広くし経験を得んには陸行にしくなし。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
仙台せんだいはどうかね。うちの娘があすこで芸者屋を出しているから、私の一存でもきまるんだがね。」
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そこで明智探偵事務所へ電話をかけますと、明智は仙台せんだいに事件があって、きょう出かけたところだというので、先生にかわって、小林少年がやってくることになりました。
塔上の奇術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その三は、大正二年の九月、仙台せんだい塩竃しおがまから金華山きんかざん参詣の小蒸汽船に乗って行って、島内の社務所に一泊した夜である。午後十時頃から山もくずれるような大雷雨となった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
十四五にん仙台せんだい学校がくかうからとく、洋服やうふく紳士しんしが、ぞろ/\とつゞいてえた。……
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
仙台せんだい洋学者ようがくしゃ大童信太夫おおわらしんだゆうをたすけだしたり、千葉ちば長沼村ながぬまむら人々ひとびとのために、ちからをつくしたこともありますが、ここでは、その一つのれいとして、榎本武揚えのもとたけあきをすくったはなしをとりあげておきます。
みちのくの仙台せんだいよりおくりくれしてふ納豆なつとうを食む心しづけさ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
仙台せんだいへ引き返してから、わたしは布施ふせさんの家の人たちとも別れて、名掛町なかけちょうというところにあった宿のほうへ移りました。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
仙台せんだい姫路ひめじ竜山りゅうざん各師団よりなる極東軍主力は、国境附近の労農軍を撃破し、本日四時を以てニコリスクを去る十五キロの地点にまで進出せり。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
竹にすずめは仙台せんだい侯、内藤様は下がりふじ、と俗謡にまでうたわれたその内藤駿河守ないとうするがのかみの広大もないお下屋敷が、街道かいどうばたに五町ひとつづきの築地ついじべいをつらねていたところから
葉子はもうこんな程々ほどほどな会話にはえきれなくなって来た。木村の顔を見るにつけて思い出される仙台せんだい時代や、母の死というような事にもかなり悩まされるのをつらく思った。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
此日このひ本線ほんせんがつして仙台せんだいをすぐるころから、まちはもとより、すゑの一軒家けんやふもと孤屋ひとつやのき背戸せどに、かき今年ことしたけ真青まつさをなのに、五しき短冊たんざく、七いろいとむすんでけたのを沁々しみ/″\ゆかしく
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
慶応けいおう四年二月(この年九月に明治となる)、勅命をほうじて奥羽おうう征伐の軍を仙台せんだいに進めた九条道孝卿くじょうみちたかきょうは、四月のはじめまず庄内しょうない酒井忠寛さかいただひろを討つため、副総督沢為量さわためますに命じて軍勢を進発させた。
梟谷物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
仙台せんだいの名産のうちに五色筆ごしきふでというのがある。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
鹿児島かごしま津和野つわの、高知、名古屋、金沢、秋田、それに仙台せんだい——数えて来ると、同門の藩士もふえて来たね。山吹やまぶき苗木なえぎなぞは言うまでもなしさ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ことに懸念したのは豊臣とよとみの残党で、それを口火に徳川へ恨みを持っている豊家ゆかりの大名たちが、いちどきに謀叛むほんを起こしはしないだろうかという不安から奥州は仙台せんだい伊達だて一家
目下、彼我ひがの空軍並に機械軍の間に、激烈なる戦闘をまじえつつあり。就中なかんずく、右翼竜山師団りゅうざんしだんは一時苦戦におちいりたるも、左翼仙台せんだい師団の急遽きゅうきょ救援砲撃により、危機を脱することを得たり。終り
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その昨日きのふそれまでは、いさゝようがあつて仙台せんだいたのであつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
仙台せんだい
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
母の病気とは思いがけないことでしたが、わたしはすぐにしたくして、学校へも届を出し、大急ぎで仙台せんだいをたちました。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
三十五反の帆を張りあげて行く仙台せんだいいしの巻とは、必ずしも唄空事うたそらごとの誇張ではない。
二月の末に京都をって来たという正香は尾張おわり仙台せんだいのような大藩の主人公らまで勅命に応じて上京したことは知るまいが、ちょうどあの正香が夜道を急いで来るころに
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
半蔵はこの長雨にぬれて来た仙台せんだいの家中を最近に自分の家に泊めて見て、本陣としても問屋としても絶えず心を配っていなければならない京大坂と江戸の関係を考えて見ていた時だ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)