云々しかじか)” の例文
結局行会ゆきあって、署長から、これこれ云々しかじかと一部始終を聞き終ると、どうしたことかサッと顔色を変えて、なんだか妙にうろたえながら
動かぬ鯨群 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
寅之助や荷十郎などが、何処からか、ひとりの老婆をかつぎこんで来て、実は云々しかじかという話に、彼の同輩や後輩たちは、手を打って
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
例へば彼の蠅は一丁か二丁ばかりは精出して飛びそれより外に飛びもならぬ者なれど馬の背なぞにひよつと止まりぬれば一日に十里も行くが如し云々しかじか
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ただ、わが身の自在を得れば満足でありますと申し立てたので、答刺罕と書いて賜わったのでございます。云々しかじか
それをお浪が知っていようはずは無いが、雁坂を越えて云々しかじかと云いあてられたので、突然いきなりするどい矢を胸の真正中まっただなか射込いこまれたような気がして驚いたのである。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
妾の容子ようすの常になくつつましげなるに、顔色さえしかりしを、したしめる女囚にあやしまれて、しばしば問われて、秘めおくによしなく、ついに事云々しかじかと告げけるに
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
即ち我が国衣食住の有様は云々しかじかにして習俗宗教はかくの如しなどと、これを示しこれを語りて、時としてはことさらにその外面をよそおうて体裁を張るが如き、これなり。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
わたくしはあなたの女の手紙は云々しかじかとお書きになったあの御文章を承知いたしています。
田舎 (新字新仮名) / マルセル・プレヴォー(著)
もしもかかる事実じじつを以て外国人に云々しかじかくわだてありなど認むるものもあらんには大なる間違まちがいにして、干渉かんしょうの危険のごとき、いやしくも時の事情をるものの何人なんぴとも認めざりしところなり。
哲学科を優等で卒業した金井湛氏は自由新聞に筆を取られる云々しかじかと書いてある。僕は驚いて、前々晩の事を思い出した。そしてこう思った。僕は秘密を守って貰う約束で書こうと云った。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
もし下枝等の死したらんには、悔いても及ばぬ一世の不覚、我三日月の名折なり。少しも早く探索せむずと雪の下に赴きて、赤城家の門前にたたずみつつ云々しかじかつぶやきたるが、第一回の始まりなり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
物のついで云々しかじかと叔母のお政に話せばこれもまた当惑のてい
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しかし、わしは夜を日についで、北京府ほっけいふに立ち帰り、かよう云々しかじかと、梁中書りょうちゅうしょ閣下にお告げする。当然、烈火のおいかりは知れたこと。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
栄誉えいよ利害りがいを異にすれば、またしたがって同情相憐あいあわれむのねんたがい厚薄こうはくなきを得ず。たとえば、上等の士族が偶然会話の語次ごじにも、以下の者共には言われぬことなれどもこのこと云々しかじか、ということあり。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
大臣の信用は屋上のとりのごとくなりしが、今はややこれを得たるかと思わるるに、相沢がこの頃の言葉のはしに、本国に帰りてのちもともにかくてあらば云々しかじかといいしは、大臣のかくのたまいしを
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
湯具に紐つけることはむかしは色里になかりしとぞ。西鶴が胸算用に(湯具も木紅の二枚かさね)と云々しかじかあはせて作りたるものありしと見えたり。ともかくも湯具と湯巻は全然別物なりと知らるべし。
当世女装一斑 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
云々しかじか
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
千種忠顕は参内の帰途、新田義貞の烏丸からすま屋敷をたずねていた。そして云々しかじかと、わけを語り、弾劾文の写しを彼にみせたのだった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当局の御本人におい云々しかじかの御説もあらば拝承はいしょういたたく何卒なにとぞ御漏おんもら奉願候ねがいたてまつりそうろう
解いた帯を、縦に敷布団の真中に置いて、跡から書くので譬喩ひゆが anachronism になるが、樺太からふとを両分したようにして、二人は寝る。さて一寐入して目がめて云々しかじかというのである。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
云々しかじか
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それからまた、李逵りきをよんで、云々しかじかで都へ行くが、宋江そうこうの身を、くれぐれ頼むとかたくいいつけ、もう一つ釘をさして言った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いい者に出会った。じつは云々しかじか仔細しさいで、その公孫先生のあとを尋ねに来たわけだ。教えてくれんか、今おいでになる処を」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
誰を待つのかとたずねるので、実は云々しかじかな仔細で、いつぞやここで知己になった赤壁という牢人と落合う約束になっているのだが——と語ると
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、呂布にえっし、云々しかじかと仔細を告げて、玄徳から曹操へ宛てた返簡を見せると、呂布は、鬢髪びんぱつをふるわせて、激怒した。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かねがね、海道の宿駅に撒いておいた諜者から、矢作やはぎにおける使者鏖殺おうさつの件を、云々しかじかと、早馬で知らせてきたのである。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、あわてるには及ばん。どうしたかと、只今、佐渡平の店へ寄ってみたところ、云々しかじかと聞いて、まずよしと、その足でこの寺におる花世の安否を
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「俄か坊主か。それやよかろう。道誉に会うて、云々しかじか、尊氏の意中をかく申せ」——と、その云々しかじかの内容を小声で彼にささやいたが、また一考して
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(他家へゆずり難い最愛の家臣であるが、云々しかじかの事情故、当人も不愍ふびんとぞんじ、離し難きを離すのであれば、どうか末長く目をかけてやってほしい)
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足利家に御縁の深そうなお二た方が、途中、云々しかじかの御難儀と告げわたれば、すぐ大勢して、押ッ取り刀でお守りに駈けつけましょう。……が、お名を
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
左馬介も、這般しゃはんの消息はまだふかく聞いていないが、今暁、ここの城門をたたく者があって、云々しかじかの由を、寝耳に聞かせられたときから、彼としては
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
云々しかじか理由わけで、刑部省の獄司、犬養いぬかい善嗣よしつぐに、一夜、たいそう心あたたかな親切によく世話してもろうたと……そこは、お聞えよく、話しておくりゃれ。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ご簾中には、云々しかじかのおことばでござる。——ここはひとまず、山寨へ帰って、またの時節を待ったがよかろう」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
去ろうとすると、喜内が追いかけて来て、たった今、云々しかじかの騒ぎと——右門とお由利の姿が見えない事を告げた。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
集まって来た同僚に、宗易をとがめた武士は、宗易の申し立てを、もっと悪意を加えた意味で、云々しかじかと告げた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
走りよって、師直は早口に云々しかじかと、事のわけを告げた。とは聞け、高氏は驚愕に打たれた風でもない。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうぞゆるしてあげてくれと頼んだところ、先で申すには、香炉の罪ばかりではない、云々しかじかのこともある、いやこれこれの事情もあると、受けつけそうもござらぬので
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又、隠密を命じられて、看破されて帰る奴が、実は、云々しかじかと、自分の失策をていに報告するはずもない。却って、吾々の行動を、誇大にして、兵部の耳へ達しるだろう。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人はさっそく、「云々しかじかのわけですが」と、玄徳に主の旨を伝えて、善後策をはかった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分で飛んで行って云々しかじかとつもる話と共に嫁の素姓すじょうや人がらなどについてもくわしく告げたかったが、ひとかどの者となるまでは、母も中村で過そう、そなたも母に心をとられず
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
果たせるかな曹操は、使者の首を持って逃げ帰ってきた随員の口々から、云々しかじかと周瑜の態度を聞きとって、「今は」と、最後のほぞをかため、水軍大都督の蔡瑁さいぼう張允ちょういんを召し出して
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いやいや、云々しかじかの仔細でと、お噂を申したところ、すりゃ、ぜひお目にかかりたい。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、それへは、早舟を一そうって、云々しかじかの由を、沙汰がえ申しておけばよい」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貞満は、義貞から、云々しかじかのことで、いま義助を迎えにやったところだと聞くやいな。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実はそちの来る前に、松平出雲守殿まつだいらいずものかみ御家中から、云々しかじかと訴えが出ておるのじゃ。
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
王允は、翌晩、呂布をよんで、云々しかじかと、策を語った。——呂布は聞くと
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
魯粛は、船をいそがせて、南徐に下り、呉侯に会って云々しかじかと報告した。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
云々しかじかとあって、事態の容易でないことを、訴えて来たのであった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
聞けば、病とは表向き、云々しかじかで帰国するとのうちあけばなし。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(どこの旧家には、云々しかじかの得がたい文献が伝わっている)
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)