乘合のりあひ)” の例文
新字:乗合
しかりしのちの(一人坊主ひとりばうず)は、さきとは正反對せいはんたい位置ゐちちて、乘合のりあひをしてかへりてわれあるがためにふね安全あんぜんなるをたしかめしめぬ。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
茄子なすび大根だいこ御用ごようをもつとめける、薄元手うすもとでをりかへすなれば、をりからやすうてかさのあるものよりほかさほなきふね乘合のりあひ胡瓜きうりつと松茸まつたけ初物はつものなどはたで
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
止めて歩行あるきゆきけれども更に似た人もなく早日も西山せいざんかたむきしかばいざ旅宿りよしゆくかへらんとて三圍の下より渡し船にのり川中迄かはなかまで漕出こぎだしたる時向うより數人乘合のりあひし渡し船來り行違ゆきちがひさま其の船の中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いかでむとてもやらず、うつくしきふところより、かしこくも見參みまゐらすれば、うへ女夫めをとびな微笑ほゝゑたまへる。それもゆめか、胡蝶こてふつばさかいにして、もゝ花菜はなな乘合のりあひぶね
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
同道どうだうしたる男は疑ひもなき敵とねらふ吾助にて有れば忠八はおのれ吾助とひながらすツくとあがる間に早瀬はやせなれば船ははやたんばかりへだたりし故其の船返せ戻せと呼はれ共大勢おほぜい乘合のりあひなれば船頭は耳にも入ず其うちに船は此方のきしつきけれとも忠八立たりしまゝ船よりあがらず又もや元の向島むかうじまの方へと乘渡り群集ぐんじゆの中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さもければ那樣そんなことをこはがると理窟りくつがないて。一體いつたいまへさんにかぎらず、乘合のりあひ方々かた/″\またうぢや、初手しよてからほど生命いのち危險けんのんだとおもツたら、ふねなんぞにらぬがいて。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わし一體いつたい京都きやうともので、毎度まいど金澤かなざはから越中ゑつちうはう出懸でかけるが、一あることは二とやら、ふねで(一人坊主ひとりばうず)になつて、乘合のりあひしうきらはれるのは今度こんどがこれで二度目どめでござる。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ますよ、さあはやく/\。彌次やじ舷端ふなばたにしがみついてしやがむ。北八きたはち悠然いうぜんとパイレートをくゆらす。乘合のりあひ十四五人じふしごにん最後さいご腕車わんしやせる。ふねすこみぎかたむく、はツとおもふとすこあをくなる。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)