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乘合
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のりあひ
然りし
後、
此の(
一人坊主)は、
前とは
正反對の
位置に
立ちて、
乘合をして
却りて
我あるがために
船の
安全なるを
確めしめぬ。
茄子大根の
御用をもつとめける、
薄元手を
折かへすなれば、
折から
直の
安うて
嵩のある
物より
外は
棹なき
舟に
乘合の
胡瓜、
苞に
松茸の
初物などは
持たで
止めて
歩行けれども更に似た人もなく早日も
西山に
傾きしかばいざ
旅宿へ
歸らんとて三圍の下より渡し船に
乘川中迄漕出したる時向うより數人
乘合し渡し船來り
行違ひさま其の船の中を
いかで
見むとて
寢もやらず、
美しき
懷より、かしこくも
密と
見參らすれば、
其の
上に
尚ほ
女夫雛の
微笑み
給へる。それも
夢か、
胡蝶の
翼を
櫂にして、
桃と
花菜の
乘合船。
同道したる男は疑ひもなき敵と
狙ふ吾助にて有れば忠八は
汝れ吾助と
言ひながらすツくと
立ち
上る間に
早瀬なれば船は
疾三
反ばかり
隔りし故其の船返せ戻せと呼はれ共
大勢の
乘合なれば船頭は耳にも入ず其
中に船は此方の
岸に
着けれとも忠八立たりし
儘船より
上らず又もや元の
向島の方へと乘渡り
群集の中を
さも
無ければ
那樣ことを
恐がると
云ふ
理窟がないて。
一體お
前さんに
限らず、
乘合の
方々も
又然うぢや、
初手から
然ほど
生命が
危險だと
思ツたら、
船なんぞに
乘らぬが
可いて。
私は
一體京都の
者で、
毎度此の
金澤から
越中の
方へ
出懸けるが、一
度ある
事は二
度とやら、
船で(
一人坊主)になつて、
乘合の
衆に
嫌はれるのは
今度がこれで二
度目でござる。
出ますよ、さあ
早く/\。
彌次舷端にしがみついてしやがむ。
北八悠然とパイレートをくゆらす。
乘合十四五人、
最後に
腕車を
乘せる。
船少し
右へ
傾く、はツと
思ふと
少し
蒼くなる。