一大事いちだいじ)” の例文
これはまったくの一大事いちだいじですから、殿様は国中に命令めいれいを下して、盗人ぬすびとを探させましたが、どうしても見つけることが出来ませんでした。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
十露盤玉そろばんだま筆先ふでさき帳尻ちやうじりつくろふ溝鼠どぶねづみのみなりけん主家しゆか一大事いちだいじ今日こんにち申合まをしあはせたるやうに富士見ふじみ西行さいぎやうきめ見返みかへるものさへあらざれば無念むねんなみだ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
けれども、對手あひて守子もりつこ飯炊めしたきでない、ひともこそあれ一大事いちだいじだ、とおもふから、のちとてもみなくちをつぐんでなんにもはず無事ぶじにしばらくつた。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ガチャリと電話機を掛けると、当直はあわただしくホールを見廻した。そこには一大事いちだいじ勃発ぼっぱつとばかりに、一斉いっせいにこっちを向いている夜勤署員の顔とぶっつかった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おそ野蠻人やばんじん巣窟さうくつでゞもあればそれこそ一大事いちだいじ早速さつそく遁出にげだ工夫くふうめぐらさねばならぬ、それをるにはかくこのしま一周いつしうしてなければならぬとかんがへたので
「おッ。おさま! た、大変たいへんなことになりました。あアおそろしい、……一大事いちだいじでござります」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
筆硯ひっけんに命をむる道也どうや先生は、ただ人生の一大事いちだいじ因縁いんねんちゃくして、かえりみるのいとまなきがゆえに、暮るる秋の寒きを知らず、虫の音の細るを知らず、世の人のわれにつれなきを知らず
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
改めさせられ御對面あるに此時このとき將軍家の仰に中納言殿には天下の一大事いちだいじよし何事なるやと御尋あれば中納言綱條卿つなえだきやうには衣紋えもんを正し天下の一大事と申候はにも候はずまづうかゞひ度は町奉行越前を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
が、林太郎がそんなにたおれてしまったのをみると、これは兄貴あにき一大事いちだいじとわかったらしく、しっかりと両耳りょうみみをたてて、林太郎のそばにきちんとすわっていました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ところで——ちゝの……危篤きとく……生涯しやうがい一大事いちだいじ電報でんぱうで、とし一月いちぐわつせついまだ大寒たいかんに、故郷こきやう駈戻かけもどつたをりは、汽車きしやをあかして、敦賀つるがから、くるまだつたが、武生たけふまででれた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つまり学問の力で外国に負けるぞ。まことに由々ゆゆしき一大事いちだいじではないか。
新学期行進曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まへに、身體からだ一大事いちだいじつたときに、あのかねかされましたのがみゝいて……むしなかでも、あれが、かねたゝきとおもふばかりで、早鐘はやがねきますやうなむねをどつたんです……
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一大事いちだいじちかづく
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)