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鯉口
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こいぐち
ふりがな文庫
“
鯉口
(
こいぐち
)” の例文
地声を現した新九郎は、大音声と共に竹の子笠を
刎
(
は
)
ね
捨
(
す
)
てて、
来国俊
(
らいくにとし
)
の
鯉口
(
こいぐち
)
を前落しに引っ掴み、ジリジリと玄蕃の前に詰め寄った。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鯉口
(
こいぐち
)
さえ切るひまもなくあっさりやられているところを見ると、この下手人はじつに容易ならぬ腕ききにちがいなかったからです。
右門捕物帖:24 のろいのわら人形
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
宇佐川鉄馬は小さい身体を
跳
(
おど
)
らせると、苦もなく
生垣
(
いけがき
)
を越えて、四角な顔を醜く
歪
(
ゆが
)
めたまま、逃げ腰ながら一刀の
鯉口
(
こいぐち
)
を切ります。
銭形平次捕物控:109 二人浜路
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
手慣
(
てな
)
れたる
強刀
(
ごうとう
)
、何はともあれ、綱を去って
鯉口
(
こいぐち
)
押し拡げておかねば——あたふた家の中へ引っ返しかけたが、万一の場合を思ったか
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「滅相な。」と帳場を
背負
(
しょ
)
って、
立塞
(
たちふさ
)
がる
体
(
てい
)
に腰を掛けた。いや、この時まで、紺の
鯉口
(
こいぐち
)
に手首を
縮
(
すく
)
めて、
案山子
(
かかし
)
のごとく立ったりける。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
この槌の音の主こそ、敵了海に相違あるまいと思った。ひそかに一刀の
鯉口
(
こいぐち
)
を湿しながら、息を潜めて寄り添うた。
恩讐の彼方に
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それを言って、刀を引き寄せ、
鯉口
(
こいぐち
)
を切って見せた。二人の番士はハッと答えて、平伏したまま仰ぎ見もしない。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
案の如く高橋をイナすことができて、めざす清川八郎ただ一人。新徴組の壮士は刀の
鯉口
(
こいぐち
)
を切って駕籠をめがけて一時に飛びかかろうとするのを、土方は
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
よごれた
鯉口
(
こいぐち
)
を着た四十五六の女が奥から出て来たので、半七はずっとはいって直ぐに話しかけた。
半七捕物帳:56 河豚太鼓
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
モヂリ・
鯉口
(
こいぐち
)
・
上
(
うわ
)
っ
張
(
ぱ
)
り、或いはこの頃はやる
割烹着
(
かっぽうぎ
)
の類まで、この作業の
頻々
(
ひんぴん
)
たる変更に、適用せしめようとした発明は数多いが、もともと働かないための着物を
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「それは覚えがある筈だ」と云って彼は刀の
鯉口
(
こいぐち
)
を切った、「支度をしなければこのままゆくぞ」
薊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
母親がそういって大きな声で呼んだので、
越前屋
(
えちぜんや
)
という仕出し屋の若い主人は印の入った襟のかかった
厚子
(
あつし
)
の
鯉口
(
こいぐち
)
を着て三尺を下の方で前結びにしたままのっそりと入って来た。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
やっとのことで
這
(
は
)
いこんできた佐平治のまえへ、傷ついたオオカミのように
兇暴
(
きょうぼう
)
な左近将監の目が、いざといわば真っぷたつ! とばかりに、刀の
鯉口
(
こいぐち
)
切ってにじりよってまいります。
亡霊怪猫屋敷
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
今日は
不漁
(
しけ
)
で代物が少なかったためか、店はもう小魚一匹残らず奇麗に片づいて、
浅葱
(
あさぎ
)
の
鯉口
(
こいぐち
)
を着た若衆はセッセと盤台を洗っていると、小僧は
爼板
(
まないた
)
の上の刺身の
屑
(
くず
)
をペロペロ
摘
(
つま
)
みながら
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
刀をひきよせ
鯉口
(
こいぐち
)
をきッて酒を浴びつづけている。遊女屋も疫病神とあきらめはしても、彼らが浴びるほどの酒を連日はだしきれない。そこで酒の徴発に差しむけられるのが正二郎であった。
明治開化 安吾捕物:09 その八 時計館の秘密
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
孝助は
仮令
(
たとえ
)
如何
(
いか
)
なる
災
(
わざわい
)
があっても、それを恐れて一歩でも
退
(
しりぞ
)
くようでは大事を仕遂げる事は出来ぬと思い、刀に
反
(
そり
)
を打ち、
目釘
(
めくぎ
)
を
湿
(
しめ
)
し、
鯉口
(
こいぐち
)
を切り、用心堅固に身を固め、四方に心を配りて参り
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
しかし、必ずともに、その女髪を見んとて、
鯉口
(
こいぐち
)
三寸、押し拡げるでないぞ。抜かぬ剣、斬らぬ腕、そこが法外流の
要諦
(
ようてい
)
じゃ。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
土蔵脇
(
どぞうわき
)
の小部屋にも、後の
縁端
(
えんばた
)
の左右の部屋にも、ここには、常に七、八名の侍が刀の
鯉口
(
こいぐち
)
に心をとめて坐っているのだった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ハッとして提灯を差向けると、出口を
塞
(
ふさ
)
いだのは、主人の皆川半之丞。いつの間に帰ったか、一刀の
鯉口
(
こいぐち
)
を切って、近寄らば目に物見せん構えです。
銭形平次捕物控:080 捕物仁義
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と紺の
鯉口
(
こいぐち
)
に、おなじ幅広の前掛けした、
痩
(
や
)
せた、色のやや青黒い、陰気だが
律儀
(
りちぎ
)
らしい、まだ三十六七ぐらいな、五分刈りの男が丁寧に
襖際
(
ふすまぎわ
)
に
畏
(
かしこ
)
まった。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
羽織、袴、申し合せたような黒いろずくめの長刀を握りしめて、
鯉口
(
こいぐち
)
こそ切ってはいなかったが、その目には、その顔のうちには、歴然たる殺気がほの見えました。
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
これ家来の無調法を主人が
詫
(
わぶ
)
るならば、
大地
(
だいじ
)
へ両手を突き、
重々
(
じゅう/″\
)
恐れ入ったと
首
(
こうべ
)
を
地
(
つち
)
に叩き着けて
詫
(
わび
)
をするこそ
然
(
しか
)
るべきに、
何
(
なん
)
だ片手に刀の
鯉口
(
こいぐち
)
を切っていながら詫をする
抔
(
など
)
とは侍の法にあるまい
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
小林は脇差の
鯉口
(
こいぐち
)
を切りながら、外の闇へ飛んで出ました。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
殿中では、何の意味もないにしろ、
鯉口
(
こいぐち
)
を三寸
寛
(
くつろ
)
げれば、直ちに当人は切腹、家は
改易
(
かいえき
)
ということに、いわゆる御百個条によって決まっているのである。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
一角だけは、覆面をせずに、野ばかまの
高股
(
たかもも
)
だち。その
側
(
そば
)
にいて、
鯉口
(
こいぐち
)
をつかんでいるのは森啓之助であろう。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
桜庭兵介が
鯉口
(
こいぐち
)
をブッと切ると、八五郎横ッ飛びに五六歩、早くも門の外へ飛出しておりました。
銭形平次捕物控:025 兵糧丸秘聞
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
というように会心そうな
笑
(
え
)
みを見せていましたが、静かに黙山と熊仲の両名をうしろへかばうと、ぷつりと音もなく細身の
鯉口
(
こいぐち
)
を切りながら、威嚇するようにいいました。
右門捕物帖:10 耳のない浪人
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
その
鯉口
(
こいぐち
)
の
両肱
(
りょうひじ
)
を
突張
(
つっぱ
)
り、
手尖
(
てさき
)
を八ツ口へ
突込
(
つっこ
)
んで、
頸
(
うなじ
)
を襟へ、もぞもぞと擦附けながら
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と云いながら刀を側へ引寄せ、親指にて
鯉口
(
こいぐち
)
をプツリと切り
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
相手が、
鯉口
(
こいぐち
)
を切るばかりに用意しているのを見て、おりんはいたずらに騒ぐことの非を悟りましたから、じっと、眼を閉じて相手のなすままにこらえている。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
半分は脅すつもりもあったらしく、黒鞘の
大刀
(
だいとう
)
を横にヒネってプツリ
鯉口
(
こいぐち
)
切
(
き
)
ったところを
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
左手に
大業物
(
おおわざもの
)
蝋色
(
ろういろ
)
の
鞘
(
さや
)
を、ひきめ下げ緒といっしょにむんずとつかんで、おどろいたことには、もうその、小蛇のかま首のようなおや指が、今にも
鯉口
(
こいぐち
)
を切ろうとしているのだ。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
道庵の駕籠を
跟
(
つ
)
ければもっと簡単に曲者の策が解るはずですが、駕籠に付添って来た一人の武士は、下手に駕籠を跟ける者があれば、一刀の下に道庵を刺すつもりらしく、
鯉口
(
こいぐち
)
を切って
銭形平次捕物控:025 兵糧丸秘聞
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それでいて、腰の矢立はここのも同じだが、紺の
鯉口
(
こいぐち
)
に、仲仕とかのするような広い前掛を
捲
(
ま
)
いて、お花見
手拭
(
てぬぐい
)
のように新しいのを
頸
(
えり
)
に掛けた処なぞは、お国がら、まことに大どかなものだったよ。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
文治は油断をしませんでプツリッと長脇差の
鯉口
(
こいぐち
)
を切って
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
『
刃
(
やいば
)
の
鯉口
(
こいぐち
)
を切っても、家名断絶の
掟
(
おきて
)
にはござりますが、まだ、内匠頭の儀は、いかが相成りますやら』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
龍造寺主計
(
りゅうぞうじかずえ
)
は、はや
鯉口
(
こいぐち
)
を押しひろげて、いまにも右手が、
柄
(
つか
)
へ走りそうに見えるのだ。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
蒸芋
(
ふかしいも
)
の湯気の中に、紺の
鯉口
(
こいぐち
)
した女房が、ぬっくりと立って呼ぶ。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
プツリと
鯉口
(
こいぐち
)
を切っております。
銭形平次捕物控:027 幻の民五郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
弦之丞の
挨拶
(
あいさつ
)
、意外にいんぎんであったので、かえって薄気味悪く思ったお十夜と一角とは、ひそかに
鯉口
(
こいぐち
)
を整えて、顔の筋を怖ろしげにこわばらせてしまった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ぷつり、帰雁の
鯉口
(
こいぐち
)
をひろげて、ぴしゃぴしゃ——守人は
飛泥
(
はね
)
を上げて追いすがる。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
来たら——と脇差の
鯉口
(
こいぐち
)
を切って、逃げる先の先まで、微細な工夫をしていたが、こう見まわしたところでは、ひとりとして自分へ向って光って来る眼はなかった。
治郎吉格子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
はっと息づまるなかに、
痙攣
(
けいれん
)
のような
笑
(
え
)
みを浮かべた左膳、しずかにお藤をどかせて、きらめく一眼を源十郎の面上に射ながら、隻手はもう血に餓える乾雲丸の
鯉口
(
こいぐち
)
にかかっていた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
三五兵衛のやつが、まだ充分に寝つかないのだろう。その方は今お稲さんが見に行っているから、皆は、
鯉口
(
こいぐち
)
を切ってじっと鳴りをしずめていることだ。卑怯なまねを
八寒道中
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たとえ誤ちでも、
鯉口
(
こいぐち
)
三寸ひろげれば、大変なことになるのだった。
元禄十三年
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その
鯉口
(
こいぐち
)
の切って走る前に、今の化粧下をそそいだ布が、金吾の顔にふわりと投げられたかと思うと、彼の五体は、力なくよろよろとお粂のささえる腕へもたれて来ました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
辺
(
あた
)
りに、婦人たちのかいがいしい姿がたくさん見えた。ある者は白木綿で髪止めをしている。ある者は紅の
襷
(
たすき
)
をかけ、ある者は
鯉口
(
こいぐち
)
を着て、兵と共に、働いているのである。
日本名婦伝:谷干城夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
革紐の帯をなであげて、
左手
(
ゆんで
)
が、
鯉口
(
こいぐち
)
にふれる。
右手
(
めて
)
が、軽く
柄
(
つか
)
をうつ。
剣の四君子:03 林崎甚助
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして左の片手を太刀の
鯉口
(
こいぐち
)
に忍ばせておく身構えも忘れなかった。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
同時に、ヘンに肩を張って、刀の
鯉口
(
こいぐち
)
などをひねくるのであった。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鯉
漢検準1級
部首:⿂
18画
口
常用漢字
小1
部首:⼝
3画
“鯉口”で始まる語句
鯉口半纏
鯉口下