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隠蔽
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いんぺい
ふりがな文庫
“
隠蔽
(
いんぺい
)” の例文
旧字:
隱蔽
そして詩的精神は
隠蔽
(
いんぺい
)
され、感情は押しつぶされ、詩は全く健全な発育を見ることができなかった。「こうした
暗澹
(
あんたん
)
たる事態の下に」
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
もはや、自分の正体を完全に
隠蔽
(
いんぺい
)
し得たのではあるまいか、とほっとしかけた矢先に、自分は実に意外にも背後から突き刺されました。
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
かくして諸戸は、第一の殺人罪を
隠蔽
(
いんぺい
)
する為に引続いて第二の殺人を犯さねばならなかったと想像することも出来るではないか。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
だのにりっぱな道が尽きて磧に下りついたころには、西南から流れる雲が天壇を
隠蔽
(
いんぺい
)
して湿った風が狭い谷の中を吹き過ぎるようになった。
二つの松川
(新字新仮名)
/
細井吉造
(著)
そうしてまだ粉飾や
媚態
(
びたい
)
によって自然を
隠蔽
(
いんぺい
)
しない
生地
(
きじ
)
の
相貌
(
そうぼう
)
の収集され展観されている場所にしくものはないようである。
自由画稿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
彼の意見によると、もっともおもな原因は、犯罪を
隠蔽
(
いんぺい
)
する物質的の不可能性というよりも、むしろ犯罪者自身の中に含まれているのである。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
雁は岡田に、外套の下に入れて持たせ、跡の二人が左右に並んで、岡田の体を
隠蔽
(
いんぺい
)
して行くが最良の策だと云うのである。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
けれど
下手
(
へた
)
に
隠蔽
(
いんぺい
)
しておいて後日に分るような場合には、自分の落度とならざるを得ないから、一刻も早く徳島城へ帰って、ありのままに上申し
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
全く異る道徳科学である所有権の理論と、応用科学である産業の理論とを混同して、この問題を
隠蔽
(
いんぺい
)
してはならない。
純粋経済学要論:01 上巻
(新字新仮名)
/
マリー・エスプリ・レオン・ワルラス
(著)
この種の犯罪者は、常にこの徹底した利己観念のうえに立っていて、そのうえ自己の犯罪能力と
隠蔽
(
いんぺい
)
の技巧を信ずることすこぶる厚いのを特徴とする。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
ぜんぜん死因を知るに
由
(
よし
)
ないものもあり、遺書をのこす場合にも、元来遺書なるものには非常な修飾や誇張や
隠蔽
(
いんぺい
)
が行われているのが通例であるから
誰が何故彼を殺したか
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
そのとき別の書類が、欄外の鉛筆書きの文字を
隠蔽
(
いんぺい
)
していた。それは偶然か故意か、明らかではない。
断層顔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「事実だ、明らかな事実だ、これは断じて
隠蔽
(
いんぺい
)
すべきことではないぞ」と云って兵部は膝を打った。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
何故
(
なぜ
)
、楠公の遺品などが世に存在していないかと申すと、楠氏滅亡の後は子孫に至るまで世を
憚
(
はばか
)
る場合が多かったので、楠氏伝来の品などは
隠蔽
(
いんぺい
)
したというような訳で
幕末維新懐古談:68 楠公銅像の事
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
そしてあらゆる者がその財産を実現しまたはこれを
隠蔽
(
いんぺい
)
する最も便利な方法として貴金属を所有せんと望む所の異常の場合を除けば、何らの困惑をも蒙らないであろう。
経済学及び課税の諸原理
(新字新仮名)
/
デイヴィッド・リカード
(著)
然
(
しか
)
るに、幸運であつた天気が、忽ちにして雲霧となり、下界をば全く
隠蔽
(
いんぺい
)
してしまつた。
飆々
(
へうへう
)
として流れくる雲霧は
小粒
(
こつぶ
)
の
雨滴
(
うてき
)
となつて車窓の
玻璃
(
はり
)
を
濡
(
ぬ
)
らすやうになつた。
ヴエスヴイオ山
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
この事実の
隠蔽
(
いんぺい
)
によって、異国係としての兄上の板挟みの苦境が、お判りになりませぬか? 母上のなさるような浅墓な企て、幕府とて、目もあれば、耳もござりますぞ。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
態
(
てい
)
よき言葉を用いて
隠蔽
(
いんぺい
)
し、
暗
(
あん
)
に
自慢
(
じまん
)
するごとくに聞こゆるでもあろうが、正直に自白すれば、近来になって僕もゲーテを
尊崇
(
そんすう
)
するの念が、十年前にくらべて増してきた。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
事実を
隠蔽
(
いんぺい
)
してお逢わせしないということもなかろうからという付け加えての言葉であった。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
ジョンドレットの
巣窟
(
そうくつ
)
は、ゴルボー屋敷について前に述べておいた所でわかるとおり、凶猛暗黒な行為の場所となり罪悪を
隠蔽
(
いんぺい
)
する場所となるのに、いかにもふさわしかった。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
長い間の
隠蔽
(
いんぺい
)
の苦しみを忍ぶことも、自分に取っては耐えられなくなって来たと書いた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
代助は父に対する毎に、父は自己を
隠蔽
(
いんぺい
)
する
偽君子
(
ぎくんし
)
か、もしくは分別の足らない愚物か、
何方
(
どっち
)
かでなくてはならない様な気がした。そうして、そう云う気がするのが厭でならなかった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私はちゃんと居処を
知
(
しっ
)
て居る、捜せるなら
試
(
こころ
)
みに捜して見るが
宜
(
い
)
い、捕縛すると云うなら私の力の有らん限り
隠蔽
(
いんぺい
)
して見せよう、出来るだけ摘発して見なさい、
何時
(
いつ
)
まで
経
(
たっ
)
ても無益だ。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
巌はだまった、かれの頭にはふしぎな
疑惑
(
ぎわく
)
が生じた。これがはたしてぼくの父だろうか。わが身の罪を
隠蔽
(
いんぺい
)
するために役場を焼こうとした凶悪な昨夜の行為! それがぼくの父だろうか。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
しかも、亡霊の弟のヴィール氏は、極力この事件を
隠蔽
(
いんぺい
)
しようとした。
世界怪談名作集:07 ヴィール夫人の亡霊
(新字新仮名)
/
ダニエル・デフォー
(著)
滝太郎がその
可恐
(
おそろ
)
しい罪を
隠蔽
(
いんぺい
)
しておく、
温泉
(
ゆ
)
の口の
辺
(
あたり
)
で、精細
式
(
かた
)
のごときモウセンゴケを見着けた目は、やがてまた自分がそこに出没する時、人目のありやなしやを
熟
(
じっ
)
と見定める
眼
(
まなこ
)
であるから
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
自分の存在を
隠蔽
(
いんぺい
)
せんがために
象徴の烏賊
(新字旧仮名)
/
生田春月
(著)
財産
隠蔽
(
いんぺい
)
に大骨折りである。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
だが、維新の廃仏騒ぎには、宮司の機転で、宝物の全部を、紅葉谷の
校倉
(
あぜくら
)
に深く
隠蔽
(
いんぺい
)
して、あの全国的な災害から、危うくのがれたものだとある。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この場合、大胆に曝露することが、
徒
(
いたず
)
らに
隠蔽
(
いんぺい
)
するよりも、却って安全であることを、彼はよく知っていたのだ。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「愛」の美名に依って、
卑猥感
(
ひわいかん
)
を
隠蔽
(
いんぺい
)
せんとたくらんでいるのではなかろうかとさえ思われるのである。
チャンス
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
何か己とあの男と秘密を共有していて、それを同心
戮力
(
りくりょく
)
して
隠蔽
(
いんぺい
)
している筈だというような態度を取って来る。そして一日の
消遣策
(
しょうけんさく
)
を二つ三つ立てて己の採択に任せる。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
たとえばまた自分の専攻のテーマに関する
瑣末
(
さまつ
)
な発見が学界を
震駭
(
しんがい
)
させる大業績に思われたりする。しかし、人が見ればこれらの「
須弥山
(
しゅみせん
)
」は一粒の
芥子粒
(
けしつぶ
)
で
隠蔽
(
いんぺい
)
される。
自由画稿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それどころか、君方は暴力で刑事事件を
隠蔽
(
いんぺい
)
したかどで、法の前に答えなけりゃなりませんぞ。女泥棒の犯行は立派に暴露されてるんだから、わたしはどこまでも追及する。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
その罪を
隠蔽
(
いんぺい
)
するために重ねて罪を犯す、……初めに犯した罪をつぐなう勇気のない者は、必ず次ぎ次ぎと、段々に重く、大きな罪を重ねてゆく、そこに弱い人間の悲しさがあるんだ
はたし状
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
しかも裏といえばきっとなにか
穢
(
きたな
)
い物なり悪き物なりを
隠蔽
(
いんぺい
)
してあるものとみなす。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
代助は父に対する
毎
(
ごと
)
に、
父
(
ちゝ
)
は自己を
隠蔽
(
いんぺい
)
する
偽君子
(
ぎくんし
)
か、もしくは分別の足らない
愚物
(
ぐぶつ
)
か、
何方
(
どつち
)
かでなくてはならない様な気がした。さうして、
左
(
さ
)
う云ふ気がするのが
厭
(
いや
)
でならなかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
実際の戦線を一部切り離してきたように、
塹壕
(
ざんごう
)
、鉄条網、砲丸の
穿
(
うが
)
った大地穴、機関銃
隠蔽
(
いんぺい
)
地物、その他、小丘、立樹、河沼、小独立家屋など、実物どおりにそっくりできあがっている。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
そしてこのニヒリスティックな人生観から、社会のあらゆる道義観や風俗に
挑戦
(
ちょうせん
)
し、故意に人生の醜悪を描き、人間性の本能を高調し、
隠蔽
(
いんぺい
)
されたものを引っぺがし、性の実感的
卑猥
(
ひわい
)
を書き散らした。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
やがて裁判長は被告に向かいて二、三の訊問ありけるのち、弁護士は渠の
冤
(
えん
)
を
雪
(
すす
)
がんために、
滔々
(
とうとう
)
数千言を
陳
(
つら
)
ねて、ほとんど余すところあらざりき。裁判長は事実を
隠蔽
(
いんぺい
)
せざらんように白糸を
諭
(
さと
)
せり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かくして例の事件は、
盲点
(
もうてん
)
に巧みに
隠蔽
(
いんぺい
)
せられることとなった。
柿色の紙風船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
善後の処置は、この
家
(
うち
)
の主人である私が、どうともするから、あなた方は一応部屋に引取ってくれ、そして、余り騒がない様にしてくれと、主人はあくまで
隠蔽
(
いんぺい
)
主義でありました。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
色彩と第三の空間次元を取り去ったスクリーンの上の平面影像は、事象により多くの客観性を付与し、そのおかげで、現場では
隠蔽
(
いんぺい
)
されるような認識能力の活動を可能にするからである。
ニュース映画と新聞記事
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「——医が仁術だなどというのは、
金儲
(
かねもう
)
けめあての
藪
(
やぶ
)
医者、門戸を飾って薬礼稼ぎを専門にする、
似而非
(
えせ
)
医者どものたわ言だ、かれらが不当に儲けることを
隠蔽
(
いんぺい
)
するために使うたわ言だ」
赤ひげ診療譚:08 氷の下の芽
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そこには、彼が剣山で手に入れた秘帖、
世阿弥
(
よあみ
)
の血書が
隠蔽
(
いんぺい
)
してある。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
明智の不自然な顔面
隠蔽
(
いんぺい
)
が殊更ら目立たなかったこと、等、等、等。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
隠
常用漢字
中学
部首:⾩
14画
蔽
常用漢字
中学
部首:⾋
15画
“隠”で始まる語句
隠
隠匿
隠岐
隠密
隠袋
隠家
隠居
隠遁
隠棲
隠栖