つい)” の例文
と云うので、私も物珍らしい顔をして後からついて歩いた。その時まで、私は甚助って云う百姓の家はどれだか知らなかった。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
何か見物に出掛けようとすると、必ず御目附方おめつけがた下役したやくが附いて行かなければならぬと云う御定おさだまりで始終ついまわる。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
僕少年の頃枕山並に毅堂などのツぽについて東叡山あたりの詩会に赴きし頃毅堂程の貧乏人はなかりしかど、後には大層工面をよくしたるものと見えたり。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
御当家おうちへ迷惑はかけないから、帰るまでああして蔵匿かくまって置いて下さらないか、衣服きものに血がついてたり、おどおどしている処を見ると、邪慳じゃけんしゅうとめにいびられる嫁か。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おもて入口いりくちには焦茶地こげちやぢ白抜しろぬきで「せじや」と仮名かなあらは山形やまがたに口といふ字がしるしついところ主人あるじはたらきで、世辞せじあきなふのだから主人あるじ莞爾にこやかな顔、番頭ばんとうあいくるしく
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
実はこの時までは天井裏から覗いておりました正木博士にもサッパリ見当がついておりませんでしたので……恐らく諸君とても御同様であろうと思います……が……。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
奥様が「坊はわたしがとこの側についていて上ればおんなじじゃないか」とおっしゃったのを
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
こう気がついて見ると文三は幾分かうらみが晴れた。叔母がそう憎くはなくなった、イヤむしろ叔母に対して気の毒に成ッて来た。文三の今我こんが故吾こごでない、シカシお政の故吾も今我でない。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
すると、箱のふたがひとりでにヒョイと明いて中から子供が飛出しました。首も手も足もちゃんとついていて、怪我けが一つしていない子供が、ニコニコ笑いながら、みんなの前に立ちました。
梨の実 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
しかし上等な場所と申しても、三日も四日も大雨が降り続いて大水が出て岩についている硅藻を押し流してしまうとその後五、六日間にれた鮎はに飢ているから味が悪うございます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
言込は何より安き事ながらたゞ云々これ/\と言許りで向うの名さへもしらざる所へ突然いきなりゆきても話し難しえうこそあれとかんがへしが漸々やう/\思ひ附事ありて明日とく起出おきいで音羽の方へ至るについては案内者に和吉を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
拭きながら帰り来りすぐに以前の詰所に入り「オヤ大鞆は、フム彼奴何か思いついて何所かへ行たと見えるな」云いつゝ先ず手帳紙入などつかみ出して卓子ていぶるに置き其上へ羽織を脱ぎ其又上へ帽子を
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
供の者も大勢ついて居る様子、問わずと知れた攘夷の一類と推察して気味が悪い、終夜ろくに寝もせず、夜の明ける前に早々宿屋を駈出かけだしてコソ/\逃げたことがある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ズツと頭巾ずきんを取るととしころは廿五六にもなりませうか、色の浅黒あさぐろい髪の毛の光沢つやいちよいと銀杏返いてふがへしにひまして、京縮緬きやうちりめん小紋織こもんおり衣類いるゐうへには黒縮緬くろちりめんの小さいもんつい羽織はおり
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
それで無ければ第一又老人の左の手に血のついて居たのが分ら無くなッて来ます
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
父は南向みなみむきの二階座敷を下からながめて、ガラス障子の穴に気のついたものと見え
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
り店へ來りてお光さんに癲癇てんかんがあると言たる醫師いしや年齡としごろ云々しか/″\にて又面體めんてい箇樣々々かやう/\然も羽織はおりにはまるの中に桔梗ききやうもんついてゐたと申に因て日頃より見知る山田元益に面體めんてい恰好かつかうばかりでなく羽織はおりもんも相違なければ確に夫とお光さんに話しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
禁酒から煙草又私は酒のめに生涯の大損おおぞんをして、その損害は今日までも身について居ると云うその次第は、緒方おがたの塾に学問修業しながら兎角とかく酒をのんいことは少しもない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
友「どう云う訳だってお村はスッパリ大伴の襟について、百両が三百両になった」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
開き「谷間田、何うしたぼ見当がついたかえ」とて入来るは此事件を監督する荻沢おぎさわ警部なり谷間田は悪事でも見附られしが如く忽ち椅子より飛退とびのきて「ヘイヘイ凡そ見当は附きました是からすぐに探りを ...
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)