しづ)” の例文
新字:
若しわが説くところ汝のうゑしづめずば、汝ベアトリーチェを見るべし、さらば彼は汝のために全くこれらの疑ひを解かむ 七六—七八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
年表には「東風にて西神田町一圓に類燒し、又北風になりて、本銀町ほんしろかねちやう本町ほんちやう石町こくちやう駿河町するがちやう室町むろまちの邊に至り、夜下刻げこくしづまる」
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「あなたに水を何處で汲んで來て上げられるか、教へて下さい。」セント・ジョンが云ふ、「本當に氣をしづめなくつちやいけません。」
それに主人新三郎の遠縁に當る美しい中年増のお吉、外に下女やら庭掃にははきやら、ほんの五六人がなりをしづめて、主人夫婦の歸りを待つて居りました。
しかし、夫人ふじんしづめて、ちかくにゐる同志どうし婦人達ふじんたちあつめた。近所きんじよから醫師いして、かく應急手當おふきふてあてほどこされた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
斯迄かくまでに取立し事やと存じ仰天ぎやうてんは仕つり候へども萬一荒立あらだてに成らんかと心をしづめ其後機を見合せ意見いけん致し候へども勿々なか/\以て用いひまじき樣子やうすに付兎に角事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
新築しんちくいへんで、屋敷やしきのわるいたましひしづをんなが、きつけたたまを、いまらしてゐることよ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
物狂ほしく力をめて我ひぢを握り、あやしく抑へしづめたる聲して、アントニオ、われは卑しき兇行者たらんを嫌へり、然らずば直ちに此劍もて汝が僞多き胸を刺すならん
前達まへたち荒神くわうじんさまをつてませう。ほら、臺所だいどころかまどうへまつかみさまのことを荒神くわうじんさまとひませう。あゝしてしづめるかみさまばかりでなく、とうさんの田舍ゐなかでは種々いろ/\なものをまつりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さわぐな、おのれ——しづまれ、しづまれ。」とつてすやうであつた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
見よ、長城の嶮にして八達嶺は雲しづむ。
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
是においてか、我を知ることわがごとくなりし淑女、わが亂るゝ魂をしづめんとて、我の未だ問はざるさきに口をひらき 八五—八七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そしてこゝの主人によつてもそれを逐ひ拂ふこともしづめることも出來ないのはどんな犯罪であらうか——眞夜半うしみつ時分に、あるときは火事となり
明日は殿樣江戸表出立といふ騷ぎ、邸内は宵までごつた返して、亥刻よつ半頃からは、その反動でピタリとしづまります。
しづめて御聞あれその市之丞とやらが家主の名も知れずことに當人の名前なまへ住居ぢうきよしらずとは是怪しき證據の第一なり廿五兩といふ大金を受取うけとりながら其人の名前住所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
既にして波上の鳥と波底の魚と、一齊にしづまり、鷲の翼の水面みのもおほふこと蓮葉はちすはの如くなりき。
新室にひむろしづが 手玉ただまらすも。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
しづまらせ
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
語れる者の誰なるをみんとのわが願ひを、顏を合すにあらざれば絶えてしづまることなきばかり深くせしかど 四九—五一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
私は彼の犬がそこで寢てゐるのを、朝になつてよく見たものだ。さう思ひ付くといくらか氣がしづまつて横になつた。四邊あたりがしんとすると神經も落着く。
下女の上ずつた聲が、次の間から響くと、恐ろしい豫感に、騷ぎは水をぶつ掛けたやうにしづまりました。
さてまたこゝ武州ぶしう熊谷堤くまがいづつみはづれに寶珠花屋はうじゆばなや八五郎と云居酒屋あり亭主八五郎は此邊の口利くちきゝにて喧嘩けんくわ或ひは出入等之ある時はいつあつかひに這入はひりては其騷動そのさうどうしづめけるにかれが云事は皆是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
汐風しほかぜりやうを吹きて、呼吸漸くしづまり、彼方の岸に登りしときは、心も頗るおちゐたり。
すゑしづ
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
子よ汝はこれをこの光(我このうちにて汝に物言ふ)のなかにてしづめぬ、こはかく高く飛ばしめんため羽を汝に着せし淑女の恩惠めぐみによれり 五二—五四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「女の子も四十幾つとなれば、抱附きばえもしないよ。まア、氣をしづめて親分の話を聽くが宜い」
兄弟よ、愛の徳われらのこゝろしづめ、我等をしてわれらのつ物をのみ望みて他の物にかわくなからしむ 七〇—七二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
しづまり返つた隅田川の夜氣を亂して、船の中には、一しゆん氣違ひ染みた旋風せんぷうが捲き起つたのです。
「おしづまり下さい、——私は無事でございます。藤屋彌太郎はこの通り無事に生きて居ります」
福井町の加納屋は、なりしづめて嚴重な板塀の中に閉ぢ籠つたやうな家でした。時刻はまだ思ひの外早くて、辰刻半いつゝはん(九時)頃の秋の陽が、その外廓を物々しく照らして居ります。
それは兎も角として、春木町の綱田屋の騷ぎは、それつきりなりをしづめてしまひました。
「それから外へ飛び出して心をしづめ、家の中が騷ぎ始めて、醫者の驅けつるのを見極め、主人が間違ひもなく死んだと判つた頃、もう大丈夫と素知らぬ顏で歸つて來たに違ひあるまい」
見よげなあはせに着換へさせ、頬を撫でたり、襟を直したり、髮を掻き上げたりしてゐる二人の年増女、——娘の死のよそほひに餘念もなくひたりきつて、悲しみの底にしづまり返つて居た二人の女が
「甚助野郎はしづまつたのか」