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錯綜
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さくそう
ふりがな文庫
“
錯綜
(
さくそう
)” の例文
しかし
黒人
(
くろうと
)
になればたぶんただ一面のちゃぶ台、一握りの卓布の面の上にでもやはりこれだけの色彩の
錯綜
(
さくそう
)
が認められるのであろう。
写生紀行
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そうして
仔細
(
しさい
)
にその
錯綜
(
さくそう
)
の跡を検すれば、二語は久しく併存し、その択一は単なる小区域の流行であったことが知れるからである。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それよりも何層倍か
錯綜
(
さくそう
)
した、また何層倍か濃厚な模様を、縦横に織り拡げている、海のような場内へ、ひょっこり顔を出した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
(修学第一期中に列ねたる条項は思ひつくままに記したるを以て、前後
錯綜
(
さくそう
)
重複
(
ちょうふく
)
あるを免れず、読者請ふこれを諒せよ)
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
はや此辺は
叛乱地
(
はんらんち
)
で、地理は山あり水あって一寸
錯綜
(
さくそう
)
し、処々に大崎氏の諸将等が以前
拠
(
よ
)
って居た小城が有るのだった。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
少くとも万有が
錯綜
(
さくそう
)
した知覚関係に置かれているものと信じさせられている。感応が行われねば世界は死滅である。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
どこかで
錯綜
(
さくそう
)
して居るのだが、その結び目が見つからないのだ。先刻も女を射てとは言わなかった。逃亡の最初から何かしら狂っているのではないか。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
由来この地方は、
牢固
(
ろうこ
)
たる門徒勢力が
錯綜
(
さくそう
)
していて、家康も手をやき、信長さえも散々手こずった難治の地である。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
野次馬らは目を上げて見よ。偉人も一編の劇も、すべては雑然と
錯綜
(
さくそう
)
している。しかしああそれはあまりに度を越している。そしてまた不十分である。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
靄の中に
錯綜
(
さくそう
)
する
微
(
かす
)
かな雑音が、身辺の危険区域まで近づいてきては遠ざかり、遠ざかってはまた脅かすように羅のすぐ裏まで忍び寄ってくるのだった。
猟奇の街
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
これらが
錯綜
(
さくそう
)
し複合しながら、政党結成の要因として作用しているのであって、既に指摘した政治的対立の諸要因が、その中に組織化されているのである。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
当時の京都には
越前
(
えちぜん
)
も手を引き、
薩摩
(
さつま
)
も沈黙し、ただ長州の活動に任せてあったようであるが、その実、幾多の勢力の
錯綜
(
さくそう
)
していたことを忘れてはならない。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
美は
迂廻
(
うかい
)
と
錯綜
(
さくそう
)
とを要求しない。加工し工夫するなら生命は失せるであろう。丹念とか精密とかいうことは技巧上のことであってただちに美のことではない。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
女
(
をんな
)
は
研桶
(
とぎをけ
)
と
唄
(
うた
)
との二つの
聲
(
こゑ
)
が
錯綜
(
さくそう
)
しつゝある
間
(
あひだ
)
にも
木陰
(
こかげ
)
に
佇
(
たゝず
)
む
男
(
をとこ
)
のけはひを
悟
(
さと
)
る
程
(
ほど
)
耳
(
みゝ
)
の
神經
(
しんけい
)
が
興奮
(
こうふん
)
して
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
艇庫と土堤と応援船とから「文科あ! 農科あ! 樺あ! 紫い!」などと言う声が
錯綜
(
さくそう
)
して起った。審判艇は二つの艇を曳いて発足点へ向った。漕手は皆艇の中へ寝ていた。
競漕
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
それはね、『
盤根の沼
(
パルス・ラディコスス
)
』というのは、
錯綜
(
さくそう
)
たる根の沼だ。沼が盤根錯綜たる、叢林のしたにあるという意味だ。それから『
知られざる森の墓場
(
セブルクルム・ルクジ
)
』というのは、巨獣の
終焉地
(
しゅうえんち
)
だ。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
だが、そのかわり今度は更に
錯綜
(
さくそう
)
した視線の下に彼は
剥出
(
むきだ
)
しで
晒
(
さら
)
されるのであった。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
その
錯綜
(
さくそう
)
した美にたいする熱情的な献身にあらわれているし、また一方では、幾度もくりかえされた
莫大
(
ばくだい
)
な、しかし人目にたたぬ慈善行為にあらわれている、ということは知っていた。
アッシャー家の崩壊
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
無遠慮な
賤
(
いや
)
しい快楽、醜悪や
貪欲
(
どんよく
)
や肉体的欠陥などの喜び、半裸体の人々、兵卒小屋の冗談、
羹物
(
あつもの
)
や赤
胡椒
(
こしょう
)
や油の乗った肉や特別室——ふざけきった四幕のあとで、事件の
錯綜
(
さくそう
)
によって
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
一段と
濃
(
こまや
)
かに、真剣になって行ったので、その
逢
(
お
)
う
瀬
(
せ
)
も繁く、彼等が
夢現
(
ゆめうつつ
)
の恋に酔うことが烈しければ烈しい程、随って柾木が、あの歯ぎしりする様な、苦痛と快楽の
錯綜
(
さくそう
)
境にさまよう事も
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかも今、
混沌
(
こんとん
)
と
錯綜
(
さくそう
)
とをきわめた現代の世界像を前にして、その内に、必要なものを検出する眼の光は、われわれの無言の魂以外にないではないか。愚かな日本は、明日を信じている…………
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
所謂
(
いはゆる
)
『教時問答』『菩提心義』『悉曇蔵』『大悉曇草』等なり、その『教時問答』は一仏一処一教を立て、三世十方一切仏教を判摂す、顕密を
錯綜
(
さくそう
)
し、諸宗を
泛淙
(
はんそう
)
す、台密の者、法を之に取る
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そうしたときでも、いつもあなたには逢いたいような、逢いたくないような気持が、
例
(
たと
)
えば、『逢わぬは逢うにいやまさる』といった
都々逸
(
どどいつ
)
の文句のように
錯綜
(
さくそう
)
して、あなたを
慕
(
した
)
っていたのです。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
勿論
(
もちろん
)
進歩を愛するけれども、上述の如く水に漂う
蓴菜
(
じゅんさい
)
の一葉も、これを引けば
千根万根
(
せんこんばんこん
)
錯綜
(
さくそう
)
して至るにも似たる長き連鎖の中に在るものであるから、およそ
如何
(
いか
)
なる制度、文物、倫理、道徳、風俗
現代の婦人に告ぐ
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
口笛をふけ
陽
(
ひ
)
の
錯綜
(
さくそう
)
『春と修羅』
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
これがむつかしく解しにくいもののように感じられたのは、その数量と新旧の
錯綜
(
さくそう
)
、及び用法の変化の複雑さに基いた一種の
眩惑
(
げんわく
)
であった。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
私の見るところによると職業の分化
錯綜
(
さくそう
)
から我々の受ける影響は種々ありましょうが、そのうちに見逃す事のできない一種妙な者があります。
道楽と職業
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この光景の映写の間にこれと
相
(
あい
)
錯綜
(
さくそう
)
して、それらの爆撃機自身に固定されたカメラから撮影された四辺の目まぐるしい光景が映出されるのである。
からすうりの花と蛾
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
敵を客戦の地に置いて疲れさせ、吾が兵の他から帰り来るを待たうと、将門は
見兵
(
けんぺい
)
四百を率ゐて、例の飯沼のほとり、地勢の
錯綜
(
さくそう
)
したところに隠れた。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
太陽の
下
(
もと
)
、ことに
埠頭
(
ふとう
)
、
船渠
(
ドック
)
、荷馬車、お茶場工場などの、騒音と
埃
(
ほこり
)
と人間の
奔影
(
ほんえい
)
とが
錯綜
(
さくそう
)
と織られている
横浜
(
はま
)
の十字街を、ゆうべの
芸妓
(
おんな
)
や、
雛妓
(
おしゃく
)
を引っぱって
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
俄
(
にわ
)
かに電報量が多くなった。作戦特別緊急電報ばかりである。報告や通報や、各部隊に対する命令電波が、日本中に
錯綜
(
さくそう
)
しているらしかった。船団は明かに東京方面を目指していた。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
錯綜
(
さくそう
)
と配慮との重荷に悩む時、残るものは単に驚くべき技巧の跡に過ぎないではないか。そうしてそれが生命を殺さなかった場合がどれだけあろう。だが技巧のことすなわち美のことではない。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
ただ枯れた幹をおとした
旧根樹
(
ニティルダ・アンティクス
)
の、
錯綜
(
さくそう
)
の根がゆらぐ間にみえるのだ。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
これらの事実の関係ははなはだ
錯綜
(
さくそう
)
していて、考えても考えても、考えが隠れん坊をして結局わからなくなるのである。
Liber Studiorum
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
指頭
(
しとう
)
に触れるピンピンいう音が、秒を刻む
袂時計
(
たもとどけい
)
の音と
錯綜
(
さくそう
)
して、彼の耳に異様な節奏を伝えた。それでも彼は我慢して、するだけの仕事を外でした。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
生活利害の最も
錯綜
(
さくそう
)
した、言わば日本の見本のような地方であるのに、外から訪う者ばかりか内にいる人まで、これを万葉遺物の包含層ででもあるかのごとく
和州地名談
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
癆咳の女の姿と、食慾をそそる筍飯の香りを、頭の中に
錯綜
(
さくそう
)
させながら、源内はサラサラと後をつけた。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何にせよ決してたゞ
一条
(
ひとすぢ
)
の事ではあるまい、可なり
錯綜
(
さくそう
)
した事情が無ければならぬ。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
平たく言えば早すぎるのやおそすぎるのがいろいろに
錯綜
(
さくそう
)
交代
(
こうたい
)
して来るわけである。それにかかわらず平均の間隔はやはりTである事はもちろんである。
電車の混雑について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
今日
(
きょう
)
田口での
獲物
(
えもの
)
は松本という名前だけであるが、この名前がいろいろに
錯綜
(
さくそう
)
した事実を自分のために
締
(
し
)
め
括
(
くく
)
っている妙な
嚢
(
ふくろ
)
のように彼には思えるので
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それから自然と相客の
贔負
(
ひいき
)
贔負が有るから、右方贔負の人々をば右方へ揃え、左方贔負の人々を左方へ揃えて坐らせる仕方もあれば、これを左右
錯綜
(
さくそう
)
させて坐らせる坐らせ方も有る訳で
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
できるだけ
気儘
(
きまま
)
に勢力を費したいと云う娯楽の方面、これが経となり緯となり千変万化
錯綜
(
さくそう
)
して現今のように混乱した開化と云う不可思議な現象ができるのであります。
現代日本の開化
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それが実に
呼吸
(
いき
)
をつく間もない短時間に交互
錯綜
(
さくそう
)
してスクリーンの上に現滅するのである。
映画雑感(Ⅳ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それからまたその「植物の」というだけがある他のプロフェッサーからその美しい夫人それから他の婦人患者といったふうにいろいろの
錯綜
(
さくそう
)
した因果の網目につながっている。
連句雑俎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ある期間だけ継続する週期的現象の群が濫発的に
錯綜
(
さくそう
)
して起る時がそうである。
厄年と etc.
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
このようにして、前句と後句とは言わばそれぞれが
錯綜
(
さくそう
)
した網の二つの結び目のようなものである。また、水上に浮かぶ二つの浮き草の花が水中に隠れた根によって連絡されているようなものである。
連句雑俎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
“錯綜”の意味
《名詞》
錯 綜(さくそう)
物事が複雑に入り組むこと。
(出典:Wiktionary)
錯
常用漢字
中学
部首:⾦
16画
綜
漢検準1級
部首:⽷
14画
“錯綜”で始まる語句
錯綜紛糾
錯綜纏綿