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い
〔評〕兵を
治して
對抗し、互に
勝敗あり。兵士或は
負傷者の
状を爲す、
醫故に之を
診察す。兵士初め負傷者とならんことを惡む。
彼の
老躯は
日毎に
空腹から
來る
疲勞を
醫する
爲に
食料を
攝取する
僅な
滿足が
其の
度毎に
目先の
知れてる
彼を
拉して
其の
行く
可き
處に
導いて
居るのである。
資本に初めし
醫者家業傷寒論は
讀ねども
醫は
位なりとて
衣服で
驚かし馬鹿にて付る藥
迄舌三寸の
匙加減でやつて
退たる御醫者樣も
斯う成ては
長棒の
駕より
命を
キヤツと
叫びて
倒るゝを、
見向きもやらず
通りしは、
優にやさしき
人の、
黄楊の
櫛を
唇に
銜へしなり。うらぶれし
良家の
女の、
父の
病氣なるに、
夜半に
醫を
乞へる
道なりけり。
其後數年間は
春夏の
際折々行ふに
過ぎざりしが、二十五六
歳の
頃醫を
以て
身を
立つるに
及び、
日夜奔走の
際頭痛甚しき
時は
臥床に
就きし
事屡なりしが、
其際には
頭部を
冷水を
以て
冷却し
首として並居る一同
母親のお勝も
偖は其の醫師は元益なりしかと計りに
呆れて
顏を見合せゐたりぬ
忠相ぬしは呼び出せし和吉に
言葉はあらずして
元益の方へ打向ひ其方
最前も申す通り
醫は
仁術を
も
欺き
課せんとする程の
大膽不敵なれば間もなく
見樣見眞似にて
風藥の葛根湯位は
易々と
調合する樣に成ける程に武田長生院も
下男にも
珍しき
奴なれど
扨心の
寛せぬ勤め振と
流石に老醫常々
親戚の者へ語られしとぞ作藏の
僅か三年
越の奉公中に
醫の道を