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數年間
其後數年間は
春夏の
際折々行ふに
過ぎざりしが、二十五六
歳の
頃醫を
以て
身を
立つるに
及び、
日夜奔走の
際頭痛甚しき
時は
臥床に
就きし
事屡なりしが、
其際には
頭部を
冷水を
以て
冷却し
稀にも
人の
來べき
筈のない
此樣な
離れ
島へ、
偶然とはいへ、
昔馴染の
君の
見へたのは、
全く
天の
導のやうなもので、
之から
數年間、
同じ
家に、
同じ
月を
眺めて
暮すやうな
運命になつたのも
プシキンは
死に
先つて
非常に
苦痛を
感じ、
不幸なるハイネは
數年間中風に
罹つて
臥してゐた。して
見れば
原始蟲の
如き
我々に、
切て
苦難てふものが
無かつたならば、
全く
含蓄の
無い
生活となつて
了ふ。