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遁世
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とんせい
ふりがな文庫
“
遁世
(
とんせい
)” の例文
ふしぎである。自分の
遁世
(
とんせい
)
も、自分できり
拓
(
ひら
)
いて来たつもりでいたが、やはり運命に吹き舞わされつつこう生きている一片の生命なのか。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
講師が宮の御
遁世
(
とんせい
)
を
讃美
(
さんび
)
して、この世におけるすぐれた栄華をなお盛りの日にお捨てになり、永久の縁を仏にお結びになったということを
源氏物語:38 鈴虫
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「八五郎に出家
遁世
(
とんせい
)
されると、俺も困るし、差當りあの
娘
(
こ
)
が泣くだらう。人助けのため阿倍川町へ出かけて見るとしようか」
銭形平次捕物控:253 猫の首環
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
まったく
誰
(
だれ
)
にも興味が無いのだ。ただ、うるさいだけだ。なんの苦も無くこのまま出家
遁世
(
とんせい
)
できる気持だ。人生には、不思議な朝もあるものだ。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そしてこの修道院への
遁世
(
とんせい
)
のうちには一の抗議が潜んでいるからして——女の修道院は、確かにある荘厳さを有している。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
いわゆる
神釈
(
じんしゃく
)
の句の中でも、人が尊重していた
遁世
(
とんせい
)
の味、たとえば「
道心
(
どうしん
)
の起りは花の
蕾
(
つぼ
)
む時」といったような、髪を
剃
(
そ
)
る前後の複雑した感覚
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「ああ、世の中がうるそうなった。わしもお
暇
(
いとま
)
を願うて、いっそ出家
遁世
(
とんせい
)
しようか」と、忠通はまた溜息をついた。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
道柏が暫く思案して進み出た。「若しさやうに
御極
(
おきめ
)
なされたら、家老一同
遁世
(
とんせい
)
仕つたでござりませう」と云つた。正虎が「一同それに相違はないか」と云つた。
栗山大膳
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「いまいましくても、
遁世
(
とんせい
)
の実行家だね。あれだけの生活は
加特利教徒
(
かとりっくきょうと
)
の労働者なんかでは出来ないよ」
遍路
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
「大名の若殿でもなし、大身の子でもないけれど、
遁世
(
とんせい
)
して来たということは、貴女の推察どおりです」
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
とにかく全巻を通じて無常を説き
遁世
(
とんせい
)
をすすめ
生死
(
しょうじ
)
の一大事を覚悟すべしと説いたものが甚だ多い。
徒然草の鑑賞
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
作阿弥という
御仁
(
ごじん
)
があったが、いつからともなく
遁世
(
とんせい
)
なされて、そのもっとも得意とする馬の木彫りも、もはや見られずなったとは、ま、誰でも知っておるところで……
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
凡
(
およ
)
そこの種の人は
遁世
(
とんせい
)
出家
(
しゅっけ
)
して死者の
菩提
(
ぼだい
)
を
弔
(
とむら
)
うの例もあれども、今の世間の風潮にて
出家
(
しゅっけ
)
落飾
(
らくしょく
)
も
不似合
(
ふにあい
)
とならば、ただその身を社会の
暗処
(
あんしょ
)
に
隠
(
かく
)
してその生活を
質素
(
しっそ
)
にし
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
盡
(
つく
)
させ
度
(
たく
)
私
(
わたく
)
しは
出家
(
しゆつけ
)
遁世
(
とんせい
)
の
身
(
み
)
故
(
ゆゑ
)
母や弟を
助
(
たす
)
け候事なれば
身命
(
しんめい
)
を
捨
(
すて
)
候ても
救
(
すく
)
はんと
存
(
ぞん
)
じ其盜賊なりと申
僞
(
いつは
)
り候其夜全くの盜賊は
迯去
(
にげさり
)
たり
其譯
(
そのわけ
)
は私事
母
(
はゝ
)
や弟を
尋
(
たづね
)
んと所々方々を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
おたがいの心の持ちようによっては俗界の中心にあってもほとんど
遁世
(
とんせい
)
のごとき心境がたもてると思う。われわれにその心がけさえあればいかなる
境遇
(
きょうぐう
)
にあっても
平旦
(
へいたん
)
の気を養う機会のなきはない。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
小松殿
眉
(
まゆ
)
を顰め、『何事ぞ』と問ひ給えば、茂頼は無念の顏色にて、『
愚息
(
ぐそく
)
時頼』、と言ひさして涙をはらはらと流せば、重景は傍らより膝を進め、『時頼殿に何事の候ひしぞ』。『
遁世
(
とんせい
)
致して候』。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
雑炊
(
ぞうすい
)
をこのみしゆゑに
遁世
(
とんせい
)
し
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
西山の黒谷に
遁世
(
とんせい
)
して名を法然房と
称
(
とな
)
えたのは実に彼が十八歳の時であったから、その機縁からいえば上人のこの黒谷や吉水附近の土地とは
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
御息所
(
みやすどころ
)
の
忌
(
いみ
)
がもう済んだだろうね。時はずんずんとたつからね。私が
遁世
(
とんせい
)
の望みを持ち始めた時からももう三十年たっている。味気ないことだ。
源氏物語:40 夕霧二
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
井伏
鱒二
(
ますじ
)
、中谷孝雄、いまさら出家
遁世
(
とんせい
)
もかなわず、なお都の塵中にもがき
喘
(
あえ
)
いでいる姿を思うと、——いやこれは対岸の火事どころの話でない。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
樵夫
(
きこり
)
の家に飼ってある青い鳥は顧みられなくなって、余所に青い鳥を求めることになったのだね。僕の考では、仏教の
遁世
(
とんせい
)
も基督教の遁世も同じ事になるのだ。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
『いまいましくても、
遁世
(
とんせい
)
の実行家だね。あれだけの生活は
加特利
(
カトリツク
)
教徒の労働者なんかでは出来ないよ』
遍路
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
尾井幾兵衛となのる侍は、こう云ってそこへ
片膝
(
かたひざ
)
をついた。長威斎は
遁世
(
とんせい
)
しているのであった。俗世と縁を切ったので、自分が長威斎である、と云う筈はなかった。
似而非物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「あれ、大層感じちやつたね、出家
遁世
(
とんせい
)
でもする氣になると、二三人泣く娘があるぜ」
銭形平次捕物控:255 月待ち
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
命さえ助かれば出家
遁世
(
とんせい
)
の上一生
菩提
(
ぼだい
)
をとむらって暮します。どうぞお願いいたします
現代語訳 平家物語:02 第二巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
従って生活の全く単調であった前代の
田舎
(
いなか
)
には、存外に跡の少しも残らぬ
遁世
(
とんせい
)
が多かったはずで、後世の我々にこそこれは珍しいが、じつは昔は普通の生存の一様式であったと思う。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
また自然の野山に黙って咲く草木の花のように、ありとあらゆる美しい事、
善
(
よ
)
い事が併立して行かれないからと言って、そのためにこの世をはかなんで
遁世
(
とんせい
)
の志をいだくというわけでもない。
神田を散歩して
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それらが彼の心のうちに脱俗
遁世
(
とんせい
)
の考えを起こさしたのであろうか。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
まろめ、いつの日か、ふたたび出て来いとお召がかかるまでは、きっと
遁世
(
とんせい
)
をよそおってよき日をお待ち申しておりまする
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
宮はこのまま小野の山荘で
遁世
(
とんせい
)
の身になっておしまいになる志望がおありになったのであるが、
御寺
(
みてら
)
の院にこのことをお報じ申し上げた人があって
源氏物語:40 夕霧二
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
いや
味
(
み
)
を申し上げているのではありません。眼夢、かくの
如
(
ごと
)
く、いまはつくづく無分別の出家
遁世
(
とんせい
)
を後悔いたし、冬の吉野の
庵室
(
あんしつ
)
に寒さに震えて
坐
(
すわ
)
って居ります。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
つまり
遁世
(
とんせい
)
とかいうだ、あのてええの言葉ではよ、それでもやって来るだ、剣術の隠し技を
似而非物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
分てお
貰
(
もら
)
ひ申さにやならぬと
血眼
(
ちまなこ
)
になりて申にぞ安五郎は
當惑
(
たうわく
)
なし我等とても段々の
不仕合
(
ふしあはせ
)
折角
(
せつかく
)
連退
(
つれのい
)
たる白妙には
死別
(
しにわか
)
れ今は
浮世
(
うきよ
)
に
望
(
のぞ
)
みもなければ
信州
(
しんしう
)
の
由縁
(
ゆかり
)
の者を頼み
出家
(
しゆつけ
)
遁世
(
とんせい
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
こういう話を聞きながら、私はふと、出家
遁世
(
とんせい
)
の人の心を想いみた。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
この世の
幸
(
さち
)
はみな弟
直義
(
ただよし
)
に与えて給え、この尊氏にはただ
後生
(
ごしょう
)
のみを授け給われ——と、ひたすらな
遁世
(
とんせい
)
の念と弟思いが
溢
(
あふ
)
れているあの願文なのですから
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
遁世
(
とんせい
)
の人とおなりになるお用意ばかりを院はしておいでになるのであるが、人聞きということでまた
躊躇
(
ちゅうちょ
)
しておいでになるのはよくないことかもしれない。
源氏物語:41 御法
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「いやそうじゃない、待ってくれ、わしは
遁世
(
とんせい
)
しておる、わしは静閑でありたい」
似而非物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
いまは出家
遁世
(
とんせい
)
して心静かに山奥の
庵
(
いおり
)
で念仏
三昧
(
ざんまい
)
の月日を送っている師匠の鰐口の耳にもはいり、師匠にとって弟子の悪評ほどつらいものはなく、あけくれ気に病み、ついには念仏の障りにもなって
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
始終心安くなっている小侍従という宮の女房を
煽動
(
せんどう
)
するようなことを言い、無常の世であるから、御出家のお志の深い院が御
遁世
(
とんせい
)
になる場合もあったなら
源氏物語:34 若菜(上)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
いまなお、それを恥じるのかと、兼好は、自分の
遁世
(
とんせい
)
とひきくらべて、なにか歯がゆく考えたようだった。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いつまでこんな山の中にいられるものじゃない、いま帰れば、こんどの事で、いっしょに働いたという名目が立つし、好ましい役にも就けるだろう、
遁世
(
とんせい
)
は老年になってからでいいじゃないか。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
出家
遁世
(
とんせい
)
の姿になり、髪も
髭
(
ひげ
)
も
剃
(
そ
)
った僧たちでさえ恋愛の心のおさえられぬ者があるのである、まして女というものに戒行が保てるものかどうかあぶないものである
源氏物語:56 夢の浮橋
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
と、彼の
遁世
(
とんせい
)
を
怪訝
(
いぶか
)
しがった世人は、やがて佐々木小次郎に彼が負けたということを誇大に取って
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その人自身には捨てられない
絆
(
ほだし
)
が幾つもあるものなのでございますから、ましてあなた様などがどうしてそう楽々と
遁世
(
とんせい
)
の道をおとりになることがおできになれましょう。
源氏物語:42 まぼろし
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
尊氏としては、こんどに
懲
(
こ
)
りてふたたびこんなことの起らぬような、いわば直義のほんとの出家
遁世
(
とんせい
)
を
強
(
し
)
いていたものであったから、直義が承服しないのもむりではない。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『若いのに、こんな歌すら詠んだことのある義清だ。きのうやきょうの決意ではあるまい。——
遁世
(
とんせい
)
ではなく、むしろ、一歩高く、強く、生きようとしての、出家であろ』
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
捨てがたい優しい妻が自分の心を
遁世
(
とんせい
)
の道へおもむかしめない
絆
(
ほだし
)
になって、今日までは僧にもならなかったのである、一人生き残って男やもめになったことは堪えがたいことではないが
源氏物語:47 橋姫
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
それがし自身も、直ちに、お暇を乞うて、高野の山奥へでも、
遁世
(
とんせい
)
仕る所存にござりますれば
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ある一つ二つの場合に得た失望感からゆがめられて以来は
厭世
(
えんせい
)
的な思想になって、出家を志していたにもかかわらず、親たちの
歎
(
なげ
)
きを顧みると、この
絆
(
ほだし
)
が
遁世
(
とんせい
)
の実を上げさすまいと考えられて
源氏物語:36 柏木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
求菩提
(
ぐぼだい
)
の心にもえていたころの心寂には、こういう俗縁や市塵の中にいては常に心が乱されて、ほんとの
往生境
(
おうじょうきょう
)
には入り難い。——こう彼は考えて、上人に、
遁世
(
とんせい
)
を願った。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“遁世”の意味
《名詞》
俗世を離れて隠棲すること。
出家すること。
(出典:Wiktionary)
遁
漢検準1級
部首:⾡
13画
世
常用漢字
小3
部首:⼀
5画
“遁世”で始まる語句
遁世者
遁世哲学
遁世的
遁世籠居