こみ)” の例文
「こういう品は今時いまどき、この山国でもなければ滅多には出て来ないわい、いざ神尾殿、よく穂先からこみの具合まで、鑑定めききして御覧あれ」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
早々申上御安堵ごあんどさせ奉つらんと一※に存じこみ君臣のれいを失ひ候段恐入奉つり候よつて兩人は是より差控仕さしひかへつかまつる可と座を退しりぞかんとするを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
番頭が取り出したのは、鋒先ほさきを手拭に包んだ刄渡り五寸ほどこみが一尺以上もある物凄い槍の穗、成程これは、喉を狙へば生命を取ります。
……そのまま忍寄って、そっとその幕をひきなぐりに絞ると、隣室の障子には硝子が嵌めこみになっていたので、一面に映るように透いて見えた。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
庄「王子の茶園に往って送りこみを頼んで来た、二三うちに送り込むだろうが、来なければ又往って遣ろうが」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
主命しゆうめいりて糸子いとこ縁談えんだんの申しこみなるべし、其時そのとき雪三せつざう决然けつぜんとせし聲音こわねにて、折角せつかく御懇望ごこんもうながら糸子いとこさま御儀おんぎ他家たけしたまふ御身おんみならねばおこゝろうけたまはるまでもなし
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
折柄バタ/\せ来れる女中のお仲「松島さんがネ、花吉さんが遅いので、又たお株の大じれこみデ、大洞おほほらさんがネ、女将おかみさんに一寸来て何とかして貰ひたいツておつしやるんですよ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
竿を手にして、一心に魚のシメこみうかがった。魚はかたの如くにやがて喰総くいしめた。こっちは合せた。むこうは抵抗した。竿は月の如くになった。いと鉄線はりがねの如くになった。水面に小波さざなみは立った。
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
我は馬車、自動車、オムニブスのこみ合ふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
さてまた憑司は其夜昌次郎を立せやり草履ざうりに血の付たるをもちて傳吉宅へしのこみには飛石とびいしへ血を付置き夫より高田の役所へ夜通よどほしに往てうつた捕方とりかた
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それに今夜ちっと河岸かしの方とかで泊りこみという寸法があります、何ならおつき合なさいましと、傍若無人、じれッたくなったから、突然いきなり靴だから飛び下りたさ。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
初々うい/\しき大島田おほしまだわたのやうにしぼりばなしふさ/\とかけて、鼈甲べつかうのさしこみふさつきのはなかんざしひらめかし、何時いつよりは極彩色ごくさいしきのたゞ京人形きようにんげうるやうにおもはれて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その日会社を首になった笠森仙太郎は、白紙の答案を出すような心持で、社長邸の奥庭に忍びこみ植込の蔭に身を潜めて、令嬢美奈子の部屋を、そっと覗くほど取詰とりつめておりました。
槍の穂だけを取りはずしてこみのところをり上げ、それをいつでもの中へめ込むことができるようにして、穂を懐中に入れておき、柄は杖にしてついて歩き、いざという場合には
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すかし申しこの婚姻相延あいのべ申候よう決行致し候なおまた近日参上つかまつり入りこみたる御話し委細申上もうしあぐべく心得に候えども差当り先日七蔵に渡され候金百円及び御礼の印までに金百円進上しおき候あいだ御受納下されたく不悉ふしつ 亀屋吉兵衛様へ岩沼子爵家従けらい田原栄作たはらえいさくとありて末書に珠運様とやらにも此旨このむね鶴声かくせい相伝あいつたえられたく候と筆を
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
つかこみ父の勘當をけ身をなげんとせし時に是なる五八にたすけられ今は五八方に居て初瀬留に見繼みつぎを受け不自由なくは消光くらし居れど何卒なにとぞ勘當かんだうわび
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一升買うから、後生だからお前今夜は泊りこみで、炬燵こたつで附合ってくんねえ。一体ならお勝さんが休もうという日なんだけれど、限って出てしまったのも容易でねえ。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)