トップ
>
贄
>
にえ
ふりがな文庫
“
贄
(
にえ
)” の例文
生ける
贄
(
にえ
)
、土足にかけてこの有様だ! かかれ秋山、かかれ主水!、一寸と動かば振り冠った刀、澄江の上に落ちかかるぞよ!
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「ことしも水の神の
贄
(
にえ
)
求めつるよ。
主人
(
あるじ
)
はベルヒの城へきのふより
駆
(
か
)
りとられて、まだ帰らず。
手当
(
てあて
)
して見むとおもひ玉はば、こなたへ。」
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
親や良人は殺され、子は見失って、
数珠
(
じゅず
)
つなぎに捕われてゆく
贄
(
にえ
)
の女たちは、オイオイと手放しに泣きながら、野を追い立てられて行った。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
美女 あの、
捨小舟
(
すておぶね
)
に流されて、海の
贄
(
にえ
)
に取られて
行
(
ゆ
)
く、あの、(
眗
(
みまわ
)
す)これが、嬉しい事なのでしょうか。めでたい事なのでしょうかねえ。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
金沢町江島屋の忍び返しに、
百舌
(
もず
)
の
贄
(
にえ
)
のように引っ掛って死んだ
薊
(
あざみ
)
の三之助の下手人は、それっ切りわからず、四日五日と苛立たしい日は続きました。
銭形平次捕物控:238 恋患い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
父母も、姉妹も、知己も、自分が一生をそのために捧げようと欲していた哲学さえも、ことごとく恋愛のためには
贄
(
にえ
)
として供えることを辞しないほど恋愛に賭けた。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
『
春秋繁露
(
しゅんじゅうはんろ
)
』におよそ卿に
贄
(
にえ
)
とるに
羔
(
こひつじ
)
を用ゆ。羔、角あれども用いず、仁を好む者のごとし。これを
執
(
とら
)
うれども鳴かず、これを殺せども
号
(
さけ
)
ばず、義に死する者に類す。
十二支考:06 羊に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
老たる母に朝夕のはかなさを見せなければならないゆえ、一身を
贄
(
にえ
)
にして一時の運をこそ願え、私が一生は
破
(
や
)
ぶれて、道ばたの
乞食
(
こじき
)
になるのこそ終生の願いなのです。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
これが物見やぐら造りのをさずき(また、さじき)、
懸崖
(
カケ
)
造りなのをたなと言うたらしい。こうした処女の生活は、後世には伝説化して、水神の生け
贄
(
にえ
)
といった型に入る。
水の女
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
「にへ」は
贄
(
にえ
)
で、「にひなめ」は、「にへのいみ」(折口博士)の義だとしてある。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
玉虫 平家蟹の甲を裂いて、その肉を酒にひたし、神への
贄
(
にえ
)
にささげしものぞ。
平家蟹
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
所々の学校に籍を置き、
種々
(
いろいろ
)
の教師に
贄
(
にえ
)
を執って見たが、今の立場から言えば、どの学校も、どの教師も、自分に満足を与えることが出来ない。
二人の友
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「お待たせいたしました。やはり、参らねば一人の
女性
(
にょしょう
)
が、悪人の
贄
(
にえ
)
になるところでした」範宴は、車からさしのぞいて
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
堕地獄
(
だじごく
)
の苦に悩もうとまま! ……さあこう明かした上からは、肉親でもなければ姉妹でもない! 恋の
敵
(
かたき
)
情慾の仇! ……ええ
贄
(
にえ
)
なんどに追いやるより
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
八五郎がこれを『
百舌
(
もず
)
の
贄
(
にえ
)
』と言ったのは、適切過ぎるほど適切な
譬
(
たと
)
えでした。
銭形平次捕物控:238 恋患い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
甚しいかなその念の深く刻めるや、おのが幾年の寿命を縮め、身をもて神仏の
贄
(
にえ
)
に供えて、合掌し、
瞑目
(
めいもく
)
して、良人の本復を祈る時も、その死を欲するの念は依然として信仰の霊を妨げたり。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
十三弦は
暴風雨
(
あらし
)
を
招
(
よ
)
んで、
相模
(
さがみ
)
の海に荒ぶる、
洋
(
うみ
)
のうなりと、風雨の
雄叫
(
おた
)
けびを目の前に耳にするのであった。切々たる哀音は、
尊
(
みこと
)
を守って
海神
(
かいじん
)
に身を
贄
(
にえ
)
と
捧
(
ささ
)
ぐる
乙橘媛
(
おとたちばなひめ
)
の思いを伝えるのだった。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
鳰鳥
(
におどり
)
の葛飾
早稲
(
わせ
)
を
贄
(
にえ
)
すとも、
彼
(
その
)
愛
(
かな
)
しきを、
外
(
ト
)
に立てめやも
最古日本の女性生活の根柢
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
血の権の
贄
(
にえ
)
は人の権なり。われ
老
(
おい
)
たれど、人の
情
(
なさけ
)
忘れたりなど、ゆめな思ひそ。向ひの壁に掛けたるわが母君の
像
(
すがた
)
を見よ。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「そのために、このお姿を
贄
(
にえ
)
となされたのでござりますか。今さら何と申してよいやら、お詫びの言葉もござりませぬ」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ハダカの女を持って来オ——ッ……違った! いけねえ! そうじゃアなかった!
贄
(
にえ
)
持って来オ——ッ、
裸体
(
はだか
)
の贄を! ……と、ドッコイまた違った! ハダカの贄は
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「殺しですよ、親分、江島屋鹿右衛門の塀の上で、薊の三之助が忍び返しに引っ掛ったまま、
百舌
(
もず
)
の
贄
(
にえ
)
のようになって死んでいるんだ、こいつは江戸
開府
(
けえふ
)
以来の変った殺しじゃありませんか」
銭形平次捕物控:238 恋患い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「それっ、血祭りぞ。他の首もみな打ち落して、いくさ神へ
贄
(
にえ
)
を捧げ、
鬨
(
とき
)
を合わせて、大岩砦へ攻めかかれ」
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
世に貴族と生れしものは、
賤
(
しず
)
やまがつなどのごとくわがままなる振舞い、おもいもよらぬことなり。血の権の
贄
(
にえ
)
は人の権なり。われ老いたれど、人の情け忘れたりなど、ゆめな思いそ。
文づかい
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
当時の剣客
浅利又七郎
(
あさりまたしちろう
)
へ
贄
(
にえ
)
を入れて門下となり、剣を修めようとしたのである。
戯作者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
即位いらい二十一年、およそこれほどみずからのおからだをみずからの理想の
贄
(
にえ
)
として酷使なされた天皇はほかにない。ためにお心を
労
(
つか
)
ったことも、はなはだしい。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
贄
(
にえ
)
に供えるという浜路とかいう女、間違いなく捕えて来るだろうかな?」
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
今となって、おことの肉体を
縛
(
くく
)
って
贄
(
にえ
)
となそうとも、わしが足蹴にかけて叱ろうと、それが叡山へ対してなんの
効
(
か
)
いがあろう、吉水の上人に向ってなんのおわびとなろう。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
北条左内が内々ではあったが
贄
(
にえ
)
を入れて弟子となったのは、この日から半年ほどの以前のことで、嘉門の芸風が独特であって、人柄にもりっぱなところがあると、人の噂に聞いたからであった。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
有効につかってみせる。およそ大望のおん大事には、あまたな
贄
(
にえ
)
が——
人柱
(
ひとばしら
)
というものが——
要
(
い
)
るものだ。すでに殿のご正室やお子たちすらも、鎌倉表に幕府の
質
(
ち
)
とされておる
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「文句を云わずとヤイヤイ範覚、
贄
(
にえ
)
のハダカ持って来オ——ッ」
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
御方は、財宝の
贄
(
にえ
)
となった身の不遇を
呪
(
のろ
)
い、父の為俊卿をも恨めしく思った。そして、その頃はもう千代田城に栄華を尽している妹の
文便
(
ふみづと
)
を見る度に
羨
(
うらや
)
ましくてならなかった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「もういけめえ!
贄
(
にえ
)
にしてくりょう!」
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
今もって、
悪業
(
あくごう
)
を
行
(
ぎょう
)
とし、京都を中心に
近畿
(
きんき
)
いったいをあらし廻る浄土の賊天城四郎の
贄
(
にえ
)
にさせてなろうかと、相手の正体を見、被害者の
傷々
(
いたいた
)
しい姿を見ると、彼の怒りはいやが上にも燃えて
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「可哀そうな不幸な
贄
(
にえ
)
なのだよ」
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
生きていても、あなたとこの世のご縁はないし、ただ心は日ごと苦しみ、身は
不仁
(
ふじん
)
な太師の
贄
(
にえ
)
になって、夜々、
虐
(
さいな
)
まれるばかりです。せめて、
後世
(
ごせ
)
の
契
(
ちぎ
)
りを楽しみに、
冥世
(
あのよ
)
へ行って待っております
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
物の数には入れるわけにはゆかないが、彼らの
命旗
(
めいき
)
とする、名目人の源次郎少年を加えると、すでにここの半数は、武蔵の刀にあたって序戦の
贄
(
にえ
)
に
曝
(
さら
)
され、惨たる血をここ一面に撒いてしまった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その葬祭は王侯の礼をもって執行され、葬儀委員長には
司馬懿
(
しばい
)
仲達がみずから当った。大小の百官すべて見送りに立ち、儀杖数百騎、
弔華
(
ちょうか
)
放鳥、
贄
(
にえ
)
の羊、
祀
(
まつ
)
りの牛など、
蜿蜒
(
えんえん
)
洛陽の街をつらぬいた。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
豹
(
ひょう
)
のごとく
飛
(
と
)
びついてきた
酒乱
(
しゅらん
)
の
浪人者
(
ろうにんもの
)
に、血まつりの
贄
(
にえ
)
とされた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
先生のいう
巷
(
ちまた
)
の風説だけならまだ信じないかも知れぬが、銅雀台の賦にまで歌っている以上、曹操もそれを公然と揚言しているのであろう。いかで彼の野望に先君の後室や、わが妻を
贄
(
にえ
)
に供されよう。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
、どう思うのだ。我欲の
贄
(
にえ
)
としてもかまわぬつもりか
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“贄”の解説
贄(にえ)とは、神または天皇に供する食物の総称、及びその制度。
(出典:Wikipedia)
贄
漢検1級
部首:⾙
18画
“贄”を含む語句
生贄
御贄
贄川
贄卓
速贄
贄持
真贄
経島娘生贄
贄崎
贄川宿
贄川街道
贄櫃
贄殿
贄海
贄物
贄釜