諫言かんげん)” の例文
等の項目にわたって諫言かんげんしたので、曹操も思い直して出動を見あわせ、しばらくはなお、内政文治にもっぱら意をそそぐこととした。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「われらが主君成瀬隼人正、西丸様お企てを一大事と観じ、再三ご諫言かんげん申し上げたれど聞かれず、やむを得ず拙者に旨を含め……」
怪しの者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
御老中は申すに及ばず、お側の衆からもいろ/\諫言かんげんを申上げたが、上樣日頃の御氣性で、一旦仰せ出された上は金輪際こんりんざい變替は遊ばされぬ。
それはそうでもあろう、貴殿の諫言かんげんに従って思いとどまるのが道理かも知れないが、今はもう退引のっぴきのならぬ事態になっている。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
江戸まで諫言かんげんに行こうというのである、……もっともそんな事はそのときが初めてではなく、その前にも何回となく例があった
蕗問答 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
情理整然とした諫言かんげんに、流石さすがの家光も後悔したけれども及ばなかった。悲しい事には、宗矩の言一々的中したのであった。
島原の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
以前、赤島家の書生であった警察署長の津留木万吾つるきまんごは忠義立てに哲也を捕まえて手強く諫言かんげんすると「音絵を貰ってくれぬから自暴糞やけくそになったんだ」
黒白ストーリー (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
こそ御えらみあるが然るべしと道理をつくして諫言かんげんに及びければ流石さすが強慾がうよくの五兵衞も初めて道理もつともと思ひ終に持參金のねんたちたる樣子なれば久八は此
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たまたま家族の者に諫言かんげんでも加えるには、かつ夏目漱石なつめそうせき氏の評された、氏の漫画の特色とする「苦々しくない皮肉」のあじわいをっておもむろに迫ります。
我国の動物虐待防止会式の諫言かんげん、例えば「坂を登る時には支頭韁はづなをゆるめよ」とか「馬に水を飲ませよ」とかいうような文句が刻んであるのである。
マッシャが僕に諫言かんげんをしたというようなわけで。ははは。それはそうと姉さんはマッシャに握手をしておやりなさいましたね。大変喜んだようでしたよ。
少々御主人様の事に就きまして親共が諫言かんげんを申した事がございます、其の諫言が却って害に相成りまして不興を受けておいとまになりましたが、父は物堅い気性故
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
で、真実ほんとう諫言かんげんをお好みになりまするなら、何よりも先きにお顔をにこやかに遊ばされますやうに……
四十年ただ亡くなった姉の真心こめた不断の諫言かんげんと最後にきた老齢によって晩年多少の反省と自制を見せるようになったに過ぎない。私どもの不幸な関係はここに終った。
結婚 (新字新仮名) / 中勘助(著)
しかも彼にとっては苦手の伯母御の意見といい、それにさからってはよくないという十太夫の諫言かんげんもあるので、播磨も渋々納得して、申訳ばかりに二人の女子を置くことになった。
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
シナ太古の聖人が世をおさむる時代には朝廷ちょうてい諫鼓かんこという太鼓のような物をそなえおいて、誰人たれびとにても当局に忠告せんとする者はこれを打つと、役人が出て諫言かんげんを聴いたと伝えるが
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
足利将軍義政の時代に諫言かんげんたてまつって領地を失った熊谷某は近江の熊谷である。
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
昔、昔、ずっと昔に或る忠義な武士さむらいがあって主君の非行を諫言かんげんたてまつった。
森の妖姫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
真に友誼をもっているからこそ、かくの如く忠告するのである。これは友人に非ざれば、到底出来ぬ忠告である。諫言かんげんは耳をさからう。しかも支那はこのことをく自覚せよと、こういう意である。
えいの霊公は極めて意志の弱い君主である。賢と不才とを識別し得ないほど愚かではないのだが、結局は苦い諫言かんげんよりも甘い諂諛てんゆよろこばされてしまう。衛の国政を左右するものはその後宮であった。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
氏郷をやかたに入れまいらせてから、ひそか諫言かんげんたてまつって、今此の寒天に此処より遥に北の奥なるあたりに発向したまうとも、人馬もつかれて働きも思うようにはなるまじく、不案内の山、川、森、沼
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と孝子の立場から諫言かんげんの必要を認めた。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「一年のとき、重盛しげもり諫言かんげんを読んだね」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
またそち自身がさきに申した諫言かんげんに照らしてみても、両者の同陣は、いかがあろうと、公卿みな、懸念いたしておったところぞ
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御老中は申すに及ばず、おそばの衆からもいろいろ諫言かんげんを申上げたが、上様日頃の御気象で、一旦仰せ出された上は金輪際変替えは遊ばされぬ。
のみならず時にはお太刀を抜かれ、諫言かんげんがましい事などを云うお気に入らぬご家来を片端から、お手討ちに遊ばす恐ろしさ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かくて信玄以来の智勇の武将等の諫言かんげんも、ついに用いられず、勝頼の自負と、跡部等の不明は、戦略を誤り、兵数兵器の相違の上に、更に戦略を誤ったのである。
長篠合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
殿「成程左様じゃ、至極左様じゃ、正道せいどう潔白な事じゃ、これ權六、以来予に悪いことが有ったら其の方諫言かんげんを致せ、是が君臣の道じゃ、宜しい、許すから居てくれ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そっと、ささやいて道庵を引留めましたけれど——およそ道庵の気性を知っている限りの人においては、左様な諫言かんげんを耳に入れる人だか、入れない人だかは、先刻御承知のはず。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
家臣の諫言かんげんは必ず聴き取る、それが国家を治める者のつとめだと信じていたのである。
備前名弓伝 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
他人の諫言かんげん忠告をいつでもれる心の態度を有する者は真の大人たいじん、君子、英傑である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ところが、重盛の諫言かんげんなどは、馬の耳に念仏である。とにかく、腹が立って仕方のない清盛は、いずれも、腕力に覚えのある、子飼いのならず者ばかりを、各地からこっそり呼び寄せていた。
そうして残った白い処へ諫言かんげんの文だの、苦心談だのを書いて献上しておいて、自分はあとで自殺でもすれば、気の弱い文化天子のきもたまをデングリ返らせる効果は十分、十二分であったろうものを
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そして呉王はこの天下第一の美人をえて大いにおごった。呉の良臣、伍子胥ごししょ諫言かんげんも耳に入れず、荒婬こういんと、連日の宴舞に、国政もみだれ果てた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我ら再三諫言かんげんしたれど妖婦の甘言にさえぎられて益〻暗愚の振る舞いをされ、京師けいし足利あしかが将軍にさえその名を知られたこの甚五衛門を、事もあろうに閉門をされ
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
吉住樣からは、土佐守樣へは諫言かんげんは申上げ憎い。が、奧方の思召しを無にして、土佐守樣がいやしい女を召出されるのを、其儘にもならず、柴田樣とお二人が、お菊を
殿様へ種々しゅ/″\御意見を申し上げ、諫言かんげんとかをいたしたので重役の憎みを受け、御暇おいとまになりましたが、なんの此の屋敷ばかり日は照らぬという気性で浪人致し、其ののち浪宅ろうたくにおいて切腹いたし
第一武芸には、上には上があるものだから、そう物好きをやるべきものではない——という米友の諫言かんげんは正当にして穏健なるものだが、そうかといって思い止まるには、道庵に自信があり過ぎる。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
だが頭のいい元就は、弘中三河守の諫言かんげんを封じる為に、座頭を使って、陶に一服盛ってあるのだから叶わない。晴賢は三河守の良策を蹴って、大軍を率いて七百余艘の軍船で厳島へ渡ってしまった。
厳島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「かまわん! 御立腹をおそれて諫言かんげんはできぬ、御当家のために、わしはあえて非礼をするのだ、殿様がまた、病床にすまでやッつけてやる」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何、このわし諫言かんげんする! それでは、何か、殿へだけでは、諫言足らぬと云うのじゃな。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
兵馬はその時分に、能登守のために諫言かんげんをしようかとも思いました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
吉住様からは、土佐守へは諫言かんげんは申上げにくい。
山「諫言かんげんか」
袁紹えんしょうの臣沮授そじゅは、主君袁紹に諫言かんげんして、かえって彼の怒りをかい、軍の監獄に投じられていたが、その夜、獄中に独坐して星を見ているうちに
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さようなご深慮ともわきまえず、さかしらだって諫言かんげんつかまつり今さら恥ずかしく存じまする」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
梶川与之助は、またも返答に窮するの立場に輪をかけられたようなもので、面はかがやき、口はわななくけれども、いずれへ何と挨拶し、いずれへ何と諫言かんげんしていいか、その言葉のいとぐちを見出し難い。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
信盛、夕菴せきあん、光秀の三人は、同時にまた両手をついて、あたかも諫言かんげんとりでのように主君の前をうごかなかった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うかうか諫言かんげんなど為ようものなら、反対にとっちめられて了うだろう。
天主閣の音 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
信玄は、中央の床几しょうぎにあって、そういう口々の諫言かんげんへ、針のように細い半眼をもっていちいちうなずいていたが、やおら口をひらいて一同へ答えを与えた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)