蝶々てふ/\)” の例文
花畑はなばたけへでもいてると、綺麗きれい蝶々てふ/\は、おびて、とまつたんです、ひと不思議ふしぎなのは、立像りつざうきざんだのが、ひざやはらかにすつとすはる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いろ/\な可愛かあいらしい蝶々てふ/\澤山たくさんあるなかで、あのおほきなくろ蝶々てふ/\ばかりは氣味きみわるいものです。あれは毛蟲けむし蝶々てふ/\だとひます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
追つかける八五郎の手をスルリと拔けて、女は店口から往來の人混みの中へ、大きな蝶々てふ/\のやうに身を隱して了ひました。
相手あひてをんなとしは、むつばかりえた。あかはゞのあるリボンを蝶々てふ/\やうあたまうへ喰付くつつけて、主人しゆじんけないほどいきほひで、ちひさなにぎかためてさつとまへした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのうちに蝶々てふ/\とうさんの竹竿たけざをになやまされて、手傷てきずつたやうでしたが、まだそれでもげてかうとはしませんでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
呼出よびだしをけるの、勝手かつてつた裏口うらぐち𢌞まはつて、垣根かきねからのぞくと、長閑のどか障子しやうじけて、背戸せどにひら/\と蝶々てふ/\ぶのをながら、かべくろ陰氣いんき納戸なんど
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
親方の玉川權之助が、頭の上に兩手を突き上げると、そのてのひらの上で、蝶々てふ/\のやうに踊るんです。——唐土もろこしの何んとか言ふ殿樣か大名のきさきに、飛燕ひえんといふ美しい女があつたんですつてね。
とうさんが蝶々てふ/\をめがけて竹竿たけざをたびに、それが枳殼からたちえだつて、あをがバラ/\ちました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ともに身體からだやすましてらくをさせようとふ、それにもしうとたちのなさけはあつた。しかしはくのついた次男じなんどのには、とん蝶々てふ/\菜種なたねはな見通みとほしの春心はるごころ納戸なんどつめがずにようか。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
蝶々てふ/\診断しんだんをしてゐるんだ。大湯おほゆ落合おちあひましやうよ、一あしさきへ……」
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
手段しゆだんがなかつたのではない、はなむかふるに蝶々てふ/\がなかつたのである。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
藪龜やぶがめにてもひきにても……蝶々てふ/\蜻蛉とんぼ餓鬼大將がきだいしやう
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)