かく)” の例文
新字:
さらずば道行く人に見せられぬ何等かの祕密を此屋敷にかくして置くていの男であらう、今は見上げる許り高い黒塗の板塀になつて居る。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
嚴敷きびしく拷問がうもんに掛られし所つひつゝかくす事能はず是迄の惡事あくじ追々おひ/\白状にぞ及びける又平左衞門が宅を穿鑿せんさくなせしにつかのこりの金子六百兩出たり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
われは此詞を聞きて、さきに包みかくして告げざりしサンタとの最後の會見の事を憶ひ起しつ。に我頭をちて我夢を醒ましゝは、尊き聖母の御影なりき。
萬事ばんじはうあひまかせる、此女このもの何處いづこにてもともなき、妙齡としごろれんまで、人目ひとめにかけずかくけ。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いつしか下駄をもかくさせたれば、足を取られて幽靈ならぬ身の戸のすき間より出る事もなるまじとて今宵は此處に泊る事となりぬ、雨戸を鎖す音一しきり賑はしく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
狂人は拔目ぬけめがなく惡意があつて自分の見張りが時々氣をゆるめるときに乘ずることを見逃しはしない——一度は自分の兄を刺したナイフをかくし、二度迄自分の部屋の鍵を手に入れて
しかし「黄金の夢」即ち空想豐かなる詩人の胸には琵琶が常にかくれてゐる。
薄紗の帳 (旧字旧仮名) / ステファヌ・マラルメ(著)
阿古屋貝あこやがひうつかくせるわだつみのかげも、光も
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
たゞうでし、はらつて、美少年びせうねんを、かくすよりもづ、はなさうとあせりもだえて、ほとん虚空こくうつかかたち
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
頃日このごろ拿破里ナポリに往きて、客に題をたまはりて、即座に歌作りてうたはんと志したり。斯く語るついでに、われはこたび身を以て逃れたる事のもとさへ、包みかくさずして告げぬ。
さらば此男も、身體こそ無造作に刻まれた肉魂の一斷片に過ぎぬが、人生の大殿堂を根柢から搖り動かして轟き渡る一撞萬聲の鯨鐘の聲を深く這裏このうらかくして居るのかも知れない。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
今宵こよひもいたくけぬ、下坐敷したざしきひとはいつかかへりておもて雨戸あまどをたてるとふに、ともすけおどろきてかへ支度したくするを、おりきうでもとまらするといふ、いつしか下駄げたをもかくさせたれば
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さて其黄昏そのたそがれは、すこかぜ心持こゝろもちわたしねつ惡寒さむけがしたから掻卷かいまきにくるまつて、轉寢うたゝねうちこゝろかれる小説せうせつ搜索さうさくをされまいため、貸本かしほんかくしてあるくだん押入おしいれ附着くツついてた。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しばらくして席は遊藝を競ふところとなり、ポツジヨは得意の舟歌ふなうた(バルカルオラ)を歌へり。我は友のゑみを帶びたる容貌おもざし背後うしろに、暗に富貴なる人々の卑吝ひりんあざける色をかくしたるかを疑ひぬ。