“納得:なっとく” の例文
“納得:なっとく”を含む作品の著者(上位)作品数
夏目漱石11
中里介山10
岡本綺堂4
海野十三3
下村湖人3
“納得:なっとく”を含む作品のジャンル比率
文学 > 文学 > 叢書 全集 選集14.3%
文学 > 英米文学 > 小説 物語5.0%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.4%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
政どんなるものが、一桁ちがいの親方の裏書をいいことにして、自説の誤りなきことを指で保証すると、お角も納得なっとくして、
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「気にいらんなんて——そんな事が——あるはずがないですが」とぽつぽつに答える。ようやくに納得なっとくした先生は先へ進む。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どんなことに納得なっとくさせたものか、その日の夕方には、例によって馬にまたがった弁信が、一月寺の門前に現われました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
兄さんこそは本当に自分の心に納得なっとくできるような答をしてくれる人だと、ずーっと以前からそう思うていたのであった。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
「やっぱり運命だなあ」と云って、茶碗の茶をうまそうに飲んだ。御米はこれでも納得なっとくができなかったと見えて、
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「行かないの? 私だって行かないわ」と女はようやく納得なっとくする。小野さんは暗い隧道トンネルかろうじて抜け出した。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いや、そんなつもりでもないが、しかし処置は早いに越したことはなかろう。和解の実を衆に納得なっとくさせる上にも」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼が組頭の爺さんが、せがれは足がわるいから消防長はつとまらぬと辞退するのを、皆が寄ってたかって無理やりに納得なっとくさす。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
お延の両親は津田の父母と同じように京都にいた。津田は遠くからその書きかけの手紙を眺めた。けれどもまだ納得なっとくができなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三四郎はむろん納得なっとくしない。しかし追窮もしない。黙って一間ばかり歩いた。すると突然与次郎がこう言った。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
みな、自得じとく研鑽けんさんから通力つうりきした人間技にんげんわざであることが納得なっとくできた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どしどし問返すのは、心から納得なっとく出来ないものを表面うわべだけうべなうことの出来ぬ性分だからだ。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
三つも投げて、両手をひらいて見せると、彼は納得なっとくして、三個ながら口にくわえて、芝生に行ってゆる/\食うのが癖であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
当然爆発すべき無形の地、すなわち混沌たる政界の荒野に投げられなければならないということを、われわれに納得なっとくさせようとしていたが
しかし、ともかくも血書が県庁に差出されるようになったということで、一応納得なっとくするよりほかなかった。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
滅亡の美しさを説いたのも、此処で死ななければならぬことを自分に納得なっとくさせる方途ではなかったのか。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
姉はしまいにやや納得なっとくしたらしい顔つきをして、みんなと夕食ゆうめしを共にするまで話し込んだ。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大井はやっと納得なっとくした。が、卓子テエブルを離れるとなると、彼は口が達者なのとは反対に、すこぶる足元が蹣跚まんさんとしていた。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いつもの客ならば、それで納得なっとくして帰るはずなのですが、これは剣術のために来たのではない——と言う以上には、何か別用があるに相違ない。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この隠し子の存在にはお梶さまも相当煩悶したよしであるが、自分の結婚前ということが、ともかく納得なっとく手蔓てづるではあったらしい。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
敬二少年は、それからいろいろと説明をして、やっと三ちゃんに納得なっとくしてもらうことができた。
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
農民は、自分の手にあうことや、多少ゆとりのある良心にてらして納得なっとくの行くことは實行した。
それでもなお納得なっとくがゆかないならば、わしにその金を融通してくれた人の名をいいましょう。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
やはり昼休みだった。正三君が納得なっとくしたので、堀口生は尾沢生を運動場の一隅へ呼んできた。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いつのまにか道庵が米友に因果をふくめて、盲法師の身代りとなるべく納得なっとくせしめたと見えて、米友は甘んじて、彼等の偶像となろうとするものらしい。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かれに向かって、今夜芝居しばいするなんという考えをてなければならないことを納得なっとくさせるには、たいへんな手数のかかることがわかっていた。
五郎は答えたが、納得なっとくしたわけではない。納得したいとも思わない。納得したいという気持は、ずいぶん前から、彼の心の中で死んでいる。五郎は言った。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
「でも、私から、じかに言って聞かしたら、納得なっとくしないわけはないと思うのだがね。」
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
次郎は、理窟を言えば何か言えるような気がした。しかし、ただだまってうなずいた。父の愛情が今は理窟をぬきにして、彼にすべてを納得なっとくさせたのである。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
青くなったのは、この連中に向っては迷信の権威が甚だ薄いから、よく納得なっとくさせないかぎり、必ずや九ツ半を期して、その正体を見届けに出かけるに相違ない。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それを読んで金椎は、まだ充分の納得なっとくがゆかないながら、ひとまず安心しました。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一時の合流は見たけれど、それがために大雨がにわかに到ったというわけでもなし、双方を納得なっとくせしむべき解決条件が見出されたというわけでもないらしいから。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
柿江はとにかく戸沢が疑わしげながら納得なっとくするのを見ると、自分の今まで能弁に話して聞かせていたまったくの作り話がいよいよ本当の出来事のように思えだした。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
こう言われると年寄のお客、それは深川の炭問屋の主人だというのが納得なっとくして、
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ですから、これを葛岡に知らせるにしても、よくこの中身のところを説明してやりさえしたなら、どうにかこうにか葛岡を納得なっとくさすだけの自信はわたくしにあります。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そして冬撰鉱せんこうへ来ていたこの村のむすめのおみちと出来てからとうとうその一本調子ちょうしで親たちを納得なっとくさせておみちをもらってしまった。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その時K君は納得なっとくできないといったような顔をした。そうしてこう答えた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かれは、ばかに声に力を入れてそう言ったが、それはほんとうに納得なっとくしたというよりは、しいて言葉をはげまして、自分の不安をはらいのけているといった調子だった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
二人が顔を突きあわせれば、いつもこの同じような問題を中心にして、男はあてになりそうもないことを言い、女も的にならないことを知りながら渋々納得なっとくしている。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
博士はひどくせきこんで、なるべく早く宮川を納得なっとくさせようとしている。
脳の中の麗人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ともっともな事を親切に言ってくれたので、燕もとうとう納得なっとくして残りおしさはやまやまですけれども見かえり見かえり南を向いて心細いひとり旅をする事になりました。
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「本田君がなかなか納得なっとくしてくれないので、弱っているところです。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
現在の鼠浄土譚には、わざと道行きを省略して、ただじいさんが訪ねて行ったらと、いうふうに語っているのもあるが、それでは小さなにも納得なっとくができない。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
達は真赤になって、母親に話した通り父の納得なっとくの行くまで弁解した。
栄蔵の死 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
心づいて有り合わせた団扇うちわを取り背中の方からあおいでやるとそれで納得なっとくしたようであったが少しでもあおぎ方が気が抜けるとすぐ「暑い」をかえした。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
だますんじゃあるまいね」と、念を押してお絹は納得なっとくした。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
合点が行かなかったというより、納得なっとくしようと思わなかったのだ。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
彼は二三日前から肝胆を砕いて、夫人を納得なっとくさせるようなこしらえ事の筋書を考えぬいておいたのであったが、自分でも感心するほど、まことしやかに説明の順序を追った。
女は単簡たんかんにまた私の納得なっとくできるように答をした。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この始君の説明で、おかあさまも、やっと納得なっとくなさいましたので、始君はさっそく明智事務所へ電話をかけて、あらかじめ打ちあわせておいた暗号で、小林少年にこのことを伝えました。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
とお母様がおっしゃった。照彦様はようやく納得なっとくして、
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
茂太郎が、それでやや納得なっとくの色があるのに力を得て、
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鼻子はようやく納得なっとくしてそろそろ質問を呈出する。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
でも、まだ白雲には、はっきりと納得なっとくができない。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
なるほど、そうかと、僕は始めて納得なっとくがいった。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
したがって、当時印度における一番の果報者であると自ら公言している際、しかも私のようにキッティを愛している場合、あまり多く口がきけなかったということは、諸君にも納得なっとくできるであろう。
そう言ったけれども、納得なっとくしたわけではない。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
意味は分っても、納得なっとくがむずかしかった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分で充分に納得なっとくできないかぎりは。
その案内者の腰に鈴を着けて、あとから来る盲者めくらがその鈴の音を頼りに上る事ができるようにしてあったのだと説明されて、やや納得なっとくもできたが、それにしても敬太郎には随分意外な話である。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
はじめはそれで納得なっとくして黙った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「それはたぶん、女神が季節の変り目で、夏の化粧をされてるからだろう。でなければかわやに上られてはこされているからだろう」女神の化粧は自分で納得なっとくゆくまで何遍でも仕代えさせられるので永い。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
停車場へ降りた時は、さくの外に五六軒長屋のような低い家が見えるばかりなので、何だか汽車から置き去りにされたような気持であったが、これからトロで十五分かかるんだと聞いて、やっと納得なっとくした。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こいつは一番、このおさよ婆さんにこのごろのお艶の始末をうちあけ、さよから先に納得なっとくさせてお艶を手に入れてやろうと、さっそくに考えをきめた富五郎、まるで天からぼた餅が降ってきたようなさわぎで、
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そこで七兵衛も納得なっとくしたらしい。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お静さん、納得なっとくが行きましたか
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「わるい御三おさんね、そんな事を教えて」と妻君は苦笑をしていたが「さあ今度は雪江さんの番だ。坊やはおとなしく聞いているのですよ」と云うと、さすがの暴君も納得なっとくしたと見えて、それぎり当分の間は沈黙した。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
武士はそれでもまだ渋っていたが、半七からいろいろに説きすかされて、彼もようよう納得なっとくしたらしく、内に引っ返して一方の武士と何かしばらくささやき合っていたが、結局思い切ってその事情を打ち明けることになった。
半七捕物帳:30 あま酒売 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
寝巻に着替えようとすると、眼の前にはっきりと彼の顔が浮きあがってきたので、僕はもう彼が実際にいないということを自分の心に納得なっとくさせるために、上の寝台のカーテンをあけ放してみようかとさえ思ったくらいであった。
阿部は初めは色々と弁解し説明もしてみるのだが、いくら口を酸っぱくして述べ立てても納得なっとくせず、あんまりではないかなばかりを繰り返す奥さんにしまいには根気まけして、近頃では赤瀬の家にも滅多に寄りつかなくなった。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
それは今すずめあぶって食ったゆえなるべしと言えば、ヤマハハも納得なっとくしてそんなら少しん、石のからうどの中にしようか、木のからうどの中がよいか、石はつめたし木のからうどの中にと言いて、木の唐櫃の中に入りて寝たり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
最初は幼い子供を不安がらすまいと、努めて愛想あいそ笑いを浮かべて、あやすように云っていたのであるが、しゃべっているうちにいつか真剣さのあふれた表情になり、どうにかして納得なっとくさせようと一生懸命になっているのが、滋幹にも分った。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
米友としては、お雪ちゃんの説明で一応納得なっとくしたけれども、まだ心残りはあって、鷲の子の存在はそれでいいとしても、今まで静かにしていた鷲の子をして、突然こうもあまたたびはばたきをさせるようになったその誘因というものが、相当気にかかるらしい。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この事についても、本田のお祖母さんは、しきりに世間体を気にしていたが、寺での告別式なら正木から葬式を出したことにはならないし、正木の家はただの病院だったと思えば何でもない、と言いきかされると、彼女はそれでやっと納得なっとくがいった、といったような顔をした。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
畢竟ひっきょう彼女は、鼻を失った舅や婿の有様をはっきりと自分の眼底に映し止め、われとわが心に納得なっとくさせなければ、———たゞ簡単に彼等を殺してしまうだけでは、———夜な/\ねむりをおびやかす無気味な夢魔を追い拂うことが出来なかったのであろう。
当初の計画通りを実行してそうしてうまく見込に違わない成績をふり返って見て、なるほどと始めて合点がてんして納得なっとくの行ったような顔をするのは、いくら綺麗きれいに形だけが纏っていても実際の経験がそれを証拠立ててくれない以上は大いに心細いのであります。
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ごましていらっしゃるのね。トビ君、あなたこそもう論ずべき種がつきてしまったんでしょう。きっと、そうよ。ところがあたくしの方は、これから本格的な実証に移るのですわ。実験証明ほど、たしかなものはありませんわ。そしてあたくしは、何人をも納得なっとくさせます。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「このうえは、いかに骨が折れようと、また、いかに行く先々で愚弄ぐろうされわらわれようと、とにかく一応、この河の底にむあらゆる賢人けんじん、あらゆる医者、あらゆる占星師せんせいしに親しく会って、自分に納得なっとくのいくまで、教えをおう」と。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それを一通り調べてもまだ足らぬ所があるので、やはり上代じょうだいからぎ出して、順次に根気よく人文発展のながれを下って来ないと、この突如たる勃興ぼっこうの真髄が納得なっとく出来ないという意味から、次に上代以後足利あしかが氏に至るまでを第一巻として発表されたものと思われる。
山城屋でもあきらめて、番頭の利兵衛に因果をふくめて、無理に婿になって貰うことにしました。利兵衛もいろいろ断わったのですが、主人の方からわたくしの方へ頼んで来まして、利兵衛を或るところへ呼んで、主人は手を下げないばかりに頼み、わたくしもそばから口を添えて、どうにかまあ納得なっとくさせたんです。
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「どうもへんだな。どうもに落ちない。分からないことをいて尋ねようとしなくなることが、結局、分かったということなのか? どうも曖昧あいまいだな! あまりみごとな脱皮だっぴではないな! フン、フン、どうも、うまく納得なっとくがいかぬ。とにかく、以前ほど、苦にならなくなったのだけは、ありがたいが……。」
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ただこの大雪に能登守の身分として馬駕籠の助けをらず、笠と合羽と草鞋わらじで出かけることが、勇ましいと言えば勇ましい、気軽といえば気軽、また例の好奇ものずきかと笑えば笑うのでありましたが、それとても、すぐに三人の後に附添うた一人のおともの有様を見れば、ははあなるほどと納得なっとくができるのであります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのときの巾着切りがお角であったそうで、思いがけない再会に、ハリソンさんも一旦はおどろきましたが、お角はどこまでも自分が取ったのではないと云い張ります。わたしの先生もハリソンさんをなだめて、この女は自分の親類で、決して悪いことをする者ではないと、いろいろに弁解しましたので、ハリソンさんもようよう納得なっとくしました。
半七捕物帳:59 蟹のお角 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)