秩序ちつじょ)” の例文
学者は社会の進歩の秩序ちつじょとして、団体観念から個人関係に移って行くと説く人もあるが、欧州おうしゅうの進歩は果たしてそういう形跡を現している。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
干戈かんかすでにおさまりて戦勝の主領が社会の秩序ちつじょを重んじ、新政府の基礎きそを固くして百年の計をなすに当りては、一国の公道のために私情を去り
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
アンドレイ、エヒミチは院長いんちょうとしてそのしょくいたのちかかる乱脈らんみゃくたいして、はたしてこれを如何様いかよう所置しょちしたろう、敏捷てきぱき院内いんない秩序ちつじょ改革かいかくしたろうか。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
これはそのじぶん秩序ちつじょもなく、わたしの心にはいっては来たが、いつまでも消えることはなかった。それはわたしに利益りえきのこした。いいところだけが残った。
健全けんぜん秩序ちつじょのなくなるということは、まっくらばんを、あかりをつけずに、みちあるくようなものです。ぼくには、ちょうど、そんなようなわびしさをかんじたのでした。
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
翌日小金井のいもばたけへ連れて行くと、つるが三尺ぐらいに延びていた。そんな時期であったのである。手伝わせると、教育されたように秩序ちつじょ正しく雑草ざっそうをとる。親より上手だ。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
したがってその全部ぜんぶ公開こうかいすることは到底とうてい不可能ふかのうで、わたくしとしては、ただそのなかから、心霊的しんれいてき参考さんこうになりそうな個所かしょだけを、るべく秩序ちつじょててひろしてたにぎません。
「吸血鬼事件が片づいても、まだ片づかぬものが沢山ある。帝都の安寧あんねい秩序ちつじょたもつために、この際やるところまできまりをつけるのだ。ここで安心してしまう者があったら、承知しないぞ」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
テーブルの上には戸籍台帳こせきだいちょうやら、収税帳しゅうぜいちょうやら、願届ねがいとどけを一まとめにした書類やらが秩序ちつじょよく置かれて、頭を分けたやせぎすの二十四五の男と五十ぐらいの頭のはげたじじいとが何かせっせと書いていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
先生は規律をただすため、秩序ちつじょを保つために与えられた権利を十分に使うでしょう。その代りその権利と引き離す事のできない義務もつくさなければ、教師の職を勤めおおせる訳に行きますまい。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
社会が一定の秩序ちつじょもとおさめられ、腕力のみをもって優劣を定めることをめて以来、理屈の最も分かるものが社会で勝利を得ることになった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かれきわめてかたくなで、なによりも秩序ちつじょうことを大切たいせつおもっていて、自分じぶん職務しょくむおおせるには、なんでもその鉄拳てっけんもって、相手あいてかおだろうが、あたまだろうが、むねだろうが
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
事々物々秩序ちつじょを存して動かすべからざるの時勢じせいなれば、ただその時勢に制せられて平生へいぜい疑念ぎねん憤怒ふんどを外形に発することあたわず、或は忘るるがごとくにしてこれを発することを知らざりしのみ。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
わたしたちが、こうして安心あんしんしてくらせるのも、世間せけん道徳どうとくがあり、秩序ちつじょがあるからです。この一にち平和へいわおくれたら、かみさまに感謝かんしゃし、ただしく努力どりょくされたなか人々ひとびとに、感謝かんしゃしなければなりません。
夢のような昼と晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かくのごときは物に表裏あることをわきまえぬので、かえって世の秩序ちつじょみだすものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ところ勿論もちろん秩序ちつじょなく、寐言ねごとのようで、周章あわてたり、途切とぎれてたり、なんだか意味いみわからぬことをうのであるが、どこかにまた善良ぜんりょうなる性質せいしつほのかきこえる、そのことばうちか、こえうちかに
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)