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石膏
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せっこう
ふりがな文庫
“
石膏
(
せっこう
)” の例文
神山さんが、美術室へはいってみると、部屋のすみに立ててあったアドニスの
石膏
(
せっこう
)
像が、まっぷたつにわれて、ころがっていたのです。
奇面城の秘密
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「やあ、しめたしめた」三吉は用意の
石膏
(
せっこう
)
をとかして、手早くその靴の形を写しとった。それは真白の靴の底だけのようなものだった。
地中魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
昔板小屋の中でたくストーブの用をなしていた古い
石膏
(
せっこう
)
の管が壁についていて、テナルディエの姿が見えるあたりまで上っていた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
石膏
(
せっこう
)
の胸像あるいは生きた人体を写生し、その形態、平面、立体、凸凹、明暗の調子等の有様を研究し表現する処の仕事をいうのである。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
あの村のマルタ
奴
(
め
)
の妹のマリヤが、ナルドの香油を一ぱい満たして在る
石膏
(
せっこう
)
の壺をかかえて饗宴の室にこっそり
這入
(
はい
)
って来て、だしぬけに
駈込み訴え
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
▼ もっと見る
その時あたかも牡丹の花生けの傍に置いてあつた
石膏
(
せっこう
)
の肖像を取つてその裏に「
自
(
みずから
)
題
(
だいす
)
。土一塊牡丹生けたるその下に。年月日」
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
石膏
(
せっこう
)
屋のおかみさんが
歯朶子
(
しだこ
)
に教えて呉れた。おかみさんは歯朶子に払う助手料を差引く代りに石膏置場の小屋を少し綺麗に掃除して呉れた。
百喩経
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
紅やとのこを塗るに随って、
石膏
(
せっこう
)
の如く唯徒らに真っ白であった私の顔が、
溌剌
(
はつらつ
)
とした生色ある女の相に変って行く面白さ。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そこには一軒の小屋があって、雪花
石膏
(
せっこう
)
を焼くかまどの設備があり、そこで焼いた石をつくのであった。みなで三人の働手がそこへ出かけた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
七八寸位の小さなものであった。それを
石膏
(
せっこう
)
型にとって岡野さんは帰朝される時持ちかえられたが、帰国後石膏に
斑点
(
はんてん
)
が出たという通知があった。
自作肖像漫談
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
交
(
かわ
)
る
交
(
がわ
)
るさまざまの色の電光が射し込んで、床に
置
(
お
)
かれた
石膏
(
せっこう
)
像
(
ぞう
)
や黒い
寝台
(
しんだい
)
や引っくり
返
(
かえ
)
った
卓子
(
テーブル
)
やらを照らしました。
ガドルフの百合
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
顔半分の血と泥はすでに乾きかけてい、そのため
石膏
(
せっこう
)
のように血のけのない顔が、ぞっとするほどすさまじくみえる。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
仮りに共鳴を起さぬように
石膏
(
せっこう
)
のごとき練り物がよいとしても、材料そのものが音を吸収してしまって、
潤
(
うるお
)
いもなく光もないふやけた音になってしまう。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
銀で千鳥をところどころ縫い取った黒い地紋の羽織を着ていたので、顔の感じが一層
石膏
(
せっこう
)
細工のように
硬
(
かた
)
かった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そして彼らの二人ともが、土に帰る前の一年間を横たわっていた、白い土の
石膏
(
せっこう
)
の床からおろされたのである。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
下駄
(
げた
)
を買おうと思って、下駄屋をのぞきこんだら、白熱ガスの下に、まっ白に塗り立てた娘が、
石膏
(
せっこう
)
の化物のようにすわっていたので、急にいやになってやめた。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
珠運
(
しゅうん
)
命の有らん限りは及ばぬ力の及ぶ
丈
(
た
)
ケを尽してせめては我が
好
(
すき
)
の心に満足さすべく、
且
(
かつ
)
は
石膏
(
せっこう
)
細工の鼻高き
唐人
(
とうじん
)
めに
下目
(
しため
)
で見られし
鬱憤
(
うっぷん
)
の幾分を
晴
(
は
)
らすべしと
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
花田
死骸
(
しがい
)
になってここにはいる奴はこれだ。(といいながら、壁にかけられた
石膏
(
せっこう
)
面を指さす)
ドモ又の死
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
看護婦が、平手で、
石膏
(
せっこう
)
の型でも作るように、べたべた伸子の足いっぱい膏薬を塗りこんだ。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
にわか造りの銅像や、
石膏
(
せっこう
)
細工の天才の前での演説が、これほど多い時代はかつて見られなかった。仲間の偉大なだれかへ周期的に、光栄の
居候
(
いそうろう
)
どもが
饗宴
(
きょうえん
)
をささげていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
納屋の中にはストオヴが一つ、西洋風の机が一つ、それから頭や腕のない
石膏
(
せっこう
)
の
女人像
(
にょにんぞう
)
が一つあった。殊にその女人像は一面に
埃
(
ほこり
)
におおわれたまま、ストオヴの前に横になっていた。
悠々荘
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そうして今度は、その出来た
原
(
もと
)
の形へ「
石膏
(
せっこう
)
」という
白粉
(
おしろい
)
のような粉を水に溶いたものを
被
(
かぶ
)
せ掛けて型を取るのだそうな。だから非常に便利で、かつ原型そっくりのものが出来るということだ。
幕末維新懐古談:36 脂土や石膏に心を惹かれたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
彼の鼻は
石膏
(
せっこう
)
細工の鼻のように硬化したようだった。
セメント樽の中の手紙
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
軟い
石膏
(
せっこう
)
でも練るような、
箆
(
へら
)
の音が聞こえて来た。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それから、その書だなの四つのすみには、おとなほどの背の高さのいかめしい
石膏
(
せっこう
)
像が、ニョキニョキとつっ立っているのです。
妖怪博士
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
モデルに
石膏
(
せっこう
)
の彫像を据えて息子は研究所の夏休みの間、自宅で美術学校の受験準備の実技の練習を継続しているのであった。電灯を
捻
(
ひ
)
ねって
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
其他演劇博物館にある
石膏
(
せっこう
)
の首は
幼穉
(
ようち
)
で話にならない。ラグーザの作というのはまだ見ないでいる。団十郎は決して力まない。力まないで大きい。
九代目団十郎の首
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
そして
石膏
(
せっこう
)
で模型が作りあげられた。その結果、この怪物は土中から出てきたのではないことがあきらかとなった。
宇宙戦隊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
先ず最初に
石膏
(
せっこう
)
模型の人像によって、木炭の墨、一色の濃淡によってそれらの物の形と線と面と、光による明暗の差別、空間、調子、遠近、奥行き、容積
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
床の間には、もう北斗七星の掛軸がなくなっていて、高さが一尺くらいの
石膏
(
せっこう
)
の胸像がひとつ置かれてあった。胸像のかたわらには、
鶏頭
(
けいとう
)
の花が咲いていた。
彼は昔の彼ならず
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
あの
白堊
(
はくあ
)
、あの石灰、あの
石膏
(
せっこう
)
、あの荒地や休耕地のきびしい単調さ、奥深い所に突然見えてくる農園の
早生
(
わせ
)
の植物、
僻地
(
へきち
)
と都市との混合した景色、兵営の太鼓が騒々しく合奏して
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
私は「あした
石膏
(
せっこう
)
を
用意
(
ようい
)
して来よう」とも
云
(
い
)
いました。けれどもそれよりいちばんいいことはやっぱりその足あとを切り
取
(
と
)
って、そのまま学校へ持って行って
標本
(
ひょうほん
)
にすることでした。
イギリス海岸
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
深い
眼睫
(
まつげ
)
の奥から、ヴィーナスは
溶
(
と
)
けるばかりに見詰められている。
冷
(
ひや
)
やかなる
石膏
(
せっこう
)
の暖まるほど、
丸
(
まろ
)
き
乳首
(
ちくび
)
の、呼吸につれて、かすかに動くかと
疑
(
あや
)
しまるるほど、女は
瞳
(
ひとみ
)
を
凝
(
こ
)
らしている。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
○床の間に
虞美人草
(
ぐびじんそう
)
を二輪
活
(
い
)
けてその下に
石膏
(
せっこう
)
の我
小臥像
(
しょうがぞう
)
と一つの木彫の猫とが置いてある。この猫は
蹲
(
うずく
)
まつて居る形で、実物大に出来て居つて、さうして黄色のやうなペンキで塗つてある。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
はりこの
鳥居
(
とりい
)
だとか、
石灯籠
(
いしどうろう
)
だとか、
石膏
(
せっこう
)
でつくった銅像のようなもの、そのほか、いろいろのものが、雨ざらしになって、おいてあるのです。
妖人ゴング
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
久しくやっている団十郎の首は、
石膏
(
せっこう
)
でとるつもりで始めたが、今は石膏がないから泥で固めて了おうと思っている。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
錆
(
さ
)
びた朱いろの
絨緞
(
じゅうたん
)
を敷きつめたところどころに、外国製らしい獣皮の
剥製
(
はくせい
)
が置いてあり、
石膏
(
せっこう
)
の女神像や銅像の武者像などが、規律よく並んでいる。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
怪塔王のつかっているガスは、
QQ
(
キューキュー
)
ガスという世界のどこにも知られていない強いガスです。これはうんと冷して、固めて
石膏
(
せっこう
)
のようにし、缶づめにしてあります。
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
法王に法王主義の不足を見いだし、国王に王権の不足を見いだし、夜に光の過多を見いだすことである。白色の名によって
石膏
(
せっこう
)
や雪や白鳥や
百合
(
ゆり
)
の花などに不満をいだくことである。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
気取りを止めよ。私のことを「いやなポーズがあって、どうもいい点が見つからないね」とか言っていたが、それは、おまえの、もはや
石膏
(
せっこう
)
のギブスみたいに固定している馬鹿なポーズのせいなのだ。
如是我聞
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その光線の鬢は白くまばらなので
石膏
(
せっこう
)
細工の女かと思われた。
ランプの影
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
鼻かけの乃木将軍にどれ程の値打があるのか、全く分らぬけれど、兎も角彼等の『品物』というのは、その乃木将軍の
石膏
(
せっこう
)
像に違いないらしい。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
木彫の方は小使が皆
石膏
(
せっこう
)
を扱うので、石膏屋さんとしては小沢という人がいたのを記憶する。石膏も初めは使用法を知らぬので沢山の無駄を出していた。
美術学校時代
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
一人一人特殊のあの
甲羅
(
こうら
)
のような個性というものが無くなって大ぜい一緒に進んでいますと、
石膏
(
せっこう
)
群像の上に五彩のサーチライトを映し動かしますときに緑になったり
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
大辻珍探偵は、岩の足跡から取った白い
石膏
(
せっこう
)
の
靴型
(
くつがた
)
を、大事そうに
礼拝
(
らいはい
)
した。
地中魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それを
石膏
(
せっこう
)
にとってそれから三本コムパスと針とで石などに移すというのが長沼先生のやり方であった。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
「
標本
(
サンプル
)
なども見てやってみましたが、
白粉
(
おしろい
)
は
石膏
(
せっこう
)
や
漆喰
(
しっく
)
いと違いましてね、手におえません」
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
あれは実物に
石膏
(
せっこう
)
をぶっかけて、
女型
(
めがた
)
をつくることが多いのですよ。そこへ蝋を流しこんで固め、彩色するのです。人間でも同じことです。ただ石膏がたくさんいるだけですよ
悪霊物語
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
畳屋の
伜
(
せがれ
)
、電話のブローカー、
石膏
(
せっこう
)
模型の技術家、児童用品の売込人、兎肉販売の勧誘員
鮨
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
さて、刑事が
勿体
(
もったい
)
ぶって持出した所の証拠物件なるものは、第一に一足の短靴、第二に
石膏
(
せっこう
)
で取った所の足跡の型、第三に数枚の
皺
(
しわ
)
になった
反故紙
(
ほごがみ
)
、
一寸
(
ちょっと
)
ロマンティックじゃないか。
一枚の切符
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
“石膏”の意味
《名詞》
石 膏(せっこう)
硫酸塩鉱物の一種で、化学組成はCaSO4・2H2O(硫酸カルシウム・2水和物)、単斜晶系。
(出典:Wiktionary)
石
常用漢字
小1
部首:⽯
5画
膏
漢検準1級
部首:⾁
14画
“石膏”で始まる語句
石膏像
石膏細工
石膏型
石膏製