なんのために庭番を呼ぶ必要があるのだ? 自分で自分を告発するためとでもいうのかね? あるいは瞞着手段なのか? いや
罪と罰 (新字新仮名) / フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(著)
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
僕はそんなことに瞞着されはしません。僕が老人になり相当な地位に達した今となって、君は僕を利用して若い人たちを押しつぶそうとしています。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日 (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
現に『日本新聞』では一ページ余にわたって、かれらの身許調べのような記事を掲げて、こんなまやかしものに瞞着されるなと警告したくらいであった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かく十日まえに世人のまなこを瞞着しながら、男と女を入れ替えて、夫婦の契りを結ばせたのでありました。
右門捕物帖:11 身代わり花嫁 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
「……これが、我々に信じ得られるとお思いでしょうか? 疑いもなく××です。殿下もシャアも! 見て下さい! 我々を瞞着するために大使館が寄越したこの電報を!」
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
それさえない一片の紙をどうして外国のものが信ずることができるか、君らは自分を瞞着するために来たのであろう、自分はこれから艦長に言い付けてすぐさま京都に行くであろう
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ただ人間は nicety の仮面の下に自分自らを瞞着しようとしているのだ。そして人間はたしかにこの偽瞞の天罰を被っている。それは野獣にはない、人間にのみ見る偽善の出現だ。
色恋が年と共に薄れ行くと思うのは、それは現実を瞞着した旧思想に過ぎず、事実は生活力が衰退して、異性との交渉が少くなるにつれて、若かりし日の記憶は強烈に鮮明に働き出すのです。
奇談クラブ〔戦後版〕:17 白髪の恋 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
もう僕は、だまされない。叔父さんは、僕たちの疑惑の眼を避けたいばかりに、ポローニヤスと相談して、僕たちを瞞着する目的で、あんな不愉快千万の仕組みを案出したのだ。馬鹿にしていやがる。
それが幸福の追求である場合には、もっとも愚かなもっとも瞞着的なものとなる……。ジャックリーヌは愛以外に生の目的を考えることができなかった。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達 (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
樅ノ木は残った:04 第四部 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
つまり瞞着しようと思って悪企みをしてやがるのだ、あの男の眼はけっして見るのじゃないぞ、あいつの眼では何もわかりゃせんぞ、悪党だからな——つまり髯さえ見ていればいいのさ
カラマゾフの兄弟:01 上 (新字新仮名) / フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(著)
世間を瞞着していた熊芸人の正体を看破した以上は、自然そこに居合わした遊芸人たちも四散するだろうと思いましたので、伝六以下の三人を従えて拍手賞賛の間をゆうゆう引き揚げようとすると
右門捕物帖:10 耳のない浪人 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
それから彼は家に帰ると、住居は無趣味で悪臭がしており、妻は騒々しい平凡な女で、彼にたいして少しも理解がなく、彼は瞞着者かもしくは狂人だと見なしていた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊 (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
深く秘して官を瞞着し、不法に貢税をのがれ賦役を逃げて、ひとり王侯の富を蔵するに至った
艶妖記:忍術千一夜 第一話 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そうして、その三枚めも剥がれて、つまり七十六日めの夜になったとき、ゆい子がやはり夜具のまわりに砂垣を作るのを見て、五郎さんは瞞着されたような気持におそわれた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
三悪人物語:忍術千一夜 第二話 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)