疾風しつぷう)” の例文
疾風しつぷうの如く飛んで行く八五郎、その忠實な後ろ姿を見送つてどうして今まで手を拔いてゐたか、平次は自分乍ら齒痒はがゆい心持でした。
卯平うへいはおつぎのするまゝまかせてすこくちうごかすやうであつたが、またごつときつける疾風しつぷうさまたげられた。おつぎはとなりには騷擾さうぜういた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
月はまつたく姿をかくし、深い雲のとばりをぴつたりと引いてしまつた。夜は暗くなり、疾風しつぷうに乘つた雨が慌しくやつて來た。
疾風しつぷうごとけてくだん狂人きちがひが、あしからちう飛乘とびのらうとしたれると、づんとつて、屋根やねよりたかく、火山くわざんいはごと刎上はねあげられて、五體ごたいくだいた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
海賊船かいぞくせん此時このとき砲戰ほうせんもどかしとやおもひけん、なかにも目立めだ三隻さんせき四隻しせき一度いちど船首せんしゆそろへて、疾風しつぷう迅雷じんらい突喚とつくわんきたる、劍戟けんげきひかりきらめその甲板かんぱんには、衝突しやうとつとも本艦ほんかん乘移のりうつらんず海賊かいぞくども身構みがまへ
その時疾風しつぷうの脚早く、ヂュウスと諸神の目を掠め
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
人間わざでは盜めさうもない物を盜んで、遲くとも三日以内には、元の持主に返すといふ不思議な盜賊が、江戸中を疾風しつぷうの如く荒し廻りました。
もりこずゑうへはるかのぼらうとして次第しだいいきほひをくはへるほのほを、疾風しつぷうはぐるりとつゝんだ喬木けうぼくこずゑからごうつとしつけしつけちた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さうして、小止みなく降りしきる雨は、長い、悲しさうな音をたてゝゐる疾風しつぷうに、吹きたてられてゐる。
突然とつぜん船首せんしゆ轉廻めぐらすよとに、さながら疾風しつぷう電雷でんらいごと此方こなた突進とつしんしてた。
明神下の家へ歸つて來て、ホツとしてゐるところへ、相變らず疾風しつぷうのやうに飛び込んで來たのは、はずみきつた八五郎でした。
喬木けうぼくさへぎつてこずゑあをそらせてにはへすら疾風しつぷうおどろくべき周到しうたうふくろくちいてさかさにしたやうにほこり滿ちてさら/\としづんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
兎角とかくする今迄いまゝでは、其邊そのへん縱横じゆうわう暴廻あれまわつてつた沙魚ふかは、その氣味惡きみわるかしら南方みなみのかたけて、あだかるやうにかけした。端艇たんていともかれて、疾風しつぷうのやうにはしるのである。わたくしはいよ/\必死ひつしだ。
その底に附いた新しい土を爪でさはつて見て、それからたつた二た間しかない家の中を、疾風しつぷうの如く調べあげました。
平次は辻番を出ると疾風しつぷうの如くもとの小橋屋へ、そこには猿江町の甚三が、おとむらひの振舞酒に醉つて、もういゝ加減の機嫌になつてゐるところでした。
平次は其處から中坂を疾風しつぷうの如く下りました。谷五郎はもう事の破れを察して、逃げ出さうとしてゐる矢先。
疾風しつぷうの如く斬込んで來るのを、引つ外して右の手が高々と擧りました。久し振りに平次得意の投げ錢です。
二人は元の母家へ入つて行くと狹い戸口から疾風しつぷうの如く飛出した曲者、あつと思ふ間もなく八五郎を突き飛ばし、續くお品に、猛獸のやうにノシかゝるのです。
平次の叱咜しつたにつれて、八五郎の身體は獵犬のやうに動きます。幸ひの月夜、疾風しつぷうの如く逃げ廻る曲者は、次第に逃げ路を失つて、平次と八五郎の狹めて行く輪の中に入ります。
銭形平次捕物控:124 唖娘 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
平次は立ち上がつて八五郎に合圖をすると、疾風しつぷうの如く道尊の庵室あんしつへ飛んで行きました。
平次と八五郎と勘六は、疾風しつぷうの如く土手を引返しました。何んにも知らずに、こもの上でかねを叩いてゐた乞食坊主の鑑哲は、大骨を折らせ乍らも、三人の手で取つて押へられました。
凾嶺全山をゆるがすほどの聲がして、ガラツ八の八五郎、疾風しつぷうの如く飛んで來たのです。
ガラツ八は疾風しつぷうのやうに飛出しましたが、本當に半刻も經たないうちに歸つて來て
いきなり疾風しつぷうの如く飛んで來て、正面からドシンと突き當つたものがあります。
平次はお世辭を言ひ捨てて、疾風しつぷうの如く兩國の水茶屋に引返しました。
八五郎が、疾風しつぷうのやうに飛込んで來たのは、それから又七日目でした。
翌る九月十五日の晩、ガラツ八は疾風しつぷうの如く飛び込んで來たのです。
出て行つた八五郎、暫らくすると疾風しつぷうのやうにスツ飛んで來ました。
たつたそれだけの號令で、八五郎は疾風しつぷうのやうに馳け出しました。
ガラツ八は疾風しつぷうの如く飛びます。
平次は疾風しつぷうの如く飛びました。