トップ
>
熬
>
い
ふりがな文庫
“
熬
(
い
)” の例文
そうしてそのつど人に知れないように、そっと含嗽の水を幾分かずつ胃の中に飲み下して、やっと
熬
(
い
)
りつくような
渇
(
かわき
)
を
紛
(
まぎ
)
らしていた。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
庭
(
には
)
の
油蝉
(
あぶらぜみ
)
が
暑
(
あつ
)
くなれば
暑
(
あつ
)
くなる
程
(
ほど
)
酷
(
ひど
)
くぢり/\と
熬
(
い
)
りつけるのみで、
閑寂
(
しづか
)
な
村落
(
むら
)
の
端
(
はし
)
に
偶
(
たま/\
)
遭
(
あ
)
うた
※弟
(
きやうだい
)
はかうして
只
(
たゞ
)
餘所々々
(
よそ/\
)
しく
相對
(
あひたい
)
した。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
磯野は切り揚げそうにしては、また想い出したように
銚子
(
ちょうし
)
をいいつけいいつけしたが、お庄が傍ではらはらするほど、気が
熬
(
い
)
れて話がこじくれて来た。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
梅雨があがると、
熬
(
い
)
りつけるような暑い日が幾日となく続いて、再び又暗鬱な雨がじめじめと降り続いた。そして市中には急性のチブスが
猖獗
(
しょうけつ
)
を極めた。
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
汽車は北の方角へむかって行くのでしたが、途中から陰った空はすっかり剥げてしまって、汽車みちの両側では油蝉の声が
熬
(
い
)
り付くようにきこえました。
探偵夜話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
上さんの方がかえって
愛嬌
(
あいきょう
)
が少いので、上さんはいつも豆の
熬
(
い
)
り役で、亭主の方が紙袋に盛り役を勤めて居る。
熊手と提灯
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
胸の
逼
(
せま
)
ること急に、身内の血は
尽
(
ことごと
)
くその
心頭
(
しんとう
)
に注ぎて余さず
熬
(
い
)
らるるかと覚ゆるばかりなるに、かかる折は
打寛
(
うちくつろ
)
ぎて
意任
(
こころまか
)
せの我が家に独り居たらんぞ
可
(
よ
)
き。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
じいじい
蝉
(
せみ
)
がまたそこらの
木立
(
こだち
)
に
熬
(
い
)
りつき出した。じいじい蝉の声も時には雲と
梢
(
こずえ
)
を
閑
(
しず
)
かにする。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
海と
市街
(
まち
)
との間に屏風のやうな山がぬつと
衝立
(
つゝた
)
つてゐるので、凉しい海の風はそれに
遮
(
さへぎ
)
られて吹いて来ず、夏になると、
市街
(
まち
)
の人はフライ鍋で
熬
(
い
)
りつけられる肉のやうに
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
熬
(
い
)
りつくような日の下で、かっきりと浮き上って見える、埃の路は、ぼくぼくして、見るからにかったるい、その上を日覆いを半分卸した馬車は、痩せて骨立った馬に引かれて
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
その時さながら身を
熬
(
い
)
るような悩ましさを覚えたことがあった。それを思うても、何が苦しいといって恋の苦しみほど身に
徹
(
こた
)
えるものはない。どうか家におってくれて、すぐ逢えればよいが。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
塗り立てて
瓢箪形
(
ひょうたんなり
)
の池浅く、
焙烙
(
ほうろく
)
に
熬
(
い
)
る玉子の黄味に、朝夕を楽しく暮す金魚の世は、尾を振り立てて
藻
(
も
)
に
潜
(
もぐ
)
るとも、起つ波に身を
攫
(
さらわ
)
るる
憂
(
うれい
)
はない。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
熬
(
い
)
りつける
樣
(
やう
)
な
油蝉
(
あぶらぜみ
)
の
聲
(
こゑ
)
が
彼等
(
かれら
)
の
心
(
こゝろ
)
を
撼
(
ゆる
)
がしては
鼻
(
はな
)
のつまつたやうなみん/\
蝉
(
ぜみ
)
の
聲
(
こゑ
)
が
其
(
そ
)
の
心
(
こゝろ
)
を
溶
(
とろ
)
かさうとする。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
眼にさぐる
雑魚
(
ざこ
)
の
熬
(
い
)
り
煮
(
に
)
は箸つけて暗きかもやあはれ
霜夜
(
しもよ
)
燈火
(
ともしび
)
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
その
外
(
ほか
)
に
迎年
(
げいねん
)
の
支度
(
したく
)
としては、
小殿原
(
ごまめ
)
を
熬
(
い
)
つて、
煑染
(
にしめ
)
を
重詰
(
ぢゆうづめ
)
にする
位
(
くらゐ
)
なものであつた。
大晦日
(
おほみそか
)
の
夜
(
よ
)
に
入
(
い
)
つて、
宗助
(
そうすけ
)
は
挨拶
(
あいさつ
)
旁
(
かた/″\
)
屋賃
(
やちん
)
を
持
(
も
)
つて、
坂井
(
さかゐ
)
の
家
(
いへ
)
に
行
(
い
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
南
(
みなみ
)
の
女房
(
にようばう
)
は
仕事
(
しごと
)
の
見極
(
みきは
)
めがついたのでおつぎを
連
(
つ
)
れて、
其
(
その
)
晩
(
ばん
)
の
惣菜
(
そうざい
)
の
用意
(
ようい
)
をする
爲
(
ため
)
に一
足
(
あし
)
先
(
さき
)
へ
田
(
た
)
から
歸
(
かへ
)
つた。
女房
(
にようばう
)
は
忙
(
いそが
)
しい
思
(
おも
)
ひをしながら
麥
(
むぎ
)
を
熬
(
い
)
つて
香煎
(
かうせん
)
も
篩
(
ふる
)
つて
置
(
お
)
いた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
暑
(
しよ
)
の霞はてなきごとし
熬
(
い
)
りつつやにいにい蝉の声沁むるかに
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そのほかに
迎年
(
げいねん
)
の支度としては、
小殿原
(
ごまめ
)
を
熬
(
い
)
って、
煮染
(
にしめ
)
を重詰にするくらいなものであった。
大晦日
(
おおみそか
)
の
夜
(
よ
)
に
入
(
い
)
って、宗助は
挨拶
(
あいさつ
)
かたがた屋賃を持って、坂井の家に行った。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
冬ざれの
印旛郡
(
いにはごほり
)
ゆ
熬
(
い
)
りて
来
(
こ
)
し小蝦のひげが
繁
(
しじ
)
こごりけり
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
狹霧
(
さぎり
)
立つ月の夜さりは
村方
(
むらかた
)
の野よ
香
(
かう
)
ばしく麥こがし
熬
(
い
)
る
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
狭霧
(
さぎり
)
立つ月の夜さりは
村方
(
むらかた
)
の野よ
香
(
かう
)
ばしく麦こがし
熬
(
い
)
る
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
油
熬
(
い
)
る蝉の
鋭聲
(
とごえ
)
は
繁
(
しじ
)
ながら立秋を今日を涼しくおもほゆ
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
油
熬
(
い
)
る蝉の
鋭声
(
とごゑ
)
は
繁
(
しじ
)
ながら立秋を今日を涼しくおもほゆ
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
熬
漢検1級
部首:⽕
15画
“熬”を含む語句
熬豆
油熬
焦熬
熬々
熬米
熬錬
豆熬
麦熬