)” の例文
そうしてそのつど人に知れないように、そっと含嗽の水を幾分かずつ胃の中に飲み下して、やっとりつくようなかわきまぎらしていた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
には油蝉あぶらぜみあつくなればあつくなるほどひどくぢり/\とりつけるのみで、閑寂しづか村落むらはしたま/\うた※弟きやうだいはかうしてたゞ餘所々々よそ/\しく相對あひたいした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
磯野は切り揚げそうにしては、また想い出したように銚子ちょうしをいいつけいいつけしたが、お庄が傍ではらはらするほど、気がれて話がこじくれて来た。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
梅雨があがると、りつけるような暑い日が幾日となく続いて、再び又暗鬱な雨がじめじめと降り続いた。そして市中には急性のチブスが猖獗しょうけつを極めた。
汽車は北の方角へむかって行くのでしたが、途中から陰った空はすっかり剥げてしまって、汽車みちの両側では油蝉の声がり付くようにきこえました。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
上さんの方がかえって愛嬌あいきょうが少いので、上さんはいつも豆のり役で、亭主の方が紙袋に盛り役を勤めて居る。
熊手と提灯 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
胸のせまること急に、身内の血はことごとくその心頭しんとうに注ぎて余さずらるるかと覚ゆるばかりなるに、かかる折は打寛うちくつろぎて意任こころまかせの我が家に独り居たらんぞき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
じいじいせみがまたそこらの木立こだちりつき出した。じいじい蝉の声も時には雲とこずえしずかにする。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
海と市街まちとの間に屏風のやうな山がぬつと衝立つゝたつてゐるので、凉しい海の風はそれにさへぎられて吹いて来ず、夏になると、市街まちの人はフライ鍋でりつけられる肉のやうに
りつくような日の下で、かっきりと浮き上って見える、埃の路は、ぼくぼくして、見るからにかったるい、その上を日覆いを半分卸した馬車は、痩せて骨立った馬に引かれて
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
その時さながら身をるような悩ましさを覚えたことがあった。それを思うても、何が苦しいといって恋の苦しみほど身にこたえるものはない。どうか家におってくれて、すぐ逢えればよいが。
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
塗り立てて瓢箪形ひょうたんなりの池浅く、焙烙ほうろくる玉子の黄味に、朝夕を楽しく暮す金魚の世は、尾を振り立ててもぐるとも、起つ波に身をさらわるるうれいはない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
りつけるやう油蝉あぶらぜみこゑ彼等かれらこゝろゆるがしてははなのつまつたやうなみん/\ぜみこゑこゝろとろかさうとする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
眼にさぐる雑魚ざこは箸つけて暗きかもやあはれ霜夜しもよ燈火ともしび
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そのほか迎年げいねん支度したくとしては、小殿原ごまめつて、煑染にしめ重詰ぢゆうづめにするくらゐなものであつた。大晦日おほみそかつて、宗助そうすけ挨拶あいさつかた/″\屋賃やちんつて、坂井さかゐいへつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
みなみ女房にようばう仕事しごと見極みきはめがついたのでおつぎをれて、そのばん惣菜そうざい用意よういをするために一あしさきからかへつた。女房にようばういそがしいおもひをしながらむぎつて香煎かうせんふるつていた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しよの霞はてなきごとしりつつやにいにい蝉の声沁むるかに
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そのほかに迎年げいねんの支度としては、小殿原ごまめって、煮染にしめを重詰にするくらいなものであった。大晦日おおみそかって、宗助は挨拶あいさつかたがた屋賃を持って、坂井の家に行った。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
冬ざれの印旛郡いにはごほりりてし小蝦のひげがしじこごりけり
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
狹霧さぎり立つ月の夜さりは村方むらかたの野よかうばしく麥こがし
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
狭霧さぎり立つ月の夜さりは村方むらかたの野よかうばしく麦こがし
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
る蝉の鋭聲とごえしじながら立秋を今日を涼しくおもほゆ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
る蝉の鋭声とごゑしじながら立秋を今日を涼しくおもほゆ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)