なく)” の例文
懸けければ此方は彌々いよ/\愕然びつくりし急に顏色がんしよく蒼醒あをざめ後の方を振返るにそれ召捕めしとれと云間も有ず數十人の捕手ふすまかげより走り出なんなく高手たかて小手になは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
却ってこれが間にはさまらねば、余り両人ふたりの間が接近しすぎて穏さを欠くので、お政は文三等の幸福を成すになくかなわぬ人物とさえ思われた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
風はさむいが好天氣淺草の觀音の市も大當おほあたり、川蒸汽の汽笛もたえずひゞく、年の暮近し世間は何となくざわめきて今日はいぬの日、明日はねの日とりの日
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
たいなくとも玉味噌たまみその豆腐汁、心同志どし安らかに団坐まどいして食ううまさ、あるい山茶やまちゃ一時いっとき出花でばなに、長き夜の徒然つれづれを慰めて囲いぐりの、皮むいてやる一顆いっかのなさけ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
... それで私が不動様を一心に念ずると其怨霊がだん/\きえなくなります。それにね、』と、母は一増ひとしお声を潜め『このごろは其怨霊が信造に取ついたらしいよ。』
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
婦人若し智なくして是を信じては必ずうらみ出来易し。元来もとより夫の家は皆他人なれば、うらみそむき恩愛を捨る事易し。かまえて下女のことばを信じて大切なるしゅうとしゅうとめ姨のしたしみうすくすべからず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かれあしなくして地をはしり、たふれてふたゝびおきざるなど、魚族ぎよぞくたぐふべきものなきは奇魚きぎよといふべし。
安物ながら博多の帯でもしめて居れば是非う腰の廻りに煙草入が有る者です(荻)それなら其煙草入や財布などが何うしてなくなッた(大)夫が遺恨だからなくなったのです遺恨とせねば外に説明の仕様が有ません
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
既に我が身に引請んとするを暫時しばしと引留千太郎進みより否々いへ/\久八にては御座らぬと言んとするを押留おしとゞ尻目しりめかけて夫となく知らする忠義の赤心まごころ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
器量美しく学問音曲おんぎょくのたしなみなくとも縫針ぬいはり暗からず、女の道自然とわきまえておとなしく、殿御とのごを大事にする事請合うけあいのお辰を迷惑とは、両柱ふたはしらの御神以来ない議論、それは表面うわべ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
云い出すからにゃア、お前さんだッて、何か訳がなくッちゃア、お云いなさりもすまい?
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
時折車の音の聞ゆるばかり、春は囘向院えかうゐん角力すまふの太鼓夢の中にきいて、夏は富士筑波つくばの水彩畫をてんねむの後景として、見あかぬ住居すまゐさりとて向島根岸の如き不自由はなく、娘がのぞみかなひ
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
急ぎしゆゑ少しも早くと思ふねんより八ツを七ツと聞違きゝちがへて我をおこくれしならんまだか/\に夜は明まじさて蝋燭らふそくなくならばこまつたものと立止り灯影ほかげに中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
くや額に玉の汗、去りもあえざる不退転、耳に世界の音もなく、腹にうえをも補わず自然おのず不惜身命ふじゃくしんみょう大勇猛だいゆうみょうには無礙むげ無所畏むしょい切屑きりくず払う熱き息、吹き掛け吹込ふっこむ一念の誠を注ぐ眼の光り
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ほんに承はれば兼がわるう御座升だが孃樣御結婚はなさらず共御心に替りなくば、お嬉しう御座ませう靜夫樣も決て貴女をおわすれは、これおぼえがお有でせうと取出す手箱の内にほわせし白ばら一輪
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)